カテゴリー「短編小説集:未来シリーズ」の記事

モラル低下、こんな未来


 もしも、こんな未来があったなら。

 教師A氏は、生徒から集めた教材費をこっそりと懐にしまい込むと、その足で銀行に向かい、自分の口座に迷うことなくそれを入金した。
 ちょっとだけ、小遣いが欲しいだけなんだ。そんな些細な動機から彼は教材費を着服することにした。自分を応対する銀行窓口の女性がやけに優しく感じるのは、自分の行為が後ろめたいことだからなのか。

 銀行員B氏は、目の前の顧客に愛想良く対応する傍ら、ドキドキと胸を高鳴らせていた。彼女は、先日、業務手続きの傍ら、銀行のお金を自分の口座に流し込み、そのお金で高価な宝石を買っていたのだ。
 これは、ほんの出来心。パソコン操作で簡単にお金が動くという仕組みが悪いんじゃない? 彼女は思った。後悔は無い。ただ、宝石が欲しかった。
 その宝石を胸ポケットに忍ばせて業務を続けながら、彼女は、いつばれるかというスリルとともに、時々沸き起こる不思議な優越感に浸っていた。

 宝石店で働く店員C氏は、高価な宝石を現金で購入した客の女性が、嬉々として店外に出て行くのを見届け、店内に客が誰も居ないことを確認すると、素早くスタッフルームに入り、荷物をまとめた。もうこの宝石店に用は無い。
 彼は、時々、店の宝石を数点持ち出し、質屋に売り飛ばしていた。その売却代金が結構な額になった先日、やっと商品減少の不審に気付いた店長は、帳簿確認を始め出した。店長にばれる前に店を辞めよう、それは商品持ち出しを始めたときに決めていた。
 この貯まったお金でどこか遠くへ行こう。警察に捕まる前に。

 質屋の店主D氏は、客の男性の提示する数点の宝石に対し、破格の安値を設定して、有無を言わさず買い取った。スズメの涙程度の買取合計額に疑問を感じることなく喜び勇んで帰っていくその客を見て、彼はほくそ笑んでいた。
 この宝石を高額で売れば、莫大な収益になる。だから質屋は止められない。

 警察官E氏は、盗品が売られているという確かな情報を得て、捜索差押令状を手に、とある質屋を家宅捜索していた。店主が蒼い顔で事情聴取に応じているのを横目で見つつ、彼は証拠品を次々と押収していった。
 そんな中、商品陳列棚に置かれていた高価そうな宝石を見つけ、それを素早く自分のポケットに滑り込ませた。誰も気付いていないのをさりげなく確認して、一考。
 証拠品の紛失が発覚したときに、警官たちへの所持品検査が行われたら。確実に宝石を失敬したのが自分であることがばれてしまう。休憩時間にでも封書にこの宝石を入れて、自分の自宅宛に配送しよう。早く休憩時間にならないかな。休憩時間の訪れを待ちながら、家宅捜索を続ける。
 この宝石を売ったら、いくらのお金になるのだろう。ギャンブルに注ぎ込める少しだけのお金が欲しいんだ。ただ、それだけ。

 宅配業者F氏は、その封書の厚みと手触りだけで中身を推察することに長けていた。……この形状、ひょっとして。彼は同僚の目を盗んで封書を開けた。
 封書から掌に転がり落ちたのは、高価そうな宝石。それを見た瞬間、彼はそれを素早くポケットに入れた。宅配物を紛失しても大した賠償金額にはならないことを彼は知っていた。この高そうな宝石の価額に比べれば。大したことはない。
 胸ポケットの僅かな感触が嬉しい。

 タクシー運転手G氏は、ひどく泥酔したその客が、運賃の支払いのために胸ポケットから皺くちゃのお札を取り出すのを、運転席のミラーを通してじっと見つめていた。お札を取り出したその時、指の隙間から転がり落ちるキラリと光るものを、彼は見逃さなかった。
 客を降ろした後、後部座席を隈なく探すと、出てきたのは、高価そうな宝石ひとつ。宝石を目の前にして、彼はニヤリと笑い、自分の運転するタクシーをある場所に向かわせた。

 政治家H氏は、時々利用するタクシー会社の運転手と、応接室で面談していた。
「この高価な宝石で、ひとつお願いします」と頭を下げる運転手に対し、彼は快諾の言葉を述べ、その運転手と固い握手を交わした。
 タクシーを使う際にはこの運転手のタクシーを意図的に選んで欲しい、との便宜を図る依頼だった。彼はこういうことは慣れていた。「次期選挙では会社ぐるみで私に票を入れるように。よろしく」と告げることも忘れなかった。
 運転手が帰った後、彼は、掌の上で輝く宝石を見つめ、その処遇を考えた。

 少年I氏は、自分の母親が宝石を目の前に掲げて延々と有頂天になっているのを、うんざりとしながら見ていた。
 自分や父親のことを放ったままにして、濃い化粧でめかし込み、毎夜出掛ける母親が、大喜びで帰宅したのが、昨夜のこと。
 お酒と香水を混ぜ合わせた臭いを全身にプンプンとさせながら、「付き合っている人から宝石をプレゼントされたの。お父さんには内緒よ」と少女のように上気しながら彼に話し掛ける母親を見て、彼は、どうしても言い出せなかった。
 先日きちんと支払ったはずの学校の教材費が、なぜか再度請求されたことを。それがかなりの額であり、彼の小遣いからは到底支払えないことを。
 家族の忠告や抗議の言葉を何も聞き入れることのない、自己中心に動く母親のことを考え、彼は母親に教材費の支払いをお願いすることを諦めた。
 ・・・お金が欲しい。どうすれば手に入るのだろう。お金が欲しい。どうすれば。
 数個の単語を脳裏で浮遊させた後、彼はふと思い立ち、家を出た。深夜のコンビニに向かいながら、ポケットの中でカッターナイフを弄ぶ。その足取りはやや重く、眼差しはとても哀しげで―――鋭かった。

   

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。
 心から感謝を申し上げます。

 なお、文章に稚拙な部分が多く見受けられるとは思いますが、筆者の文章力の未熟さゆえでございますので、ご容赦下さいまし。

 ご感想などございましたら、コメント欄にお寄せください。
 心よりお待ち申し上げております。

 お読みくださり、誠にありがとうございました。

琉球の宮


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選挙、こんな未来


某国の選挙前、七夕の日。記者の選挙立候補者へのインタビュー。

候補者Aと記者との会話。

記者 「選挙が公示されました。もうすぐ投票日ですね。 意気込みはどうですか?」
候補者A 「とにかく投票日まで全力で有権者に訴えるだけです」
記者 「なるほど。勝算はどうですか?」
候補者A 「こればっかりは、ちょっと・・・。なにぶん、投票箱を開けてみないと分かりません。フタを開けたら何とやら、ですよ。投票箱には魔物が住んでいると言いますから」
記者 「確かに。開票するまで結果は分かりませんね。そういえば、今日は七夕ですが、短冊に何かお願い事を書かれたりはされましたか?」
候補者A 「もちろん。《当選しますように!》と願いを込めて書きましたよ」
記者 「なるほど。貴方の願いが叶うといいですね。当選インタビューのときを楽しみにしています」
候補者A 「ありがとう。頑張らさせていただきます。それはそうと、アナタは投票されるんですか? 政治を変える一票を必ず投じてくださいね」
記者 「もちろんですとも。必ず投票いたします。ではでは、失礼します・・・」

