カテゴリー「エッセイ:架空請求の体験談」の記事

【架空請求の体験談】メアド変更連絡の誘惑

旧友からの便りとは、得てして突然である。

唐突に訪れたメールによる便りは、いささか私を怪訝にした。

届いたのは下記のメール。

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

久しぶり~(≧.≦)
メアド変更するので
登録宜しく(//∇//)
○○○@docomo.ne.jp

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

メール本文に名前等が一切ない。

ドメイン前の「○○」のメールアドレスには、
にはヴィーナスパフューム(英文字)などとあり、
差出人の名前を類推させるものは、これまた無い。

パフュームをヴィーナスというような友人が果たしているのかと、
登録者の少ないアドレス帳をいじって探してはみたが、
判断がつかなかった。はて。

思い切って、「あなたは誰ですか?」と返信してみたかったが、
何だか失礼なような気もして、何もせずにいた。

数週間後、またもや旧友からと思しきメールが届いた。

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

○○○@docomo.ne.jp

正しいアドレス登録してくれました?
ちなみに迷惑メールが多いので携帯アドレスしか届かないようにしてます。
大丈夫ですか?忙しいなら電話番号を教えますけど。
ミッチーの他にも昔のメンバーが連絡先を知りたがってましたよ
みんなに連絡先を教えちゃいますね。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

文面を見て、なんだか心がうきうき。

旧友からの連絡とあらば、笑顔がほころぶ人間の心理。

なあんだ!

やっぱり私の友達じゃーん!

みんな私の連絡先知りたかったんだ、それを先に言ってよ~!!
もう~照れ屋さんなんだからっ!

……と思考を巡らして、はたと思い当った。

 

 

そもそも「昔のメンバー」とは何だ。

 

 

メンバー? 
麻雀仲間か? 麻雀を一度もしたことが無い私が。
文芸仲間か? いや、毎年年賀状を送りあっている。
バンドメンバーか? そういやバンド組んだ記憶がない。

昔のメンバーという単語で行き詰っていた私は、
旧友につながる大事なヒント「ミッチー」に思いを巡らせた。

ミッチーとは誰だ。

元相棒の及川さんちのミッチーか。一切縁が無い。
ミッキーさんちのマウスなら知っているが、オリエンタルランドが所有している。
ライオネルさんちのリッチーなら、エンドレスラブなどの曲を聴いたことがある。
スッチー、サッチー・・・と考えてみたが、肝心の旧友ミッチーの手がかりが見当たらない。

そもそも、沖縄人の私が、ミッチーなる愛称の人物を旧知に持つはずがない。
名前がミチコなら、「ミーチー」と呼ぶのが、沖縄愛称のド定番だ。

じゃあ、ミッチーとは何ぞや?

思わず、「あなたは誰ですか?」と返信してみたかったが、

少しぐっとこらえて、念のため、ネットで少し調べることにした。

 

 

調べた結果・・・・

「アドレスを変更しました、と送ってくる迷惑メール

 

 

なるほど。ようやく合点がいった。

見知らぬメールだからと「誰ですか?」と善意で返信すると、
URLが書かれたメールが送りつけられ、そのURLをクリックすると、
アダルトサイトの架空請求が送り付けられるという、
いわゆる「ワンクリック詐欺」なのだ、と。

旧友メールと思っていたのが新手の詐欺とは……。

皆さんもご注意あそばせ。

【架空請求の体験談】ワタシ架空請求ですけど何か?


 マスターズサポートからの請求を検索して我がブログにお越しになった方。

 そうです。

 マスターズサポートなる会社からの請求は架空請求メールです。

 安心して無視してください。メールは、即削除です。

 こんな悪質な架空請求メールに関して貴方の大切な記憶のスペースを陣取らせる必要はありません。さっさと忘れまてしまいましょう。
 迷惑な架空請求メールのことなど、忘れるに越したことはありません。

 絶対に架空請求先に電話しないで下さい。

 絶対に架空請求先にメール返信しないで下さい。

 電話・メール返信するなど、連絡を取ることで、貴方の個人情報が相手方に渡ってしまう危険があります。これが一番の問題なのです。

 無視です。

 なお、記事末尾に「なぜこのメールが架空請求なのか」の根拠を簡単に記してあります。もしこの架空請求と同一、もしくは類似の文章のメールを受信した方は、それが架空請求であることを、確信して下さい。よろしくお願いします。


【以下、架空請求メール本文】

差出人: msco010@docomo.ne.jp
宛先:
送信日時: 10/11/18 12:26
件名:

(株)マスターズサポート
0338358575
お客様担当の内田と申します。

突然のご連絡失礼致します。
お客様がご使用の携帯電話端末より、以前お客様がご登録されました『有料情報サイト』『特典付きメルマガ』『懸賞付きサイト』等において、現在無料期間内等退会手続きが完了されてない為、ご登録料金及びご利用料金が発生しており、現状で料金が未払いとなった状態のまま長期間の放置が続いております。
当社はサイト運営会社様より御依頼を受けまして、料金滞納者の個人調査、悪質滞納者の身辺調査などを主に行っている調査会社となっております。
本通知メール到達より翌営業日(営業時間内)までにご連絡を頂けない場合には、運営管理会社のご利用規約および法律に基づき、
①個人調査の開始、②各信用情報機関に対して個人信用情報の登録、③法的書類を準備作成の上、即刻法的手続き(強制執行対象者等)の開始、以上の手続きに入らせて頂きますので予めご了承ください。
ほとんどの場合、現段階での和解措置が可能であると思われましたので以上の手続きに入る前にご一報差し上げた次第です。

※このメールは該当するお客様に同一の内容を記載させて頂いております。ご利用になられたサイト、延滞の状況はお客様によって異なりますので、退会手続きの再開、お支払いのご相談等をご希望のお客様は、お手数ですが、担当「内田」まで必ずお電話でお問い合わせ下さい。(メールでのご対応はお受けできません)
尚、本通知は最終通告となります。
ご連絡頂けない場合は上記の法的手続きとなります。

営業時間 月曜~金曜
午前9時30分~午後6時迄

休日
土、日、祝祭日

【以上、架空請求メール本文】


架空請求である根拠

 送信先である「(株)マスターズサポート」という調査会社は、検索しても所在地が判明しない。唯一の所在が特定できる電話番号を電話番号検索で調べたがヒットしなかった。メールアドレスは言わずもがなである。

 株式会社の電話番号が、企業電話帳に載らないケース――
 それは、紛れも無く、これが自らの身元を特定されては困るブラック会社、闇会社、あるいは架空会社である・・・ということの証明に他ならない。

 もし本当にちゃんとした企業なら、正々堂々と会社の所在地をメール本文に載せるべきである。

 連絡先が電話番号とメールアドレスのみ・・・って、一体どういうつもりだろうか。
 付き合いたての彼氏・彼女じゃあるまいし。

 頭隠して尻隠さず。

 正真正銘の「請求」たることを装うつもりなら、もう少しきちんと見栄えを整えて欲しい。
 これでは明らかに「ワタシ架空請求ですけど何か?」と朗々とのたまっているようなものだ。

 

請求つもりするならワレの身元をはっきりさせてナンボやろ、ボケ!