候補者Bと記者との会話

記者 「選挙が公示されました。もうすぐ投票日ですね。意気込みはどうですか?」
候補者B 「不退転の覚悟で臨んでいるところだ」
記者 「ん・・・と、何だかよく分かりませんが・・・。勝算はどうですか?」
候補者B 「まぁまぁ、だな。選挙前に行った資金集めのパーティでは、ガッポリ稼げたからな。大いに勝ちに向かって選挙運動しているぞ。所詮、選挙の勝敗を決めるのは資金力だ。資金のある者が当選する、それが自明の理だ」
記者 「なるほど。お金があれば、より多い選挙運動員も集められるし、アクセスの良い目立つ一等地に選挙対策本部を設置出来ると。まさに猫まっしぐらじゃなくて、当選まっしぐらですね」
候補者B 「何のことだ」
記者 「いえ、何でもないです。そういえば、今日は七夕ですが、短冊に何かお願い事を書かれたりはされましたか?」
候補者B 「もちろん。《当選願い》と毛筆を使って墨字で書いたぞ。竹は中国の山奥から伐採したものを直輸入したものだし、硯(すずり)と墨汁と和紙はありえないほどの高価なものだ。更に、山にこもって祈祷しながら短冊をつけたから、願いの叶う確率は、ほぼ100%だな」
記者 「・・・そういうヒマがあれば、街頭演説とかして選挙運動したらいいのに」
候補者B 「何か言ったか?」
記者 「いえ・・・。お金の多さで願いの叶う確率が変動するなら、きっとそうなのでしょうね」
候補者B 「そうだ。ほぼ100%の可能性をより確実なものにするために、竹の枝々の隅々に、壱万札を鈴なりに竹に吊るしたんだぞ。こんな豪奢な笹竹では、誰だって恐れ多くて必ず願いを叶えてくれるに違いない。わっはっは」
記者 「頑張ってください・・・」
候補者B 「ありがとう。頑張らせて貰うよ」
記者 「ではでは、失礼します・・・」

候補者Cと記者との会話。

記者 「選挙が公示されました。もうすぐ投票日ですね。意気込みはどうですか?」
候補者C 「頑張ってるよ」
記者 「はぁ・・・。ええっと、勝算はどうですか?」
候補者C 「投票日の天気次第だな」
記者 「はぁ・・・。そういえば、今日は七夕ですが、短冊に何かお願い事を書かれたりはされましたか?」
候補者C 「いや、短冊には何もお願いはしてない。あんなのは無意味だ。単なる気休めだよ。大体、短冊に祈って願いが叶った試しがない」
記者 「はぁ」
候補者C 「それよりも、ワシは選挙対策事務所や自宅の窓際に、《てるてる坊主》を下げているぞ」
記者 「《てるてる坊主》ですか? それも願いが叶うかどうか分からないじゃないですか」
候補者C 「確かにそうだが・・・。短冊で願いごとを書くよりは、天気の動向のほうが一般的に願いが叶いやすい。だから《てるてる坊主》なんだ」
記者 「それにしても、短冊に自分の当選願いをするのではなく、自分の当選よりも前に、そもそもの投票率のアップを願って《てるてる坊主》を下げるなんて、候補者のカガミですね!」
候補者C 「投票率のアップじゃない、低下を願ってるんだ。そこんとこ、一番大事なんだ。間違うなよ」
記者 「え・・・?」
候補者C 「ワシが下げているのは、晴天を願う《てるてる坊主》じゃない。雨天を願う《黒いてるてる坊主》だ」
記者 「・・・雨乞い用のやつですか?」
候補者C 「そうだ。ただ、小雨では困るから、等身大の黒いてるてる坊主を大量に製紙会社に特注させた。これで投票日は豪雨だ」
記者 「豪雨・・・。投票率、下がっちゃいますね」
候補者C 「願ったり叶ったりだ。雨が降れば万々歳だ。大体、投票日という休日に雨が降るとな、人は外出を好まない。雨の日に家から出るのは面倒だからな。したがって、雨天の日には投票率が確実に下がる。一方、たとえ豪雨でも、お金で雇われた選挙運動員や何が何でも投票するために組織された人たちは、ワシに絶対に投票してくれる。義務だからな。投票率の下がるときに、ワシは絶対に勝つ。自明の理だ」
記者 「雨が降ると、アナタに有利なんですね」
候補者C 「そうだ。でも全部が《黒いてるてる坊主》頼みじゃないぞ。企業の社員たちもいる。ワシを支持している企業の社長たちが、職務として社員たちをマイクロバスに乗せて投票所に連れて行き、総動員させた社員たちをワシに投票させるんだ。投票しなかったらクビだからな。みんなビビッて投票するさ」
記者 「《清き一票》が過去の遺物に思えてきました」
候補者C 「なあに、《清き一票》は理想論だ。そもそも、企業の社長たちは、公共事業の受注を狙っている。ワシが当選して、受注を受けるのを望んでいるんだ。企業に受注させるためには、企業献金プラス企業の社員たちの票を要件にしているんだ。で、企業の社員たちの票はワシに流れ込むから、ワシは芋づる式で票を得られ、絶対勝つ。自明の理だ」
記者 「何だかオカシイですね」
候補者C 「いいんだよ。一部の権力者さえ潤えば、それでヨシさ。大体、一部が政治を動かしているのに、たかだか一票で政治の根幹が変わったら困るじゃないか。所詮、組織票がモノを言うんだ」
記者 「ふぅん。雨天を厭わず投票する人たちによる組織票頼みなんですね」
候補者C 「当たり前だ。これで晴天にでもなってみろ。無党派層が投票所に向かい、投票率がアップしてしまう。そうなったら組織票を上回る票が動き、ワシの当選は危なくなってくる。・・・あ、そうだ! ちょっと、キミ!」
記者 「おや、秘書さんが呼ばれて来たぞ。何か密談されるのかな?」
候補者C 「投票日の選挙区全体を雨天にするために、外国で開発された雨降り装置を今すぐ手配して手に入れろ」
記者 「雨降り装置?」
候補者C 「台風や低気圧を作る機械でも、何でもいい。投票日当日を何が何でも絶対に雨天にして、無党派層を投票所に向かわせないようにして、何としてでもワシが落選するのを阻止するんだよ。あ、すまないな。ちょっと秘書にお願い事をしていたんだ。インタビューはまだあるのか?」
記者 「いえ、もう結構です。頑張ってください・・・」
候補者C 「ありがとう。投票日を雨天にさせるように、頑張るよ」
記者 「ではでは、失礼します・・・。帰宅したら、真っ白の《てるてる坊主》でも下げよう・・・」

   