 

 と怒鳴りたくなったが、ぐっとこらえておいた。なんて優しいのかしらワタシ。

 

 なお、架空請求は振り込め詐欺である。

 支払った場合には詐欺罪が適用されるが、支払わない場合には詐欺未遂罪が成立する。

 いずれにせよ、架空請求メールを送った時点で犯罪なので、「支払わないといけないのでは?」と怯える必要は全く無いのでご安心を。

 

◆ 追伸 ◆

 この度、頂いたコメントの中で、見過ごせない悪質な架空請求のご報告があり、掲載いたしました。情報を寄せてくださった方、ありがとうございます。

 架空請求元を検索してみたところ、ここ最近に送信されたもののようです。直近の架空請求なので(アツアツ!HOT!)、警鐘を促すべく載せました。

 時間があるときに、この架空請求に対してノリツッコミして更新しますので、よろしくお願いします。


【架空請求の体験談】されど悲しみの出会い系


◆ エッセイ概要 ◆

 著者の携帯電話のメールボックスに突然届いた「info@w-heart.me」という見知らぬメールアドレスからのサイトアクセスを促すメール。発信者の「WhiteHeart」とは一体何者なのか? ――メール文面にノリツッコミしながら分析する中で、出会い系サイトの新たなる罠の存在に気付く。エッセイ末尾に、「ドメイン指定拒否」対策について述べる。


 またもや携帯電話に不審なメールが届いた。

 メール件名は「無題」であったが、本文の冒頭を一瞥するだけで、私はそのメールの不審さを一瞬で感じ取った。

 これは、コイスタ・出会い系メールの受信から5ヶ月後にして、私を再び辟易させた悪夢の来訪の顛末記である。

 以前、コイスタからの悪質出会い系メールが届いた際に、メールの設定でドメイン指定拒否をしっかり行ったためか、それ以降、一度も不審なメールの受信を経験することなく、平穏無事に日々を暮らしていたが、ここへ来ての不審メールである。

 思わず「今更?」とひとり言を呟き、困惑してしまった。

 

 ※コイスタから届いた《悪質出会い系メール》について書き記した顛末は、エッセイ【ウレシ・ハズカシ・出会い系!】にございます。ご興味がございましたらご一読ください。

 

 一体どうなっているのであろう。はて。

 

 info@w-heart.me

 杏様から新着メールが届いています。

 

 それにしても、さっぱり見覚えの無いメールアドレスである。
 「杏様」という名前にも、身近には知り合いはおらず、見覚えは無い。
 見目麗しい女優に同じ名前の方がいるようだが、曲がり間違っても私との接点は無い。

 芸能関係の有名人への関心はあまり頓着しない私ゆえ、有名人との接点などは皆無に等しい。沖縄という土地柄、地元出身の有名人が身近に数人いるが、とりたてて近しいという訳でもないために、特筆することも無い。
 私の場合、セレブなスターよりも、売れない中堅芸人(シャカ、18KIN、$10、ホームチームなど)への愛着が深いため、彼らとの接点なら大いに喜ぶが、そうでなければ、あまり興味はない。
 したがって、

 ワタナベ・ケン様からお電話です」

 と、仮に海外電話の交換手に電話口で明瞭な声で告げられたとしても、

「まさか! あの、世界のケン様が、わ、私に電話を?」
 一瞬の絶句。歓喜の絶叫、顔面を紅潮させ、やがて感動の大号泣――

 となるかどうかは疑問だが、現実問題として、電話口に出た相手が、これまで一度も自らと接点の皆無である世界のケン様と同一人物であるはずはなく、この場合、電話口の相手は世界のケン様と同姓同名の赤の他人である「ケン様違い」の可能性が極めて高いのが実情である。

 この点、同姓同名の赤の他人ではない場合には、

 「どうも~、ワタシが世界のワタナベ・ケンです!」

 と、「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングで出演を快諾する三流タレントよろしく高いテンションでケン氏がのたまい、その後に続くセリフと言えばもちろん――

 「今日はある方の紹介で貴方のことを知りました。
 実はワタシ、ただ今ハリウッドで映画を制作しているのです。公開となりましたらワールドプレミアにご招待いたしますので、その際はぜひご覧頂きたいと思っています。
 ただ・・・(と、ここで声を震わせ詰まらせる)
 今制作している映画についてなのですが、総制作費200億ほどで全世界規模で撮影するにあたり、ただ今資金繰りに困っているのです。
 世界的に大ヒットすることは各映画評論家も太鼓判を押すほどで今世紀最大の興行収入を得ること、全米が感動し大号泣することは、ほぼ間違いないのですが、世界的不況により幾つかのスポンサーが降りてしまい、製作資金維持の危機に瀕しています。
 ぜひ、出資金を200万円ほど、どうでしょうか。世界的映画の完成に一役買ってください。お願いします! 貴方の力が必要なんです!」

 世界のワタナベ・ケンが、あのコワモテの顔を苦渋に歪め、イカツイ体躯を低く折り曲げて電話口で土下座さえしているような厳粛な雰囲気である。
 こうなれば一介の庶民の自分が、さも世界的プロデューサーへと躍り出た錯覚さえ覚えてしまう、非現実的なセレブ感。

 思わず財布の紐も緩くなり、私の手には製作資金の足しにしてもらおうと、数枚の小銭が握り締められ、口からは思わず「いいとも!」と絶叫しかねないというもの。

 しかしながら、これは有名人の名を語った単なる詐欺である。

 世界的・ワールド・全世界・全米・興行・・・・・などと、高額のお金を引き出させるための「安心キーワード」を幾つか並べられると、今までの庶民生活が湯気のように霞んで消え、一方でゴージャスライフに彩られたセレブチックな煌びやかな生活が蜃気楼のように立ち現れる。
 「お金なんていいの、私は、世界のために役立っているという至福感が欲しいのよ!」
 と、キャッシュカードや印鑑、通帳など一切合財を、電話口で言われた通りに封筒に詰めて、郵便ポストに投函しかねない。

 何と言う目くらまし。初めて明かりの点った電球を見た人間の感じる目の眩しさくらい、そのセレブチックな鮮やかさに目がチカチカと痛くなる。
 ここはもちろん、

 「んなアホな! そんなにお金が必要なら、ビル・ゲイツか、鳩山のお母さんにでも頼め!」

 と、胡散臭い相手からの現実味の無い資金提供の要請を、二言で一蹴できる冷静かつ客観的な目を持たねばならない。

 「杏様」ひとつで、美しき女優ではなく、同姓同名の別人か、あるいは架空請求、詐欺だとしか思えないあたり、庶民の貧困な発想が悲しい限りである。
 実際はそうなのだから、仕方があるまい。

 

 ■件名■
 いじめにあっていた高校生相手に真剣な対応してくれる大人の人なんていないですよね。

 

 なんとまあ、今までとは毛色の異なる文面だ。

 「いじめ」という、良心的な大人であれば見過ごせないキーワードを混ぜ込むあたり、一筋縄ではいかない気がしてくる。
 これを書いたのは、いじめ被害に遭っている高校生、か。

 ――女子高生は悩んでいた。彼女は帰宅しても空っぽの居間を見ると虚しさを覚える。父親は深夜まで会社で残業し帰宅しないことも日常茶飯事である。母親は社交ダンスに溺れ、ダンス講師とのデートに忙しい。たまに顔を付き合わせるたびに口げんかを始める両親を、若い彼女は生理的に嫌悪していた。彼女は一人自室にこもり、両親の喧嘩の声を打ち消すために、デジタルオーディオのボリュームを最大にして音楽を鳴らす。
 「何時だと思っているの!」と母親が彼女の部屋に怒鳴り込み、オーディオの電源をコンセントから引き抜くと、一人きりの広い部屋を満たしていた音楽は霧のように消え失せ、残されたのは空虚であった。悔し涙を流す彼女は布団を頭から被り、一人身を震わせる。
 家族の寝静まった後、こっそりと家を抜け出し、コンビニやカラオケ、ゲームセンターなどで、深夜の時間を潰す。

 寝不足から朝は起きられず、昼頃学校に行けば、髪を派手に赤く染め、お化けのように厚塗りした化粧から、クラスメイトらは彼女の席を窓際へと寄せて、授業中も彼女を遠巻きに眺めるのみで話しかけることはない。
 こんな人生、嫌だ。自分を理解してくれる人はこの昼の世界にはいない。早く夜が来て欲しい。誰とも顔を合わせずに済む夜が――。彼女は嗚咽する。

 なんという現代の孤独! 

 お天道様を仰いで私は嘆息する。

 この穏やかな陽の光を浴びることの出来ない懊悩の人生を送っているなんて。こんなの、おかしい。少女だろうか老女だろうか、クリス松村だろうが、花のように草原の中で舞い踊ることが誰にでも許されていないのは変よ。
 どうにかして、この女子高生の孤独を解消してあげたい、そう思って何が悪いの? 何か少しでも励ましの言葉くらい掛けてあげようじゃないの。
 ささやかではあるけれど、話し相手くらいにはなってあげたい。孤独な彼女に真剣な対応をする大人がいるってことを、私は教えてあげたいの!

 そう考え、思わずURLをクリックしそうになる。

 ダメだ! クリックしてはいけない!

 これは、読み手の同情心を買うための罠だ。
 トリンプだ。違う、それは女性用下着メーカーだ。
 トラップだ。そう、トラップ。――罠だ。

 「女子高生」という熟しきらない果実のような瑞々しく若い性への憧れや、ハレンチな思考、ただひたすら桃色の好色心を持つ者たちを誘うエロチックな文面で済んでいた時代から、ついに、アダルトな好色心相手ではない、「同情」という新たなる罠が口を開いて待ち構える時代へと移行したのだ。

 これはまさに、

 「同情するならをくれ!」

 ならぬ、

 「同情するならメールをくれ!」

 という同情志向か。「同情詐欺」とでも言おうか。
 しかしながら、寸借詐欺などと同様で、人の優しさに付け入る犯罪には悪質さを感じる。
 まあ、よく考えるものである、と、呆れるのを通り越して、ほとほと感心してしまう。
 思わずオードリー春日のように「ケッ」と般若顔をしてしまったではないか。

 

 ■内容を読む↓↓(無料)■
 http://mb.w-heart.me/reception/individual.php?mh=(以下略)

 初回アクセス2500円分プレゼント♪

 

 そっか! 「無料」でメッセージの内容を読めるのならアクセスするっきゃないか! 
 アハッ! タダ、タダ、タダーン!

 ウキウキとサンバのリズムを踏みつつ蝶のように舞いながら掌を返し、電光石火のごとくクリックするとでも思っているのだろうか。白々しい。

 どう見たって、怪しさがバレバレなのである。年齢やウエスト周りをサバ読みするグラビアアイドルのしたたかさ並みの図太さである。
 このような方策は、末代までの赤面ものであることに、いい加減気付いて反省して欲しい。

 大体、「初回アクセスで2500円分プレゼント♪」というのも、マツコ・デラックスの規格外の巨大さ並みに戦慄を禁じえない胡散臭さではないか。

 そもそも、このメールの好餌は、女子高生の身辺への心配、憐憫、同情心からメールを送るという、善意に基づいている(としておく)はずである。
 この「同情作戦」を完遂する真っ最中において、この能天気な「プレゼント♪」の文面では、心痛な面持ちで同情を一身に集め、今まさにメールを差し出さんとしていた私などの純粋な気持ちを甚だ薄めてしまうもので、極めて興ざめである。
 しかも、「2500円分」という具体的な値段を挙げ連ねた生々しい数字も、同情作戦からかなりの乖離を見せ、更なる興ざめに一役買っている。

 「同情するならメールをくれ!」
 のテイストを維持するつもりなら、せめて、

■内容を読む↓↓■
 http://(以下略)

 初回アクセスで、アジア貧困地域の子どもたちからのビデオメッセージ(※字幕つき・30秒)をご覧いただけます。
 学校に通いたいが学校が無い、学校はあるものの貧困のために不当な児童労働を課せられている、紛争地域のために難民キャンプ暮らしをしている、など、明日への希望に満ちながらも政情不安、貧困のために苦しんでいる子どもたちを救うための貴方の一助を待っています。

 こういう文章なら、一貫性があるというものである。貧困地域への経済的援助などの、読む者のボランティア精神を根底から疼かせるような工夫が必要だ。

 

 ※クリックで料金の発生不当な請求等は一切ございません。

 

 せっかくのボランティア精神も、この一文で台無しである。
 山と積み上げられた信頼も、ここに瓦礫のように崩れ落ち、失墜する。

 いくらボランティア精神や善意の心を持っていても、クリックしただけで料金が発生したり不当請求がなされるようなサイトに誰がアクセスしたくなるというのだろう。
 書けば詐欺臭くて誰もクリックせず、書いてあってもクリックしたら不当請求、書かずにクリックすればこれも不当請求、という、何とも悪質な事態が待ち受けている可能性がある。
 何が何でも、クリックしないに越した事は無い。
 クリックしない、させない、周囲の協力。これが一番。

 さても、この「クリックしたとしても、料金発生・不当請求は無い」という文面を見ると、イカガワシイ感じを受けてしまう。

 それはあたかも、バラエティ番組で、熱湯風呂を前にして立ち、「押すなよ、絶対に押すなよ!」と周囲の芸人たちに噛んで含めるように主張した挙句、熱湯風呂に突き落とされるリアクション芸人の常套手段に似ている。

 「押すなよ=熱湯風呂に落とすなよ」という“前フリ”に対しての、「押す=熱湯風呂に押して突き落とす」という“オチ”に呼応した、古典的な芸のパターンだ。

 したがって、ここでの「不当請求はありません」が“前フリ”である以上、必ずそれに呼応する“オチ”が「不当請求が行われる」であるから、この、《前フリ》―《オチ》のリアクション芸の常套パターンから解すれば、「クリックすれば不当請求が行われる」ことは、目に見えている。千里眼を持っていない私でさえも見抜ける、分かりやすいパターンである。

 「このおでん、全然熱くないよ!」
 「まさか寿司にワサビがたっぷり入っている訳ないし!」
 「甘いシュークリームにカラシが入っているのは変だって!」
 「こんな所にザリガニがいるはずはないよ!」
 「まさかムエタイの選手がタイキックをするために待ち構えているはずはない!」

 これらはリアクション芸のお笑いにおいて、極めて有名な“前フリ”である。

 この前フリに呼応したオチは、もちろん、阿鼻叫喚の地獄絵図、ムンクの叫びも真っ青になるような、全身を身悶えさせて一世一代のリアクション芸で応えねばならない。
 観客の万雷の喝采と沸き立つ歓声は、見る者の度肝を抜くリアクションの先にある。

 とすれば、

 「クリックしても不当請求しないよ!」
 「クリックしても料金発生しないよ!」

 という“前フリ”に対しては、必然的に不当請求が発生し、雪だるま式に料金が加算されるという“オチ”が待ち構えていることは想像に難くない。

 安易にクリックした結果、不当請求が行われ、気付けば多重債務者となり、破産するタイミングを逃し、サラ金、闇金融、借金取りに追われて隔地を転々とする借金地獄へと行き進み、果ては戸籍売買などの無間地獄、借金を苦に富士の青木ヶ原樹海へ一路、自殺への片道切符を買う――という人生の幕引きを、この出会い系メール業者へリアクション芸として示さねばならない羽目になる。

 そんなこと、どう考えてもおかしいのである。
 (この「ちょっと変だぞ」と何気なく思う感覚は、実は人権意識に根付いており、法律違反の原因を見つけ出す重要な感覚であると思う)

 お笑いはエンターテイメントであり、見て楽しむものだが、不当請求は犯罪である。

 不当請求が発生しないという“前フリ”に対する“オチ”を連鎖的に発生させてはならないのだ。不当請求・架空請求にお笑い方程式を転用させてはならない。

 前フリに呼応したオチが発生することが分かっている以上、この「前フリ ― オチ」の悪しき連鎖を断つ必要がある。

 借金地獄で苦しむ我々のリアクションを見て笑うのは我々自身ではなく、借金を取立てる取立人であり、この出会い系メールを送った業者である。彼らは血と涙の金銭を搾り取り嘲笑している。前フリという疑似餌に釣り上がった哀れな客の無様な最後という“オチ”を鑑賞し、嘲笑しているのだ。

 したがって、いかなるキワドイ、イカガワシイ言葉であっても、決してクリックしない。
 前フリに反応しない、その勇気が何より大切である。

 前フリに対して何も行わないことで、オチの不発生により観客を冷めさせてしまった(ダダスベリさせた)業者を、我々が嘲笑する番である。

 「クリックしても不当請求しないって・・・そんな訳無いじゃん! 絶対に請求するんでしょ?」

 ――業者をあざ笑い、大いに馬鹿にし、指差し、大いに笑ってやる――

 これが、業者に羞恥心と遵法精神を生じさせ、不当請求を発生させる悪質出会い系メールを根絶させることにつながる、と私は信じている。

 だからこそ、私は架空請求エッセイを書くテーマとして、「架空請求を、笑って哀れみツッコミを!」と謳っているのである。 

 それはいいとして。

   
 
▽ログインメニュー▽
http://mb.w-heart.me/home/index.php?mh=(以下略)
送信元:WhiteHeart
【18歳未満 利用禁止】

 

 会社名は「WhiteHeart」、ホワイトハート、とでも言うのだろうか。
 コイスタと同じような文面である以上、同じ会社ではないのか、ペーパーカンパニーではないかと疑ってしまいたくなる。

 このホワイトハートなる会社が、その名前を元に検索すると出会いサイトでヒットすることからしても、出会いサイトであることはまず間違いないことであるとしても、「悪質か否か」については疑問が残るのではないか、と考えがちだが、ここでよく考えて欲しい。