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。
 心より感謝を申し上げます。

 なお、文章に稚拙な部分が多く見受けられるとは思いますが、筆者の文章力の未熟さゆえでございますので、ご容赦下さいまし。

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琉球の宮


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多数決、こんな未来


某国の総理大臣と、その側近との会話。

側近 「総理! 例の法案は議会審議では通りそうにありません!」
総理 「例の法案? 何だっけな、その法案」
側近 「ホラ、バレンタインデーに総理にチョコを贈った女性には、褒賞が与えられる、っていう総理待望の法案ですよ。
『イイコトの予感☆総理にチョコを贈ってみ法』という凄い法案名です。贈ってミホ? だなんて、どこかのCMで似たようなフレーズを聞いたことあるし」
総理 「ああ、そんな法案を提案してたっけな。すっかり忘れてたよ」
側近 「そんな無関心じゃ困りますよ。総理が『バレンタインデーに女の子からチョコが欲しい!』って駄々をこねたものだから、気を利かせた閣僚たちが法案としてまとめたんですから」
総理 「そうだったな。すまないな」
側近 「それよりも、この法案、ちゃんと議会で賛成多数を得るんですか? 閣僚たちのリサーチによると、議会審議では賛成を得られなくて通らない可能性が大とのことですよ」
総理 「得るかどうかは、私にも分からん。ただ、過半数の賛成では足らんぞ。9割以上多数の賛成を得られなければ、法案は成立とは言えないな。9割の賛成は、9割の民意だ。まぁ、成立しなかったら、そのときはそのときだ。廃案になれば、私は諦めるぞ。しょうがない」
側近 「潔いですね。9割以上の多数の賛成がなければ廃案だなんて。過半数じゃダメなんですか?」
総理 「我々は国民の代表として議会審議に参加しているんだ。国民がノーなら、我々もノー。仮に議会審議で過半数の賛成が得られたとしても、それはノーともイエスとも言えん。実に曖昧なものだ。過半数の国民の意見ではあっても、過半数の国民が反対しているんだ。これは民意じゃない」
側近 「はぁ」
総理 「民主主義というものはだな、ディスカッション、討議を重ねることに意味があるんだ。法案に反対する勢力があった場合、それが少数派でも、その少数派と話し合い、そのノーの答えをイエスに変えるために、法案の内容を少数派の納得のいくように変化させたり、何度も討議を重ねたりと、色々と努力するんだ。やがて全会一致と言えるほどまでにイエスが全体を占めたときに、意見が一致したといえるのだ。これが民意なのだ」
側近 「そういうものなんですか」
総理 「そうだ。大体、多数決というのは、少数派を無視して審議採決することじゃない。少数派を尊重した上で、少数派と多数派が何度も協議して、その協議の中で内容に納得した少数派が多数派に移行するように努力する、というのが大事なのだ。しかし、これは審議時間が莫大にかかるし非常に面倒なことだ。だが、国は国民あってのものなんだ。大多数の国民の賛成を得られて初めて、ようやくそれが民意となり、国を動かすんだ」
側近 「民意・・・」
総理 「国民みんなが賛成してくれている礎のもとに、我らは在るんだ」
側近 「じゃあ、国民が『チョコを欲しがる総理は嫌ッ!』と思い、支持率が9割を切ったら、総理はクビですね」
総理 「そうだな。確かに、私の考える民意のボーダーラインは9割だ。厳しいようだが、そのラインに到達しないときは、民意に受け入れてもらえないということだから、きっぱりと潔く辞めてやる。内閣総辞職だ。国民あっての国なんだ。国民がいかに幸せに暮らせるか。国民の意見、民意が全てだ」
側近 「それでこそ、一国の代表、総理大臣ですね! カッコイイです」
総理 「うふふ」 

さらに、未来。

側近 「ついに審議3年でようやく例の法案が通りましたね。よくぞまぁ、国民も我慢したものです」
総理 「例の法案?」
側近 「ホラ、総理が『グラビアアイドルとデートしたい!』と駄々こねたものだから、閣僚たちが苦慮して作った法案ですよ」
総理 「何だったっけ?」
側近 「忘れたんですか? 3年も審議していたら、そりゃあ忘れてしまうかもしれませんけど・・・。『グラビアアイドルとデートしちゃ法』ですよ」
総理 「ヒドイ法案名だな」
側近 「こじつけなんですから、しょうがありません。この法案は、グラビアアイドルをデート用に貸してくれた芸能プロダクションには、公的資金を注入するというものです」
総理 「おお、そうだった。思い出した」
側近 「しっかりしてくださいよ、総理。『グラビアアイドルの人権はないのか』と議会は紛糾して、審議に3年も掛かったんですから」
総理 「で、審議結果はどうなったんだ?」
側近 「デートに応じたグラビアアイドルに億単位の報酬を与えることを法案に盛り込んで、ようやく7割の賛成多数で可決しました。
9割の賛成多数を目標に審議していたときは、可決までに5年以上要していましたから、スピード採決と言えますね。もっと審議の効率をアップできないものでしょうか」
総理 「難しいな。でもまぁ、7割でも民意だから、ヨシとするか」
側近 「せめて現状の7割賛成を6割くらいにまで民意のボーダーラインを減らせないでしょうか。このままでは多くの法案を制定することが難しいです」
総理 「考えないこともないな。デートさえできれば。うふふ」
側近 「はぁ・・・。誰のための法案なんでしょう」
総理 「文句を言う暇があったら、法案成立のために奔走しろ」
側近 「はい・・・」
総理 「うふふ」 

さらに、さらに、未来。

側近 「何とか過半数の賛成を得ました。審議に1年掛かりましたが、例の法案はようやく通りましたよ」
総理 「ん? 例の法案? 何だっけ、それ」
側近 「忘れたんですか? 国民全員にチョビヒゲを義務化する『チョットだけ法』ですよ。ヒドイ法案名ですよね」
総理 「うふふ。思い出したぞ。中々面白いネーミングじゃないか」
側近 「いい加減にして下さいよ。総理のワガママに国民は右往左往ですよ。 チョビヒゲにするために、付けヒゲ業界に需要が集中し、パンク寸前。公的資金を注入してチョビヒゲを増産し、各人常時マイ・チョビヒゲを持参するなんて事態に、国民はもう、てんてこ舞いですよ。
誰のための法案なんですか。法案に罰則が無いだけマシですけど」
総理 「面白いじゃないか。うふふ」
側近 「面白いで一蹴しないで下さいよ。大変なんですから。これが民意なんでしょうか、本当に」
総理 「面白ければいいじゃないか。何が問題だ? 過半数は賛成したんだろう。それとも、お前は私の側近を辞任したいのかい?」
側近 「・・・あ、いえ。この法案を国民に浸透させるように頑張ります。ハイ」
総理 「それでヨシ。うふふ」