 一度も出会いサイトにアクセスしていない登録もしていない私に、出会い系サイトからの「初回アクセス」を促す見覚えの無いメールが届くこと自体、既に違法、「アウト!」なのである。

 

 そもそも、かつて、ユーザーに対して、許可を得ることなく、一方的に業者から広告メールが送りつけられる場合が多くあった。

 このため広告メールの大量発生からユーザーを守るために、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特定電子メール法)、「特定商取引に関する法律」(特定商取引法)などにより、不特定多数のユーザーに広告メールを送る場合には、件名に「未承諾広告※」という文字列を挿入することや、事前にメールを送ることの許可を得ていない場合には受信拒否の手続をメール中に明記することなどの規制が行われていた。(オプトアウト規制)

 しかし、受信拒否の手続を行うと見せかけてメールを返信させることで、返信メールアドレスをスパム業者が収集したり、メール中に記載されている受信拒否のURLをクリックするだけでアクセスした携帯電話やパソコンの情報がサイトに流出してしまうように見せかけて利用者の恐怖心を煽るワンクリック詐欺の温床となってしまっていた。

 これらの被害を食い止め、迷惑メール防止の実効性を上げるために、2008年に改正された特定商取引法や特定電子メール法では、事業者による一方的な商業広告の送りつけ(迷惑メール)を規制し、ユーザーを保護している。(オプトイン規制)

 これまでに、迷惑メールを送信した業者が摘発、行政指導されている。罰金も、これまでの100万以下から3000万円以下と引き上げられている。

 ちなみに、総務省管轄の特定電子メール法では広告宣伝メールが規制され、経済産業省管轄の特定商取引法では通信販売などの電子メール広告が規制されている。

 

 長く書いてしまったが、要は、一方的に送りつけられた覚えの無い迷惑メールは、違法(特定電子メール法違反、3000万以下の罰金)のである。

 よって、今回、一方的に送りつけられたホワイトハートからのメールは、悪質な迷惑メールであると断定しよう。

 思わず私は

 文句があるなら出てこいや! 

 と小声で呟いてしまうのだが、ともすると業者からまた「営業妨害するな!」のバッシングコメントが殺到してしまうのが、なんとも辛いところである(応援コメントは大募集)。

 しかしながら、今回、思わずクールポコともに「なにー、やっちまったな!」と叫んだ貴殿は、悪質迷惑メールを見破った褒美として、今宵は大いなる祝杯を上げて欲しい。。

 現代のわが国、草食系と称する羊のような心優しい者たちの多い中、見覚えの無い不審なメールを「迷惑メール」と断定する勇気はなかなか持ち得ないものである。
 勇気を持って迷惑メールであると疑念を持った、貴殿に私は敬意を表しよう。

 

 さて。コイスタに然り、ホワイトハートに然り。

 これらの出現しては消える悪質出会いサイトの、行政指導と罰則の法の網目を捕まる前に素早くかいくぐるイタチのような逃げ足の速さが、被害者を一人また一人と増しているのは事実である。

 とにかく、一方的に送りつけられた見覚えの無いメールに載っているURLはクリックしない、メールには返信しない、これが鉄則である。

 

 さて、今回も届いたメールのアドレスを、ドメイン指定拒否して事なきを得た。

 法改正をもってしても、まだまだ駆逐されぬ悪質出会い系メール。

 その毒牙は今も日本中の誰かに向けられているのは言うまでもない。


◆ 追記 ◆

 携帯電話に届いた見覚えの無いメールの対処法としては、

 携帯電話のメールアドレスのドメイン拒否 

 これが一番の有効な対処法ではないかと思う。
 以下、参考までに携帯電話各社のドメイン拒否のページを載せておいた。

 NTTドコモ iモードから受信/拒否の設定

 au 指定拒否機能

 SoftBank 迷惑メール対策

 ※ドメイン拒否をするには、送られてきた「info@w-heart.me」などの“メールアドレスそのもの”を登録するのではなく、@w-heart.me」と@マーク以降を登録すると、ドメイン拒否となるそうだ。

 ご参考までに。


【架空請求の体験談】ウレシ・ハズカシ・出会い系!

 


 

 深夜、携帯電話のメールボックスを開いた私の目に飛び込んできたのは、次の衝撃的な文面に始まる一通のメールだった――。

☆コイスタ☆からのお知らせ
潤☆彡さんより ゲストさんにメールが届きました。(以下省略――)

(以下、便宜上、メール文面を分割・一部割愛、要所を太字にして掲載)

 

 メール件名 「潤☆彡さんからのメッセージ」

 

 一瞬、私の目は驚きで大きく広がり、やがて点になった。

 ――誰?

 全くもって聞き覚えの無い名前だ。
 一生懸命考えてみたが、思い出せず、首をひねるばかりである。
 知人の中に「潤」と名乗る中でこのような場面でメールを送ってくる方は、本名・ハンドルネームを含めて存在しない。一体誰なのであろう。

 「潤」という名前で思いつくのは、懐メロ好きな私には、「翼をください」を歌っているハイ・ファイ・セットの山本潤子さんを最も想起しやすく、続いてネプチューンの名倉潤氏くらい、と流行にイケていない私の相場は決まっている。
 ましてや、今をときめく花の女子高生のように「もちろん松潤♪」となるはずは毛頭無い。

 ジャニーズにとことん疎く、メンバーの区別をほとんどつけることの出来ない私が
「きゃっ☆松本潤からメールが来た♪」
 と若々しい甲高い嬌声を上げ、おびただしく取り付けられた可愛らしいぬいぐるみのストラップを振り回し、キラキラとピンクのモザイクでデコレーションした携帯電話をお手玉のように放り投げ、きゃっきゃっと大喜びする――はずは決して無い。

 私という人間、着信音に森山加代子の「白い蝶のサンバ」という年齢不相応な懐メロを用いるあたり、「潤」氏なる者からのメールに狂奔する可能性は、もはや限りなくゼロに近い。
 しかし、そうは言っても、もしも仮に、

メール件名 「森鴎外さんからのメッセージ」

 こう書かれていたら、まず間違いなく、携帯電話を天に掲げ、「ヒーハー!」とブラマヨ小杉の決め台詞を心の底から大声で叫びながら、喜びを全身で表現するかもしれない。
 鴎外からメールが届くなんて、なんて夢のよう! 私、とっても幸せ!
 そうなったら、私は迷わずメールを開封し、提示されたURLなどを躊躇なくクリックしてしまうかもしれない。今は亡き明治時代の文豪・森鴎外との夢のコミュニケーションがいざ目の前に――

 私は激しく首を振り携帯を取り落とす。
 ああ、それはダメ。ダメなのよ! クリックしちゃダメなの!

 松潤氏を連想させる「潤」氏なる者の名前を見ただけで、胸をときめかせてクリックしてしまいかねない、純粋な乙女心に付け込んだ意味深なメール件名に、私はよもや悪意を感じずにはいられない。

 いや――よく見ると、名前は「潤」氏ではなかった。「潤」以外に色々な文字がくっついておる。

潤☆彡

 なんて斬新な名前なの!

 その余りの斬新さに満面に笑みがこぼれてくる。素敵、素敵すぎる。

 名前に「☆」が入る時点で、思わず「お前はつのだ☆ひろか!」とツッコミたくなるのは、古き良き昭和の時代背景を思わせ、悲哀を感じてしまう。
 思わず、「名前に星を入れる時点でナウい☆わヨネ」という、死語のオンパレードのツッコミしそうになり、私は慌てて口をつぐんだ。

 「彡」

 これは一体何と読むのだろう。
 「猫の引っかき傷か?」と我が腕に残る愛猫の容赦無い引っかき傷の形状を思い出し、「そうか、これは引っかき傷と読むのか」と合点したが、さすがに違うだろうと思い直し、ちゃんと調べると「さんづくり」という立派な呼称を与えられていることを知った。
 何と日本語とは深遠なことか。思わずパソコンのブラウザを見入り、感心してしまった。

 しかしながら、これら名前を名前に到底入るとは思えない、不可思議な記号の文字列を持つ見ず知らずの御方を、一体何とお呼びすればよいのか。

「ジュン・ホシ・サンヅクリ」

 何だか異国情緒がプンプン漂い始めた。
 このような外国名を見ると、海岸沿いで流れ着いた外国製の見慣れない古びた小瓶を拾ったような、胸をときめかせる高揚した気分になり、やたら嬉しく、ルンバのステップでも踏みたくなる。