もっと、未来。

側近 「最近、やけに法案の通るスピードが速いですね」
総理 「そりゃあ、賛成してくれる議員たちが多数いるからだろう」
側近 「少数派とディスカッションを重ねて採決を目指した昔が懐かしいです」
総理 「しょうがないさ。何度も討議して少数派を取り込んだり折衷案を作る手間を考えたら、今の現状が最高だ。少数派ができるだけ選挙に通らないようにして画策したお陰で、今では多数派が議会を占めてしまった。もはや、どんな法案でも通ってしまう。最高じゃないか。賛成多数が占める議会。これぞ民意だ」
側近 「民意というより、数の論理ですね。多数決が全て、という」
総理 「ああ。そういや、大変だったな。どんな法案でも全て通すために、賛成多数の議員で占めさせるのに努力したあの日々よ」
側近 「ええ。少数派に不利になるように、早いうちに選挙制度を大幅に変えたのが良かったのかもしれませんね。それに、賛成多数を得るために、票集めのコマとして、引退した著名なプロスポーツ選手や好感度の高いタレントを議員として擁立したのが、実に素晴らしかったです」
総理 「そうだな」
側近 「これからは、もっと用途に応じて適格な議員を集めましょうよ。まず、強行採決用には、野党の進路を阻むために、体格の良いプロレスラーが欲しいです。他には、答弁中に野党からの鋭い指摘を上手く切りかわすことのできる、話術に富んだお笑い芸人や漫談家も。あとは、野党の答弁を騒々しく野次るために、舞台で鍛えた発声を持つ舞台俳優やリアクション芸人も数人欲しいです」
総理 「じゃあ、そのように今から手配しよう。所詮、資金力の違いだな。多数派になれば、有利に取りか使ってもらおうと、企業からのお金が流れ込む。お金があれば、より多くの多数派議員をゲットできる。さらに多数派になれば、またお金が転がり込む」
側近 「これぞ『多数派スパイラル』ですね。どこまでも多数派になり得るなんて、ミラクルな手法です」
総理 「ミラクルじゃないぞ。現実だ。・・・そういえば、先日私が提案していた法案はどうなった?」
側近 「確か昨日、審議30分で可決されました。」
総理 「30分で可決されたんだなんて、早いもんだな。もう議会審議中に居眠りもできないじゃないか」
側近 「どうせすぐに法案は可決されるのですから、審議の終わった後に眠ればいいじゃないですか。それよりも、あの法案、本当に意味があるんですか?総理が『共通語を関西弁にしよう。楽しそう』と駄々をこねたものだから、閣僚たちが必死に作った『ハヒフヘ法』という法案なんて。何ですか、この誰かのモノマネみたいな法案名。ひどすぎます」
総理 「笑えるじゃないか。お堅い法案名よりも、よっぽどセンスあるぞ」
側近 「笑っている場合じゃないですよ。凄く大変なんです。だって、この法案の事項は義務になっているんです。遵守しないと、罰金や懲役刑に服させることになっているんですよ。刑罰を受けたくないために、国民は大わらわです。法案成立に伴い、教育現場では、現代文の科目を関西弁に変更する取り決めも行われたり、商品パッケージの文字表記も関西弁に変更したりと大騒ぎです」
総理 「面白いじゃないか。うふふ」
側近 「良くないですよ。時報には『12時やでホンマ』と言われ、お店に入るとご陽気に『いらっしゃ~い!』と言われ、電車が発車するときは『乳くりマンボ』が流れ、メガネ店の店員は『メガネ、メガネ』と言うなんて。・・・それにしても、本当にこれは民意なのでしょうか。果たして、議会で審議されているのは、大多数の国民が待ち望んだ法案なのでしょうか。
この民意は歪んでいるんじゃないでしょうか」
総理 「れっきとした民意だ。多数派工作が完成すれば、常時9割以上の賛成を得られるぞ。9割の議員の賛成は、9割の国民の賛成だ。これのどこが民意じゃないというんだ」
側近 「・・・民意ですね、確かに。ハイ」
総理 「多数決は最高だな。病み付きだ。それよりもお前、関西弁を使わないとダメじゃないか。『ハヒフヘ法』には罰則があるんだぞ」
側近 「―――多数決バンザイやで! 『万歳』というか、総理のしていることはむしろ『犯罪』や! ・・・って、誰が犯罪やねん!」
総理 「うふふ。ノリツッコミも楽しいな。それなら、改正法案では、ノリツッコミを義務化した条文を付け加えよう。うひゃひゃ」
側近 「悪代官さま、ちゃうで、あんさんは総理やがな。どこまでもついていくで! ほな、おおきに☆」
総理 「うひゃひゃ。うひゃひゃ」

   

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。
 心より感謝を申し上げます。

 なお、文章に稚拙な部分が多く見受けられるとは思いますが、筆者の文章力の未熟さゆえでございますので、ご容赦下さいまし。

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 心よりお待ち申し上げております。

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琉球の宮


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宇宙開発、こんな未来


某国の大統領と側近との会話。

側近 「大統領! ついにやりました!」
大統領 「どうしたんだ。僕の支持率が上がったのか?」
側近 「違います。我が国の惑星探査車がA星に辿り着き、着々と調査していたのですが、なんと、その星で生命体を発見したんです!」
大統領 「ふむふむ」
側近 「その生命体がどのような知能を備えているのか、ただ今、研究しています。楽しみですね」
大統領 「どうせ国家予算だ。研究費用は湯水のように使ってくれ」
側近 「はい!」

  さらに、未来。

側近 「大統領! どうやらA星の生命体には人間ほどの知能はないようです」
大統領 「なんと。やはり人類が宇宙一というわけか」
側近 「宇宙一かどうかは知りませんが、とにかく我々人間とコンタクトを取れる程度の知能はありません。せっかくの《未知との遭遇》なので、色々と意見交換して仲良くなりたいと思っていたのですが、どうもそうはいかないみたいでして」
大統領 「じゃあ、無視しちゃえ」
側近 「無視、ですか? どうして。せっかくの地球外生命体なのに」
大統領 「惑星探査は生命体とのコンタクトのためではない。それは余興に過ぎん。我々は地球外に人類が移住するために探査しているのだ。人類で溢れかえり、二酸化炭素の増大した地球には、もはや住み留まる事は出来ない。これからは宇宙移住の時代だ。だから、惑星探査の要は、人類が住めるか、どうか。それが問題だ」
側近 「はい……」

  さらに、さらに、未来。

側近 「大統領! 重大な発見です! A星の地下には、無尽蔵の石油が眠っていることが分かりました! 地球の石油埋蔵量には天文学的に及ばないくらいの凄まじい量です!」
大統領 「やったね! ワーイ! 僕たち大金持ちだ!」
側近 「じゃあ、今日のトップニュースで流しましょう。これを聞いたら、残り少ない地球の石油の資源に憂いでいた世界各国が安堵するでしょうね。良かった、良かった」
大統領 「オイオイ。どうして世界各国が安堵するんだ?」
側近 「それはもちろん、石油は世界各国で最重要資源だからですよ。枯渇したら大変な事態が引き起こされたことは、オイルショックでご存知のはず」
大統領 「最重要資源なのは分かるが、どうして世界各国なんだ。この石油資源は我が国だけのものじゃないのか?」
側近 「我が国だけ? 大統領、それは違います。我が国の宇宙開発チームは、地球の代表として、世界各国のチームと共同で惑星探査をしているんですよ。だから、発見した資源は我々地球人全員の共有物なんです」
大統領 「誰が決めたんだ。我が国が開発チームの中で一番多額の資金を提供しているんだぞ。そもそも、我が国がお金を出さなかったら発見できなかったかもしれないんだ」
側近 「でも……」
大統領 「今後、宇宙開発は我が国の単独開発にする。開発チームは解散だ。今まで世界各国から提供を受けていた資金は全額返還しろ。国債を発行してでも返還するんだ。A星の無尽蔵の石油資源があれば、借金などすぐにチャラになる。何が何でも我が国の単独資源にするんだぞ。もちろん、今まで得られた宇宙開発の技術は有無を言わさず我が国が回収する。異論が噴出したら金で封じろ。どうせ国家予算だ。湯水のように使え」
側近 「でも……」
大統領 「不服か?」
側近 「いえ、そうさせて頂きます……」