 もしや――
 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ・・・似ている気もする。ひょっとしたら、フランス人か。きっと、サラサラ金髪ヘアの青い目の美青年。間違いない。
 ムンフバト・ダヴァジャルガル・・・白鵬の本名である。モンゴル人の可能性もアリ、とせねばならない。いかつい体躯をした細い目の巨漢か。なるほど。
 ムーディ・グー・ダンディ・ゲッツ・フォー・ラララライ・・・ふと、一時期、世間を時めかせた悲哀すぎる合言葉を紡ぎ出し、私は切なくなり涙をこぼしそうになった。

 ――メール件名だけでツッコミすぎて大幅な紙面を割いてしまった。話が先に進まないのではと、ヒヤリと冷や汗ひとつに今から危惧してしまう。

 ☆コイスタ☆からのお知らせ
 潤☆彡さんより
 ゲストさんにメールが届きました。

 「コイスタ」とは、調べたところ、出会い系サイトのようである。

 ――出会い系サイト? はて、と私は首をかしげた。

 出会い系サイトには全く縁のない私にとって、なぜ出会い系サイトからメールが届いたのかが分からない。
 知らないものは調べるしかない、と思い、調べることにした。

 そもそも出会い系サイトとは、出会い系サイト規制法(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律)第2条第1項第2号によって規定された、「インターネット異性紹介事業」である。
 この「インターネット異性紹介事業」とは、

①異性交際(面識のない異性との交際をいう。以下同じ。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、
②その異性交際に関する情報を、インターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、
③かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下同じ。)を利用して
④当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業をいう。

 ――らしい。法律上の形式的な字面だけを追えば、イカガワシサは微塵も感じられない。出会い系の一体何が問題なのだろうか。
 疑問に思いつつ、読み進める。

 本日、Pt還元1.5倍!!
 コイスタキャンペーン実施中♪

 「Pt」とは、どうやら「ポイント」のことであるらしい。
 出会い系に疎い私であるが、調べていくうちに、色々と分かってきた。

 出会い系サイトでは、ポイント制を導入し、有料でメールをやり取りするらしい。

 新聞によると、消費生活センターに寄せられた相談の中で、ある男性は、「出会い系サイトを利用して女性とメール交換を続けたところ、利用料金を示すポイントが膨れ上がって約1200万円に達し、請求通りカードで支払った」という。

 自分自身に降りかかったら、と想像するだけで、身震いを禁じえないゾッとする話である。例えるなら、狩野英孝やダンディ坂野のギャグ並みに打ち水効果のある冷ややかさであろうか。17℃に設定した冬場のクーラーか。寒すぎる。

 しかし、このポイント加算。1200万円とは一人の人間の費やしたお金とすれば想像を絶する被害額である。どこかで歯止めをかけることは出来なかったのか。

 恐らくきっと。残り少ないポイントの段階で、男性に更なるポイントを購入させるために、「今度、私の写真を送るね☆」と、サクラなる人間は写真をエサにポイントを費やさせたのではないか。サクラのでっち上げた架空の情報を被害者への見せ餌にしているのであるから、さながら釣竿の先に取り付けられた疑似餌か。被害者への人権侵害も甚だしい。

 「他者と出会いたい」という純粋な想いを抱きながらネットの大海を泳ぎ、運悪くも、出会い系サクラの撒いた美味な疑似餌に引っ掛かり、哀れにも釣り上がる人々。
 騙されたと知ったときの被害者の苦しみはいかばかりか。何とも痛ましい話である。
 有料と知りつつ利用したとしても、これほどの高額ではまさに不当請求である。

 不当請求――? まさか、不当請求を予感させるポイント制を示すメールが私のもとに届いたなんて。

 嗚呼、不当請求なんて、まるで夢のよう! 

 大体、記憶の片鱗にも引っ掛からない、全く見覚えの無いサイトからのメールが届くなんて、何だかスパイ大作戦のようなスリルを感じずにはいられず、心が浮き立ってくる。

 女スパイとなれば私はついに峰不二子ね――

 「ここはせめてチャーリーズ・エンジェルだろ」と時代に取り残されそうな自分自身にツッコミしながら、花も恥らうほどに頬を美しく紅潮させてメールを読みふける。

[タイトル] はじめまして
[内容を読む(無料)] 
http://koista.biz/cgi/get_mesg(略)

 「はじめまして」
 やはり見知らぬ人だったのね。ジュン・ホシ・サンヅクリさん。

 書きながらどうしても脳裏を、フランケンシュタインの特殊メイクをしたチェ・ホンマンの巨体が横切る。慌てて何度も首を振る。彼じゃない。違う。違うのよ!

 それにしても、「内容を読む」の後にある「無料」の文字の意味深なことよ。
 「今だけ無料、後ほど有料」と言わんばかりではないか。これぞさすが、不当請求の香り。その淫靡さ、確実にムスクの芳香である。
 内容がサイトクリックを誘導するURLということも、意味深さに拍車を掛けている。

CP詳細はログイン後画面よりご確認下さい。

 はて、「CP」とは何のことであろうか。私には見当もつかない。全く分からない。

 Cats for Party ・・・猫のための会。猫会とでもすべきか。薄汚い雑種の飢えた猫たちが、深夜丑三つ時に、路地裏の自販機のゴミ捨て場にたむろする、なんて、いささかほのぼの感が否めない。どうも不当請求とは相容れない和やかさだ。
 せめて、「女豹の会」としたほうが、いかにもイカガワシく、いかにも不当請求っぽい。

 Cute and Pretty ・・・覚えたての単語を並べた中学生か、と思わず自分自身を嘆いてしまった。このような類い稀な可愛らしい呼称を与えられて相応しいのは、ブリトニーくらいなものか(浜田氏ではなくスピアーズ)。

 さて、「CP」について連想しうるネタも尽きたところで、この略語が一体何を意味するのか調べたところ、やはりイマイチ分からず、答えを絞り込めなかった。

 中央処理装置 (central processor)
 コストパフォーマンス (cost performance)
 コードページ (Code Page)
 CP対称性 (charge, parity)
 制約プログラミング(constraint programming)
 制御プログラム(control program)
 CP/M (Control Program for Microprocessor) 
・・・他

 多言語かと勘違いしがちなほどに、全く持って意味が分からない略語群。まさに「どうでもいいですよ」とだいたひかるのネタで応戦したくなる。

 ログイン後画面よりご確認下さい。

 なるほど。さすが、上手いやり口だ。
 私のように「CP」について疑問を持った者が、煩悶する頭を抱え、涙ながらに叫ぶ。

 「CP」とは、一体何なんだ?! 誰か教えてくれないか!
 女豹の会か、それともセントラルパークか。
 私にはどうしても分からないんだ!

 そして、はたと思い当たる。

 ログイン後画面で確認

 なるほど、提示されているURLをクリックし、一度ログインしてから「CP」が何たるかを確認すれば、この七転八倒の懊悩の漆黒の闇の中に、ついに一条の光が差し、自らの苦悩させる疑問から解放されるのではあるまいか。

 善は急げだ。さあ、クリックして確認しよう!

 喜びで満面の笑みを浮かべ、歓喜の雄たけびを上げながら、思わずクリックしそうになり、慌てて思い止まる。
 危ない、危ない。もう少しで不当請求の落とし穴にはまるところだった。私は自らを厳しく叱責した。

※安心・安全宣言※
当サイトはワンクリック請求後払い利用など悪質なサイトで多発しているような不当な運営は一切行っておりませんので、安心してご利用頂けます

 そうなんだ! 安心・安全なサイトだったの? 私、何も知らなかった! それならそうと、もっと早く教えてくれたら、良かったのに! 「不当請求」なのかと思って、ビクビク怯えてしまったじゃん! もう、ぬか喜びならぬ、ぬか恐がりさせちゃって☆

 「もう、照れ屋さんなんだから♪」と打ち込もうとして、「もう照屋三男だから」と誤変換してしまい、「アイヤー、照屋さんちの三男坊はガレッジセールのゴリだったかねー」と思わず沖縄訛りで呟いてしまった。

 ――誤変換の文字列を見てツッコミした瞬間、私はふっと我に返った。

 そもそも、なぜ。

 出会い系サイトに一度たりともアクセスしていない私に、なぜ出会い系メールがとどいたのか――

 ――私は様々なことに思い巡らせた。

 私の苦手なものトップ3は、以下のラインナップが殿堂入りである。
 「ヤクザ、犬、コンピューター・ウイルス」

 理由は書くと長くなるので敢えて述べないが、ベストジーニストの草なぎ氏の殿堂入りぐらいに押しも押されぬ不動の評価である。これら3つともに他者を威嚇し鋭い牙を持つ獰猛さを、私は最も苦手としている。

 したがって、コンピューター・ウイルスに対しとてつもなく怯える私は、ウイルスソフト類の定期的なワクチン注入を欠かすことは無い。慎重に取り扱っているためか、これまでマイパソコンがコンピューター・ウイルスに罹患したことは一度たりとも無い。

 しかし、東京に住んでいた頃は、光回線の常時接続のためなのか、イマイチよくは分からないが、よくマイパソコンはウイルス攻撃を受けていた。

 パソコンを起動しているとすぐさま、緊急事態を示す表記とともにノートン・インターネットセキュリティの小さなウインドウが立ち上がり、「ただ今、コンピューターがアタックされています」「ただ今脅威を遮断しています」とリアルタイムで報告されるのである。
 世界地図とともに示されたネットハッキングの攻撃の発信地は、毎回、中国・韓国・インドネシアなどのアジア圏であったのだが、この、取るに足らない小説やエッセイ、夕飯のレシピ程度のファイルしか存在しないちっぽけなパーソナルコンピュータに、よもや国家機密などあるはずも無いのだが、なぜ絶えず攻撃されたのかは、未だに謎である。
 アメリカのCIAか、イスラエルのモサドか、どこかの国家機関のチップが誤ってマイパソコンに埋め込まれているのか、と、パソコンを何度もひっくり返して確認したが、何らの痕跡も発見することは出来なかった。

 全てのコンピュータ攻撃はノートンという優秀なウイルスソフトのお陰で、事なきを得たが、この貴重な経験は、私にコンピューターウイルスに対するとてつもない恐怖心を植え付けてしまった。

 何とまあ、コンピュータ・ウイルスとは恐ろしいものか。

 しみじみと述懐する私には、一ミクロンもコンピューターウイルスの危険のあるサイトへは近寄らない習慣が身に付いている。
 ノートンによる「サイトの安全性」を確認するまでは、どんなサイトでもアクセスしない。

 それはあたかも、モグラ叩きを行う際に、「これは確実にモグラである」と、露わに身を乗り出したモグラの完全体を確認するまでは、穴から飛び出したモグラを決して叩かない、“石橋を叩いて渡る”慎重さに酷似している。
 そのために、モグラの完全体を目撃する前に、モグラ叩きの時間制限は疾うに過ぎ行きゲームオーバーと相成ってしまうのである。これは、鈍い運動神経の言い訳に充当された再三の安全確認という慎重さに起因するためであり、この慎重さが私自身に存在する限りにおいては、安易に不審なサイトにアクセスすることは無い。

 まして、ウイルスの蔓延していると思われるアダルトサイト、出会い系サイト、某巨大掲示板などは、恐れ慄く私はアクセスする勇気さえない。
 グーグルを検索するとたまに見かける、ノートンのサイトの安全性報告で50以上ものウイルスの脅威にさらされたサイトなどは、そのおぞましさから身震いを禁じえない。
 その危険性たるや、心霊スポットの古いトンネルや廃病院のようである。「DENGER!」と刻印された文字が3Dかと見紛うばかりに異様に浮き出し、どこかしら鬼気迫るように妖しく光っているような気さえする。
 さわらぬ神に祟りなし。これは私のモットーである。

 さて、このようにコンピューター・ウイルスに怯える私は、ウイルス感染の危険を冒してまで出会い系サイトにアクセスすることは無い。
 ゆえに、出会い系サイトにアクセスした記憶は一切無いのである。それなのに、なぜか送られてきたメール。全く持って謎である。

※お問合せ・受信設定・退会申請はログイン後のメニューより行って下さい。

 「そんなバカな!」 私は思わず大声で叫んだ。

 「退会申請」をしなければならないということは――

 私は既に入会しているの?!

 アクセスした記憶もない出会い系サイトに、なぜ私が入会しているというのだ。嘘だ。冤罪だ。ノットギルティーだ。
 ――ここまで考えて私はあっと叫んだ。

 既に入会しているのなら、
 
これから退会すればいいんだ♪

 なぁんだ、ビックリして損した。そうよね、既に入会しているなら、「退会」すればいいだけじゃん。毎度ながらの、ぬか喜びじゃなくて、ぬか恐がりに苦笑する。
 「不当請求」されるのかと思って無駄に焦って怯えてしまったなんて、なんか悔しい。思わず「悔しいです! 気をつけなはれや!」と芸人のギャグを飛ばしたくなった。

 それじゃ、退会申請するために、サイトにアクセスしようかな――

 思わずクリックしようとした私の手が止まった。

 もしサイトにアクセスしたとして「退会します」をクリックした瞬間、「入会」扱いになってしまったらどうしよう

 私の恐怖心は最高潮になった。クリックする携帯電話を持つ手が震えてくる。
 危険だ、危険すぎる。頭の中で「DENGER!」の黄色ランプがフル回転で点灯している。クリックしてはいけない。クリックしちゃダメだ。

 退会することで入会させられるこの「ワンクリック詐欺」は、「退会催促型ワンクリック詐欺」とでも言おうか。

 なんて恐ろしいトラップ! これぞ悪質出会い系。
 私は天を仰ぎ、怒号を上げた。

 これ全然「安心・安全宣言」と違う!

 一度たりとも出会い系サイトにアクセスしていないにもかかわらず、大切に保守して来た携帯電話のメールアドレスがどこかで漏れ、さらに既に入会を匂わせ退会申請へとクリックを誘う、これのどこが「安心・安全宣言」なのだ!

 不倫の美人局に脅迫されるダメ男を演じたらピカイチのマイケル・ダグラスなら確実にはまりそうな罠である。これは危ない。危ないところだった・・・。

 全く持って、シンジラレナイ!

 驚愕で震える身を立て直すために、大西ライオンの「心配ないさ~」を叫んでみたが、時既に遅し、私の背中を大量の冷や汗が滝のように流れ落ちてゆく――。
 携帯電話を持つ手から徐々に力が抜け、私は深々とため息を漏らした。

 

 それにしても恐ろしい出会い系サイト。

 対処としては、私のように、全く見覚えの無いサイトから届いたメールであれば、完全無視である。
 提示されたURLをもし誤ってクリックしてしまい請求が届いたとしても、ワンクリック(請求)詐欺は、架空請求であり、無視して構わない。
 有料であることを知っていたが法外な高額な利用料を請求された場合には、利用料の減額交渉をする。

 また、もし万一、支払ってしまった場合には、支払ったお金を取り戻すべく、業者と返金交渉を行わねばならない。その場合には、サイトから送られてきたメールやサイトのデータをメモリーなどに保存しておき、証拠を確保しておくことが重要である。

 

 それにしても恐ろしい出会いサイト。

 アクセスした記憶すら無いサイトであるのに、なぜメールが届いたのであろうか。一体どこから私の携帯電話のメールアドレスが漏れたのであろうか。
 ランダムな文字列で組み合わせたメールアドレスに送信したのであろうか。
 あるいは――。

 私の中でかつての忌まわしい記憶が、ことごとく脳裏に蘇った。

 いつだったか、大手都市銀行で通帳を作っていた私が、この銀行のサイトで取引通知をするメールマガジンに登録したところ、すぐに迷惑メールが湯水のように届いたことを。
 メールにはこの一社のメールマガジンのみしか登録していなかったことから、私はこの迷惑メール事件を、この大手都市銀行の何らかの不手際によりメールアドレスを迷惑メール業者に漏えいしたものと疑ってやまない。

 今回もそうではないか。
 思い起こせば、つい先日、某コンビニのポイントカードのサイトでメールアドレスを登録したばかりである。
 いや、まさか、そんな。こんなに簡単に情報漏えいが行われるのであろうか。
 何ともゾッとする話である。

 これ以上のメール着信を恐れた私は、当該出会い系サイトのメールアドレスのドメイン拒否をメール受信設定し、ようやく一安心した。

 それにしても、どんなに信用の置ける大手のサイトであっても、情報漏えいの可能性がある、と仮定し、むやみやたらに自己のメールアドレスを登録してはならないと、自戒を強く込めずにはいられない。