  そして、未来。 

側近 「大変です、大統領! A星で石油資源を発見したことを極秘にしていたのですが、誰かがそれをマスコミに流したようです! 情報は瞬く間に全世界に知れ渡りました。それを聞いた世界各国が激怒しています。なぜ共同開発だったのに、重要なことを内緒にしていたのか、技術を回収したのはそのためだったのか、と遺憾の意を表してます。各国は石油資源の共有と等分配分、そして我が国に対する謝罪を要求しています! 早くテレビ会見して、事態の釈明をしなければ……」
大統領 「ふん。放っておけ」
側近 「でも、
大統領……」
大統領 「どうせアイツラには単独でA星に行ける技術力がないんだ。地球でいくらごねても、僕たちが自国の技術力を駆使して、先に地球を旅立ってしまえばいいんだ。アイツラがどんなに抗議しても、A星には届くまい。ハハハ」
側近 「でも、大統領……。怒った各国はもう既に軍隊を配備する用意ができている、と言っているんですよ。ひょっとしたら、我が国に一斉攻撃をしかけるかもしれません。戦争になります。昔は植民地や石油の取り合いで戦争しましたけど、今回は惑星資源を巡って戦争することになるんですか? 人類ってホント、進歩がないですね……。自己利益のためにまたも血を流すのですか」
大統領 「何とでも言え。とにかく今から地球から発つ用意をするんだ」
側近 「は、はい」

  そして、数時間後の未来。 

側近 「大変です! 大統領! 大統領が弁明をしなかったので世界各国の怒りはピークに達しているようです。もはや一刻の猶予もありません。各国は我が国に向けてミサイル配備をしているようです。ついに戦争へのカウントダウンが始まりました。戦争回避のためには、今からでテレビ会見で弁明してください。そうでもしないと、開戦してしまい、一般市民に犠牲が出てしまいます。今ならまだ間に合います!」
大統領 「ハハハ。弁明? そんな無駄なこと。今から僕たちは宇宙に旅立つんだ。アイツラがどんなに強力な核兵器を使ったとしても、宇宙空間に逃げちまえばコッチのものだ。逃げるが勝ちだ」
側近 「ちょっと待って下さい。地球に残された我が国の一般市民はどうなるんです?」
大統領 「なあに、一般市民の命と大統領の命じゃ価値が違う。一国の最高責任者が誰よりも最後まで生き延びなくてどうする。国の存亡に関わるんだぞ。これが大統領の特権なんだ。そのためにこの職を選んだというのに」
側近 「はぁ。大統領は一番いいとこ取り、というわけですね。あの、ひとつ気になることを聞いていいですか」
大統領 「なんだ」
側近 「そもそも、勝手にA星に移住していいんですか?」
大統領 「何をいまさら言っているんだ。勝手も何も、あの星はもはや我が国の所有物じゃないか」
側近 「それは誰が決めたんです? ひょっとしたら、まだ発見していませんが、あそこには先住民がいるかもしれません。それらの意向を無視して、勝手に我が国が占拠してもいいのでしょうか」
大統領 「構いやせん。我が国が開発した最強の核ミサイルをチラつかせれば誰しも我々の前に平伏する。強い者が勝つ、それが自然界の摂理だ」
側近 「―――そうやって、いつも我が国は他国を侵略しては住民の意思を無視して土地を強制収用し、軍事基地を作ったりして占領してきたんですね。傍若無人とはこのことです。他国に我が国に対する敵対感情が多いのは当たり前ですね。ビックリです」
大統領 「当たり前だ。強い者が勝つ、これの何が悪い。強い者が弱い者から憎まれるのは、その宿命だ。さぁ、つべこべ言わずにさっさと地球を発つ準備を続けろ。A星に到着するのは宇宙飛行してから数年後になるからな。善は急げだ」
側近 「はい……」

  そして、さらに、未来。

側近 「我々の乗った宇宙船はついに飛び立ちました。ああ、地球が遠くなっていきます。一般市民を見捨てて、私と大統領と閣僚数人とその家族だけが地球を離れてしまいましたが、果たしてこれは良いことなのか、どうなのか。後悔だけが胸の内に去来します」
大統領 「強者の我々は生きている。これは確かだ。後悔している暇はない。生きている我々が、A星で一から国家を建設するのだ。石油資源は無尽蔵だ。何でもできるぞ」
側近 「地球に残してきた我が国の一般市民はどうなるんです? ホラ、地球を見てください。どこかの国が核ミサイルを発動したのでしょう、あちこちで大爆発が起こっています。多くの血が流されています。青い地球が赤い星になっているではありませんか」
大統領 「だから何だ」
側近 「一般市民の悲痛な声が聞こえませんか。国家利益のためだけに血の色に染まってしまった赤い地球を、私は見たくなかった。どうして私たちだけ地球から離れたんです」
大統領 「文句があるなら、今すぐ宇宙船から放り出すぞ」
側近 「―――そうして下さい」
大統領 「何だと? 本気か?」
側近 「はい。私を放り出す前に、ひとつ伺ってもいいですか?」
大統領 「何だ」
側近 「宇宙開発って、何のために行ったんですか?」
大統領 「地球以外の星に移住するためだ。領土が増えて、万々歳だろう。領土が増えて喜ばない国家はいない」
側近 「その星にどんな生物がいたとしても、勝手に占領して移住するんですね。全てを奪取し移住して……何をするんですか?」
大統領 「移住して……まずはどこからも襲われないように、対空ミサイルを備えた大きな軍事施設を建てよう。それから、生産性の高い大きな工場でも建てようかな。なんせ、石油資源は無尽蔵なんだ。相当儲かるぞ。うふふ。儲かったら、太陽系の外の惑星への探査を始めよう。さらに資源豊富な星を探すんだ」
側近 「あの、そんなに儲けて何がしたいんですか?」
大統領 「そりゃあ、我が国の発展のためだ。利益追求すれば、国家が潤う。そうすれば、国家はさらにあらゆる面で発展する。子孫繁栄をDNAに刻み込まれた我が人類の宿命なんだ、これは。当たり前のことが分からないのか、キミは」
側近 「―――何だかそれ、虚しいです」
大統領 「何だと?」
側近 「莫大な富を築いて一体何に使うんですか。結局はお金を増やすだけのために宇宙を開発したなんて、それもそれだけのために戦争を起こしたなんて、虚しすぎます。子孫繁栄のDNAも、人類をともに協力し合って培うものじゃないんですか。手段のために方法を選ばずに、他を蹴落として子孫繁栄するのは、何だか虚しいですよ」
大統領 「沢山儲かるんだぞ。これのどこが虚しいんだ。幸福じゃないか。札束でビンタだってできるんだぞ!」
側近 「他人の犠牲を踏み台にして、山のように儲けたところで、嬉しくないんですよ。お金なんて無くても、誰も傷つかずに一緒に笑い合いたい。無人島で、他の人を蹴落として最後の一人となってサバイバルをするより、誰も蹴落とすことなく、一緒に助け合って生きる仲間が欲しいんです」
大統領 「ふん、そんなものは理想論に過ぎん。所詮、金が全てだ。お金が無ければ何も出来ないだろう。金があれば強い武器が作れる。強い武器があれば、戦いにおいて強者になれる。全ての上に君臨することができるんだ。これほど偉大な目標があるんだぞ。目的のためには手段を選ばないのは、当たり前のことだ。人類の偉業のためなのだから」
側近 「私には分かりません。生存競争の勝ち負けは確かに大事だとは思いますが、それにも限度があると思うのです。人を傷つけてまで勝つことに虚しさを感じるんです。強者には何ら魅力を感じません」
大統領 「―――そうか。お前とは分かり合えないわけだな」
側近 「ええ。無理ですね」

  そして、数分後。

大統領 「ほら、ここに立て。今から数十秒後にこの下の扉が開いて、お前は宇宙に放り出される。お望み通りで嬉しいだろう」
側近 「ええ。勝者にこだわるこんな宇宙船に残るくらいなら、宇宙空間の塵になるほうがマシです」
大統領 「最後のチャンスだ。放り出される前に、他に言い残すことはないか」
側近 「そうですね。―――私の予想ですけど、A星で無尽蔵の石油を使い切る頃、油田そばの海岸で、砂に埋もれた自由の女神像が発見されると思いますよ。楽しみですね」
大統領 「ん? どこかで聞いたことのある話だな」
側近 「無尽蔵の石油を枯渇させる前に思い出しておいて下さい。いつか本当の意味が分かります。では、サヨウナラ」

   

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。
 心より感謝を申し上げます。

 なお、文章に稚拙な部分が多く見受けられるとは思いますが、筆者の文章力の未熟さゆえでございますので、ご容赦下さいまし。

 ご感想などございましたら、コメント欄にお寄せください。
 心よりお待ち申し上げております。

 この度はお読みくださり、誠にありがとうございました。

琉球の宮


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取調べ、こんな未来

 


 

ある日の取調室での被疑者と警察官との会話。

警察官 「つまりだな、お前は各駅停車の電車内で、向かいに座っていた男性の腹部を、隠し持っていた彫刻刀で刺し、重傷を負わせたんだな。間違いないか」
被疑者 「うん。その通りだよ」
警察官 「何で刺したんだ。動機は?」
被疑者 「それは・・・僕、ずっと心が独りぼっちだったんだ。疎外感、孤独・・・。誰も僕のことを見てくれないんだ。 道で通りすがりの人だって僕のことを気にも留めてなかった。両親だってそうだ。僕のことに関心を示さない。僕は独りぼっちが嫌で嫌でたまらなかった。そんなときに、あの電車に乗ったんだ」
警察官 「なるほど、孤独を感じていたときに、電車に乗ったんだな」
被疑者 「うん。僕は座席に座って、携帯電話で誰かと話す振りをした。電話する相手はいないから、電話は繋がっていなかったんだけど、僕はあることないこと、色々なことを大声でしゃべったよ。 僕は自分のマナーの悪さを誰かに注意して欲しかったんだ。そうされることで、僕は注意してくれた人と言葉や空間で繋がっていられる、孤独じゃなくなるんだって思った」
警察官 「わざと大声で話すことで、誰かから注意されたかったんだな。なるほど」
被疑者 「でも、通話時に僕の目の前に座った男の人は、僕と一度も目を合わさないまま、新聞を読み耽り始めたんだ。注意してもらえない僕は孤独から一歩も抜け出せない。そんなことは嫌だっていう思いが僕を行動へと誘ったんだ」
警察官 「孤独が嫌だという思いから、刺した、と」
被疑者 「うん」

警察官 「孤独が嫌だ、ということと、刺す、という行為との両者の関係はどういうものなんだい?」
被疑者 「え・・・というと?」
警察官 「キミは孤独が嫌だったら人を刺すのかね?」
被疑者 「そうじゃないけど・・・」
警察官 「じゃあ、なんで刺したんだ。今の説明だと、そういうことになるんじゃないのかね?」
被疑者 「うーん・・・。何となく、かな。寂しかった僕を無視したことにムカついて、何となく傷つけたくてチョイ、と刺した、というか」
警察官 「何となく、だと?」
被疑者 「うん」
警察官 「“荒れる少年、白昼の犯行”だな。警察発表で使おう。で、それは俗に言う《逆ギレ》か」
被疑者 「違うよ。【逆ギレ】は、本来なら怒られるべき立場の人が、逆に怒り出してしまうことをいう語(goo辞書)だよ。僕は無視されたから、怒られていないし、それに対して怒ってもいないよ。逆ギレじゃないよ」
警察官 「逆ギレじゃないとすると、どういう心理だ」
被疑者 「だから、何となくムカついたの」
警察官 「ムカついた・・・するとアレか。安易にキレて犯行に及ぶ少年犯罪の多発している昨今の状況を真似したんだな? 模倣犯か」
被疑者 「模倣犯じゃないよ。別に真似したわけじゃないもん。刺したかったから、刺したの」
警察官 「真似したわけじゃないとすると、目立ちたかったんだな」
被疑者 「目立ちたい、っていうのは確かにあるかも。誰からも見られてなかったから、注目を浴びたい、っていうのがあったから」
警察官 「すると、注目を浴びたいっていうことは、愉快犯だな。なるほど」
被疑者 「別に世間を騒がせることが楽しくて刺したわけじゃないよ。僕は刺したからって愉快に思ってないもん」
警察官 「じゃあ、凶器に彫刻刀を使ったのはなぜだ」
被疑者 「ああ、それは、学校の美術の時間で使っていた道具だったから、偶然鞄に入っていたの」
警察官 「その日に美術の時間があったのか」
被疑者 「ううん、学校には行ってないよ。今、学校を休んでいるんだ」
警察官 「どうして学校に行っていないのに、学校で使う道具を持っているんだ」
被疑者 「学校じゃなければ、学校で使う道具を持ってちゃいけないの? 学生鞄やランドセル、学生服は学校に行くとき以外に使っちゃダメなの?」
警察官 「いや、個人の嗜好によるが・・・」
被疑者 「でしょ。僕は彫刻刀の形が好きだったから、持ってたの」
警察官 「世の中に沢山の鋭利な凶器がある中で、なぜ彫刻刀なんだ」
被疑者 「そんなこと言われても・・・鞄の中に入っていただけだから」
警察官 「分かった。稀な凶器を使用することで、意外性を持たせるというわけか。ということは、快楽殺人か」
被疑者 「快楽殺人じゃないよ。鞄に入っていただけなんだ、って」
警察官 「じゃあ、犯行現場を各駅停車の電車を選んだのはなぜなんだ」
被疑者 「何となく。偶然だよ。乗った電車が偶然に各駅停車のものだったんだ。その電車でその男の人を見て・・・って、さっきから何度も言ったじゃん」
警察官 「偶然な訳はないだろう。犯行現場が街中ではなく、敢えて、電車なんだぞ? ああ、そうか。有名な列車の時刻表ミステリー小説に対抗するために、《各駅停車殺人事件》というのを起こしたかったんだろう」
被疑者 「だから、違うって」
警察官 「それから、被害者に中年男性を選んだのはどうしてなんだ?」
被疑者 「それは・・・彼が偶然、僕の目の前に座っていたから・・・」
警察官 「じゃあもし、目の前に座っていたのが、小学生だったら、キミは刺したのかい? 女子高校生だったら? 制服警察官だったら?」
被疑者 「それは・・・」
警察官 「高見盛ならどうだ?」
被疑者 「たぶん・・・ぜい肉が邪魔して彫刻刀は刺さらないかも・・・」
警察官 「グラビアアイドルだったら?」
被疑者 「デートに誘いたい」
警察官 「デヴィ夫人なら? 引田天侯なら?」
被疑者 「たぶん、厚塗りメイクにビックリして逃げる」
警察官 「叶姉妹なら?」
被疑者 「凝視する」
警察官 「・・・ほら、相手が変われば、キミの態度も変わるんだ。相手が中年男性だったのも、何か訳があるんだろう」
被疑者 「さっきから別に何も理由は無い、って言ってるじゃん」
警察官 「そうか、そうか。父親の年齢と同じ中年男性を狙ったのは、父親に対する反発、ひいては、父親の年代の人間によって占められた現代社会への鬱憤を晴らすためだろう」
被疑者 「だから、違うの」
警察官 「ふむふむ。以上を踏まえて、警察の記者発表のメモをまとめよう」
被疑者 「あの・・・」
警察官 「出来た! これは中々面白い記者発表になるぞ。働き盛りの中年男性を無差別に狙い、社会を不安に陥れたこの愉快犯は、現代のキレる少年による彫刻刀を凶器とした快楽殺人だった! この前代未聞の凶行、《各駅停車殺人事件》の真相はいかに! 乞うご期待!うふふ、視聴率30%は堅いぞ! 我が警察署が、湾岸署並みに有名になる一世一代の機会だ。頑張るぞ!」
被疑者 「あの、僕、殺そうと思って刺したわけじゃないよ。傷つけようと思っただけなんだ。傷害事件じゃないの? ねぇ」
警察官 「ああ、もういい。取調べは終わりだ。つべこべ言わずに静かにしろ。さぁて、俺はこれから記者発表の準備するぞ。会見するときのスーツは・・・古いから、今から買ってこようか。経費で落とそう。どうせ国民の税金なんだし」
被疑者 「あの、何を独り言を言ってるの? 僕への取調べは一体どうなったの? ねぇ」
警察官 「会見は夕方にしよう。そうすれば、夕方のワイドショー的なニュース番組で生中継されるぞ。ついでに、《実は、先月、妻との離婚が成立しました。今、恋人募集しています》って書いたパネルを首から下げたら、公共の電波を私用できるばかりか、全国の女性たちにアプローチできるぞ。明日からモテモテじゃん、俺」
被疑者 「あの・・・」
警察官 「今から楽しみだ、うふふ」
被疑者 「一体僕はこれからどうなるんだろう・・・」