 自己の身は自己で守る。
 ネットにおける自己責任、という言葉が重くのしかかる。

 火の無いところに煙の立つインターネット。
 ただただ、恐るべき時代である。


この世に生れ落ちた人間は本来孤独である。しかしそれを忌み恐れて他人を求め、そして出逢う。この神聖なる出会いに付け入る隙を、悪徳業者は虎視眈々と狙っている。「写真素材 足成」さまより画像借用。

◆ 気まぐれなる追記 ◆

 コイスタ・出会い系メールの対処法としては、

 携帯電話のメールアドレスのドメイン拒否 

 これが一番の有効な対処法ではないかと思う。
 以下、参考までに携帯電話各社のドメイン拒否のページを載せておいた。

 NTTドコモ iモードから受信/拒否の設定

 au 指定拒否機能

 SoftBank 迷惑メール対策

※ドメイン拒否をするには、送られてきた「info@koista.biz」などのメールアドレスそのものを登録するのではなく、@koista.biz」と@マーク以降を登録すると、ドメイン拒否となるそうだ。

 ご参考までに。

【架空請求の体験談】感動の架空請求メール/PCメール版


◆ エッセイ概要 ◆

 著者のパソコンに届いた1通のメールには、見覚えのない請求が記載されていた――。

 使った記憶の片鱗さえ無い有料サイトの利用料請求。
 これはまさか、「架空請求」ではないか?!

 初めて届いた嬉しさに、狂喜乱舞の有頂天。
 不可思議な文言で綴られたおかしな文面を、ひとつひとつ拾い上げて指摘する。ああ、ノリツッコミが加速する。


 先日、こんなメールが届いた。

 (以下、便宜上、分割、一部割愛、要所を太字にして掲載)

 その内容を見て、私は嬉しさで有頂天になった。

 件名:《重要なお知らせです》必ずお読み下さい
 弊社は信用調査会社・コンテンツ業者からの依頼に基づいて各種の料金等支払遅延者リスト(ブラックリスト)一括管理している日本情報管理㈱と申します。

 これってもしや、有名な架空請求メールではないか。
 私は嬉しさで思わずバンザイポーズをしてしまう。

 待ってました、架空請求メール!

 テレビでよく取り上げられているこのメールの存在だが、いつか、日記で取り上げてみたいと日頃常々思っていた。取り上げたらもちろん、キルビル並みにメッタ斬りするつもりだが―――。

 そして、ついに私の元に届いた。
 これを嬉しいと言わずして何と言おう!

 嬉々と浮き立つ心を無理矢理に沈めて、冷静を取り戻して文面に目を戻す。

 ・・・そもそも、この会社の種類が、信用調査会社、コンテンツ業者だなんて、最高にアバウトすぎる名前である。

 畏まった法律チックな文書を送るのなら、「信用調査会社とは~」「コンテンツ業者とは~」と、会社の定義を書いて欲しかった。

 その何だかよく分からない名前よりも、ブラックリストを一括管理しているという、怖そうな名前が、「何が何でも回収するぞ!」という強い意気込みがひしと伝わってくる。

 「ブラックリスト」の一言で、メールを受け取った人に、「なんて怖そうなんでしょう!」と思わせてしまいそうな、その完成された仰々しい口ぶりに、思わず目を見張ってしまう。

 面白い、面白すぎる!

 私は胸を喜び震えさせながら、さらに本文を読み進めた。

 この度は貴殿が使用されたプロバイダー及び電話回線から接続された有料サイト利用料金について運営業者より利用料金支払遅延に関して料金等支払遅延者リスト(ブラックリスト)掲載要請を受けました。

 有料サイト利用料金だなんて、甘美な響き!

 その衝撃の文字を見た途端、私は、ふと考え込む。

 私は、どのような有料サイトを閲覧したのだろう。
 残念ながら、清純派乙女で通している(?)私は、有料アダルト番組や、ツーショットダイヤル、出会い系サイトなどには、残念ながら、一切の興味は無い。

 私がそれらのサイトを閲覧し利用する必然性は全く無い以上、利用した記憶もない私に、それの利用料が発生することは、全くあり得ない。
 火の無いところに煙は立たないというのが科学現象でもあるのに、無から生み出されたこの現象、何とも怪奇である。
 このようなありえない現状、おだてられて木に登った豚も、ビックリして木から落ちてしまうかもしれない。

 そして、この「有料サイト利用料金」という、実に驚くほどアバウトな書き方が、何ともたまらない。本当に料金を請求したいのなら、具体的にどのサイトを閲覧したために、いくらの利用料金が生じたのかを、具体的に利用明細として挙げて欲しかった。これでは、明らかに嘘っぽくて、払う気には到底なれない。

 しかし、そうは言うものの、このように具体的に利用用途を知らせない仕組みには、上手い心理作戦と思わざるを得ない。

 もし、道で見知らぬ人にバッタリ会った場合に、その人に、「どこかでお会いしましたよね?」と言われた場合、「会った? 覚えてないけど、会った気もするような、しないような」と、自らの記憶を探って考え込みながらも、それが見当たらなくても、結論としては、「相手が会ったと言ってるのだから、会ったのだろう」と、自分には覚えはなくても、会ったことを既成事実として認めてしまうことがある。
 架空請求は、このような人間の心理過程を利用したものなのであろう。

 ということで、私は考え込んで、ふと思い当たった。

 もしかして、この指摘の有料サイトって、ひょっとしたら。あのとき閲覧した法律文書のサンプルかな。それは、支払督促申立書か、告訴状か、訴状か。あるいは、答弁書か、督促異議か。うーん、思い出せない。

 今まで法律サンプル文書を必要性があって、サイトに掲載されたものを数多く閲覧してきたが、それがまさか、有料サイトだとは今日の今日まで知らなかった。
 料金が発生する旨の通知は、サイトのどこにも書いていなかったし、無料だと書かれていたことを確認して閲覧していたから、私は、自分に何らの利用料金が発生し得ないことを知っているけれど、ダンディ坂野ですら大ブレイクできる世の中なのであるから、ひょっとしたら、何かの手違いで料金が発生しているかもしれない。どうしよう。どうしよう。どうしよう!

 どうしようとは言いつつ、小躍りしたくなるほど、嬉しく高鳴るこの胸は、なぜであろう! ああ、もう面白くてたまらない!

 これまで貴殿のネットワーク利用料に付きましては、コンテンツ事業者様及び債権回収業者が再三のご連絡を試みてまいりましたが、未だ入金の確認がとれず、また貴殿より誠意ある回答も遺憾ながら本日に至るまで頂いておりません。

 まぁ、なんと。過去に再三もご連絡して下さっていたなんて、全く存じ上げなかった。ビックリマンに「まじビックリだぜ」と言わしめるくらいの初耳の事実だ。

 そもそも、このメールを見て初めて、私に何らかの利用料金が発生していたことを知ったのである。今まで一度も連絡が無かった以上、誠意ある回答をしようがない。支払催促の通知も、支払督促通知も、何ら私の元に届いていない。

 無いことを遺憾にされても、私としては困る限りだ。せめて、再三の通知をなした何らかの証拠を示して欲しいものである。

 再び、読み進める。

 以上のような理由から個人信用情報調査会社を経由して弊社に貴殿の個人情報を料金等支払遅延者リスト(ブラックリスト)に掲載する要請が届きました。

 ブラックリスト! ブラックリスト、ブラックリスト…… 
 あ、なんて。暗黒世界の住人のような洗練された響き。ブラックジャック、快楽亭ブラック、ブラック嶋田、ブラックタイガーなどに匹敵するような、なんてミステリアスな香りなんだろう。

 借金してまでお金を使うことがない私が、ブラックリストに載るなんて、信じられない。夢なら早く覚めて! 

 消費者金融の「ご利用は計画的に」には、「計画的じゃないから利用するんでしょ!」としっかりツッコミを入れる、金融会社に対する鋭い指摘をする私が!

 クレジットカードの利用料金が、毎月300円以下という、UFOキャッチャー1回分くらいの値段しか使用していない質素な金銭感覚を持つ、この私が!

 「今まで一番高額な買い物は?」と聞かれた場合、「賃貸マンションを借りたときの、賃貸借契約の初期手続費用!」と即答できるこの謙虚な私が!