   

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

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戦争、こんな未来

 


 

某国の大統領と側近 との会話。

側近 「大統領! ついに我が国と同盟を結んでいるA国が軍隊の派兵を決めました!」
大統領「なるほど、ついにか。遅かったな」
側近 「A国はほとんど我々シモベですからね。我々が《派兵しろ》と言ったら、喜んで尻尾を振って派兵の方向で話を進めていましたし。国民の大多数の反対を振り切って決断したなんて、普通ならどう考えても独裁者ですよね。ハハ」
大統領「世論の大多数が反対しても、国の首脳部が賛成すれば、それでいいんだ。国というものは、国民ではなく、一部の権力者が動かすものだから」

側近 「さすが大統領! 頭いいですね!」
大統領 「うふふ」

数週間後。

側近 「大統領! 大変です! 同盟のA国の軍隊が攻撃に遭っています! 多くの死傷者が出ている模様です!」
大統領 「それは大変だ! 早くお悔やみの花束届けないと」
側近 「それどころではありません! 今からテレビ会見して《イカンのイ》を発表しないといけません。(後ろ振り向き)メイク係! 目薬と暗めのファンデーション用意して!」

大統領 「よし。メイクだ」
側近 「頬がこけたようにメイクすると、悲壮感があって、国民受けがいいんです。ネクタイとワイシャツを少しグチャグチャにして、切羽詰った、取り乱した雰囲気を出しましょう」

大統領 「分かった。それにしても、A国はどこの攻撃を受けたのだ?」
側近 「我が国の軍隊が間違えて攻撃したようです。誤爆ですよ」

大統領 「まぁ。戦争に誤爆はつきものだ。で、死傷者は何人だ? わが国の武器の殺傷力の凄さを証明しちゃったんじゃないか?」
側近 「そりゃもう。言うのを憚るくらい凄い死傷者です。A国はもう、てんやわんやですよ」

大統領 「少し花束を奮発しておこう。経費で落とせるかな?」
側近 「もちろん国家予算ですよ。ご安心を。―――さぁ、テレビ会見の時間が迫っています。急いでください」

大統領 「メイクは完璧、と。今からまばたきをやめて、目の充血させるために頑張ろうか。さぁ、真に迫る演技をするぞ……」

さらに数週間後。

側近 「大統領! ついに我が国の軍隊の死傷者が1万人を超えました! A国の軍隊の死傷者もそれに近い莫大な人数になっています! どうしましょう!」
大統領 「もっと戦地に軍隊を送らないといけないな。我が国の軍隊の隊員補充はどうなっているんだ?」
側近 「かなり厳しいです。それで、《隊員になると抽選で3億円プレゼント》ということにして、隊員を募ってます。我が国は何とかこれでかなりの隊員の数を稼げそうですよ」

大統領 「A国はどうなんだ? もう少し軍隊を出せそうか?」
側近 「大丈夫です。《もっと軍隊を出せ》って一喝したら、憲法を改正して、徴兵制を始めたようです。文句を言う情報機関を潰すために、情報統制も始めているようですよ。そりゃもう必死です」

大統領 「じゃあ、かき集めた人員を総動員して、さっさと戦地に派遣しよう。とことん兵力を注ぎ込めば、何とかアイツラも引き下がるんじゃないのか?」
側近 「分かりました!」

もっとさらに数週間後。

側近 「大統領! もうダメです! 軍隊も武器も資金も底をつきました! どうしましょう! A国も同じ状態です! もう戦えません!」
大統領 「そんなこと言われても……。そういうことは想定外だし」
側近 「戦おうにも、人もモノも金もないんです。戦えないんです。《想定外》とか言わないでくださいよ。どうすればいいんですか?」

大統領 「どうすればって言われても、知らないよ」
側近 「休戦するのか、終戦するのか、戦争を続けるのか、判断してください。これ以上の戦争による損失は、我が国の赤字の経済事情では補填できません。私は終戦したほうがいいと思います」

大統領 「終戦? ボクは戦争を始めるのは得意だけど、戦争を終わらせる方法は知らないんだ。誰か知らないかな?」
側近 「私だって知りませんよ。今まで戦争ばかりしてきた我が国だから、一番、大統領がそういうことには詳しいと思っていたんですけど……」

大統領 「我が国って戦争の回数は多いけど、ぶっちゃけ、負けたことないから、相手が降伏するまで戦争続けてるんだよね」
側近 「じゃあ、どうしましょう。アイツラが降伏する前に、我が国やA国が赤字で沈没してしまいますよ。こうなったら、我々が降伏しましょう。それしか手はありません」

大統領 「降伏って何をすればいいんだ? 今まで人に謝った経験がないから、謝る方法が分からないんだけど。《あ、わりぃ。戦争、終わらせよう》って言えばいいのかな?」
側近 「そうですね。そうしましょう」

大統領 「で、誰に言えばいいんだ? ボクたちがアイツラの国を攻めて首都を陥落させたから、アイツラには代表者がいないじゃないか」
側近 「そういうときのためにテレビがあるんですよ。テレビで《負けました。許してチョンマゲ》って言えばいいんです。その瞬間から終戦ですよ。たぶん」

大統領 「それなら、《悲しいとき~ 赤字財政で降伏しなきゃいけないとき~》っていうのは、どうだ?」
側近 「さすが、大統領! 面白すぎ! 今からネタ作りしないと」

大統領 「じゃあ、ボクはその間にプレッツェルでも食べてよう」

   

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

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 心より感謝を申し上げます。

 なお、文章に稚拙な部分が多く見受けられるとは思いますが、筆者の文章力の未熟さゆえでございますので、ご容赦下さいまし。

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偉いお役人たち、こんな未来


役人である主任 「と部下との会話。

部下 「主任! 大変です! 今度の国会で、我が部署に支給される国家予算が削減されるそうです!」
主任 「なんだと! それは大変だ!」
部下 「どうしましょう。もう公費でキャバクラなんて行けませんね」
主任 「 そうだな」
部下 「もう公費で接待ゴルフできませんね」
主任 「 確かに」
部下 「公共事業の談合費用も捻出できませんよ」
主任 「 あ、そうだ。いいことを思いついたぞ」
部下 「何です?」
主任 「我が部署の年間予算を水増し請求して、我が部署に対する国家予算の削減を防ごう」
部下 「さすが主任 !」
主任 「 何が何でも、お金を確保するぞ!」
部下 「はい!」

また、未来。

部下 「主任 「! 何とか予算を確保できたそうです!」
主任 「 そうか。良かった」
部下 「でも、何で主任 「とか、偉い役職の人たちばかりが国家予算から出たお金を自由に使えるんですか? 僕たち部下には全然お金を自由に使わせないのに」
主任 「ハハハ。当たり前じゃないか」
部下 「僕たちがメモ用紙1枚使うのも渋ったり、事務用品を買っても公費で落ちなかったり、とてもケチってるのに。不公平ですよ」
主任 「ハングリーだよ、ハングリー。俺もお前くらいのときは、上司が自由にお金を使える様を指をくわえて見てたものだ」
部下 「はぁ」
主任 「俺たち上司ができるだけ豪奢にお金を使うのを見せ付けることで、部下が羨ましがる。羨ましくなった部下はハングリー精神で頑張って昇進を目指して努力する。その部下が昇進したら、上司のお金の使いっぷりを思い出して、更にゴージャスにお金を使う。その部下は、その上司を見て、羨ましがる……。これが延々と時代を経て繰り返されるんだ。《輪廻》だな」
部下 「それにしても、どうしてそんなにお金を使うのに躊躇しないんですか? もったいなくはないですか?」
主任 「 所詮、国民の税金なのだから気兼ね無く使えるんだ。自分の金だったら、財布の紐はキツイが、他人の金ほど遠慮なく使えるぞ」
部下 「他人の金ほど使いやすい……ですね」
主任 「何よりいいのは、国のお金は、領収書が要らないから使途不明でも責任を取らなくていいことだな。じゃんじゃん使って、お咎めなし。無駄金使い、として週刊誌にすっぱ抜きされない限りは、国民にはバレない。批判を受けても、ノーコメントで通せば、何とか切り抜けられる。そして、退職まで文句を言われない程度にテキトーに仕事をすれば、後は万々歳だ。これはもう、病み付きだな」
部下 「なるほど」
主任 「 気持ちいいぞ。銀座のクラブで高額紙幣を投げ散らす『紙幣吹雪』をしたときは、自分が《役人》で良かったなぁ、って思ったものだ」
部下 「なるほど。じゃあ、僕が努力して昇進したら、お金を自由に使えるようになるんですね!」
主任 「 ああ、頑張れよ」
部下 「はい! 主任、最高のアドバイスをありがとうございました!」
主任 「 うふふ」

未来、また未来。

部下 「大変です! 主任 ! 構造改革の煽りを受けて、公的機関である我が部署が廃止されることになりました! 倒産ですよ!」
主任 「 な、なんだと?! せめて退職金は確保できるのか?」
部下 「それは分かりません。どうしましょうか。《天下りの廃止》が法制化されたために、僕たちの次の就職先もないようです」
主任 「 そんな……。天下りができないのなら、何のために《役人》になったんだか」
部下 「ですよね。僕は小さい頃から、両親から叱咤激励されて、国家公務員試験を一生懸命勉強して、見事合格し、《役人》になったんです。どれほど大変だったことか」
主任 「 分かる、分かる。俺もそうだ」
部下 「景気に左右されることなく国家予算から支給されるたっぷりの給与や、関連企業を次から次へと渡り歩き、給与や退職金をほぼ一生貰い続けられる《天下り》という至福のシステムがあったからこそ、僕は《役人》になったんですよ」
主任 「 ホントだな。もう自由に使えるお金がなくなるなんて」
部下 「主任のように『紙幣吹雪』を経験する前に、辞めなければならないなんて、哀しいです」
主任 「 ガッカリするな。自分のお金で『紙幣吹雪』すりゃいいじゃないか」
部下 「まさか! それは他人の金だからこそ、心置きなくできたことなんです。自分のお金なら、家計簿片手にチビチビ使いますよ」
主任 「 確かにな」
部下 「主任 、これからどうしましょう」
主任 「 辞令が出るまで、対策を練ろう」
部下 「はい」

さらに、未来。

部下 「まさか、主任と同じ会社に入社できるなんて、思いませんでしたね」
主任 「 確かにな。部署が廃止されたときはどうなるかと思ったが、運良く民間企業に再就職できたんだから、ラッキーだな」
部下 「ええ。民間企業で働くのは初めてなので、どうなることかと思いましたが、とにかく、路頭に迷うことがなくて、良かったです」
主任 「 ああ」
部下 「それにしても、民間企業というのは、こんなにも経費にはケチだと思いませんでしたね。ちゃんと仕事をしないと口うるさく文句を言われるし。これじゃ下っ端の役人だったときと余り変わらないじゃないですか」
主任 「 《経費節減》が口癖の世界に入るなんて、《役人》だったときには、想像もしなかった世界だ。退職までの日数をカウントダウンしながら、テキトーに仕事をしていたあの頃が懐かしい。郷愁の想いだ」
部下 「はぁぁ……」
主任 「 はぁぁ……」

そして、未来。

部下 「まさか、主任 と同じ刑務所の監房に入るなんて、思いませんでしたね」
主任 「 確かにな。《役人》時代が忘れられなくて、研修費用に当てられた会社のお金をお前と一緒にゴージャス使ったことで、こうやって横領の罪で逮捕されるなんて、思わなかったな」
部下 「主任がいけないんですよ。『お金を使っても、会社の人にばれなければ大丈夫』とか言うから。すぐに帳簿検査でばれちゃったじゃないですか」
主任 「 甘かりし頃の癖はすぐには直らない、か。お金を使っても責任に問われないあの頃が本当に良かったな。伝統のように繰り返し続けた国のお金の無駄遣いは、世間的にはこんなにもイケナイことだなんて、知らなかったよ」
部下 「あぁぁ……はぁ。お先真っ暗ですね」
主任 「 あぁぁ……ふぅ。何でこんなことになったんだろう」

   

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。
 心より感謝を申し上げます。

 なお、文章に稚拙な部分が多く見受けられるとは思いますが、筆者の文章力の未熟さゆえでございますので、ご容赦下さいまし。

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 この度はお読みくださり、誠にありがとうございました。

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