 そんな、ブラックリストに載りそうにないこの私が!

 ブラックリストに載るなんて。嗚呼、夢のよう!

 ブラックリストという、未知の言葉に、狂気乱舞になりそうになりながらも、それを制止して、さらに読み進める。

 貴殿の個人情報に関しましては既に調査対象メールアドレスから、プロバイダ・ISP業者・個人信用情報調査機関からの情報開示を受け、既に貴殿の住所・氏名・勤務先等の情報は判明しております。

 なるほど。なるほど。私の個人情報は、私の元に届いたメールアドレスが「調査対象メールアドレス」であり、それから得たようである。
 そのメールアドレスをもとにして、プロバイダーなどから私に関する個人情報を開示させて、私は身元が判明し、ブラックタイガー違った、ブラックリストに載ってしまう、と。

 なるほど、なるほど! これじゃあ、私は逃げも隠れもできないなぁ! 諦めてお金を払いましょう。アッパレ! 夜もヒッパレ! って、思わず感心するところだった、危ない危ない。

 大体、そう易々と顧客情報を開示するなんて、なんちゅう情報漏洩の簡単なプロバイダーなんだ。うまい棒20本詰め合わせパックくらい贈賄すれば、あっさり情報開示してくれそうな、その情報管理の甘さには驚きである。まさに通報ものである。

 よく考えると、おかしな事実に気付く。

 おやおや、 そもそも、この調査対象となった私のメールアドレスは、プロバイダーを経由のものではなく、フリーメールのアドレス宛てに届いていた。簡易取得できるフリーメールである以上、そのアドレスには、ネットから離れた現在の私に繋がる情報は、プライバシー保護の観点から、何ら一切記載していない。

 私の住所・氏名・勤務先が判明している、とこのメール本文で書いているが、そもそも、私がフリーメールで登録情報として掲載していることは、

 住所: 琉球
 氏名: 琉球の宮
 職業: 沖縄人

 これくらいなものである。このような情報が判明していたところで、これは情報としてあっても無きに等しいくらい。このような驚くほど少ない情報で、どうやって、この私に到達しようとでもいうのか。おいおい、どうやったって、これは無理じゃないかい、ベイビー!

 面白い、面白すぎる!

 そもそも、 勤務先って……
 職業「沖縄人」というアイデンティティ溢れる役職を掲げている私に対して与えられる勤務先は、もはやニライカナイの海くらいしか思い当たらない。
 さぁ、今すぐ久高島の海に勤務票を取りに行かねばならない。ヒーハー! 思わず雄叫びさえ出てしまう。
 そこがさんご礁のどの辺にあるのか、場所を是が非でも教えて欲しいくらいだ。
 もはや、笑いを越して、感動すら覚えてくる。

 もし、あのような少ない情報で、見事に私の元に到達したら、これぞミラクルである。

 良く来たね、と私の目には涙が溢れる。

 「キミはよく頑張った! オメデトウ!」と、松岡修造以上に熱烈の歓迎をして差し上げるようか。あとは沖縄流の歓迎で、結婚式場の大ホールを貸切り、三日三晩の酒宴とカチャーシーを躍らせておこう。
 いやしかし、式場代にお金が掛かりすぎる。やめておこう。

 一旦咳払いをしつつ、先を読み進める。

 個人信用情報機関のブラックリストに掲載されますと、各種融資・クレジット契約・携帯電話の購入および機種交換他・就職先制限等の様々な貴殿信用情報に今後大きな支障が発生する可能性があります。

 ブラックリストというだけあって、さすが、信用情報に影響があるらしい。しかし、よく考えると、このブラックリストという定義がイマイチ分からない。ブラックリストは、具体的に法的にどのような体系的位置付けになっているのかが、まず知りたいところである。

 有料サイトを閲覧し、その利用料金を支払わなかったことで、なぜ色々な信用機関に連結しているというブラックリストに載るのであろうか。
仮に、有料サイトを閲覧したとしても、その有料サイト会社との関係で債権債務が発生するのであって、この一括処理するという会社には何ら関係はないはずである(債権譲渡の場合は後に述べるとして)。

 このメールは、日本の法制度を知らないかのような、おかしな部分が多く見受けられる。

合計支払金額:65,000円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
未納料金和解金:50,000円
■情報抹消事務手数料:15,000円
=============================
■■合計金額:65,000円
---------------------

 これまた高い。せめてお米券1枚程度の値段でカタがついて欲しかった。これではますます払いたくなくなってしまう。

 ここで、興味惹かれる文字を発見する。

 この「未納料金和解金」とはなんであろう。そもそもの利用料金がいくらかを記載せずに、和解を前提で、それを包含した料金を書くなんて、巧妙というか、ワザトラシイというか。せめてもう少し詳細な料金明細を書いて欲しかった。これでは、相手に払う気にさせたい、という気がみじんも感じられない内容である。

■送付方法:電信為替もしくは現金書留
受付は郵便局の電信為替もしくは現金書留のみです。この件に関しましては、それ以外の方法での受付はしておりません。必ず郵便局の窓口で電信為替もしくは現金書留を必ず指定して下さい。
■支払期限:
上記宛に平成15年11月6日(木)必着で送付して下さい。
電信為替の送付方法に関しましては http://www.yu-cho.japanpost.jp/s0000000/ssk00000.htm を参考にして下さい。
詳しくはお近くの郵便局で確認して下さい。郵便局で発生する送金手数料は貴殿の負担とさせて頂きますので御了承下さい。

 おやおや。現金書留と電信為替しか支払方法がないとは、困ったものである。この会社の都合ばかりが、こちらに一方的に押し付けられているばかりではないか。

 これら二つの方法しかない支払方法がないのは、身元がばれない、振り込み後すぐに解約して逃げやすいとでも言うのだろうか。ますますもって興味深い。

 時間さえあれば、この支払期限の日までに、この会社の所在地に直接代金を持って参上したいくらいである。もちろん、お巡りさんに「悪の巣窟があります!」と事実を告げて、お供してもらおう。

 そして、電信為替の手続説明として、ゆうちょのリンク先を示すとは、ご丁寧というより、もはや図々しいの域である。この謙虚さに頭が下がる。

 明日に迫る支払期限(当時)、ああ、待ち遠しい!!

 入金確認後、料金支払遅延者リストから貴殿に関する全データー(日本情報管理㈱が所有する債権譲渡証明書・内容証明書・貴殿個人信用情報等の書類およびデータの全て)は責任を持って弊社が全て抹消いたます。

 「債権譲渡証明書」、これは、恐らく、有料サイトからの利用料金の債権(借金)を、この会社が受け継ぎましたよ、という証明書を言っているとは思うのだが、そもそも、日本の法律によると、債権が譲渡されたときに、債務者(利用者)に、債権譲渡をした旨を知らせるか、承諾を得なければいけないはずである。
 こんな法の不備の丸出しに、私は思わずハンカチ王子並みに赤面するサービスすらつけたくなる。

 「内容証明書」、これは何のことを言っているのかが分からない。内容証明書というのは、郵便物の特別取り扱いのひとつのことで、郵便物の内容を謄本で証明するという、裁判において証明力のある郵便物のことである。
 このメールが、ここで「内容証明書」と、郵便物の内容ではなく、郵便物の取り扱いのことを書いている時点で、私からツッコミを入れられてしまうのである。
 言うなれば、この「債権譲渡証明書・内容証明書・貴殿個人信用情報等」というのは、「借用書・速達郵便・貴方の情報」というようなもので、見るからにオカシイ、と言うべきなのだ。

 そして、「貴殿個人信用情報」は、ブラックリストに載せられている、お金を借りるときに重要になる自分に関する情報であろう。
 フリーメールであることや、プロバイダーなどの情報守秘義務からすると、何ら情報が漏れ出ていないと思っても良いであろうから、単なる根拠の無い脅しのような単語だ。

 最も大事なのが、「弊社が全て抹消」というところである。思わず、「消しちゃうのかよ!」とさまぁ~ず三村ツッコミもしたくなる。なるほど、この会社は自ら責任を持って証拠を抹消してくれるらしい。

 この会社、自由過ぎる!

 感動で思わず天を仰ぎたくなる。

 ご入金して頂けず、このまま放置されますと最終的に貴殿の個人情報を元に各地域の事務所から数名集金担当員御自宅まで訪問をさせて頂きます。またその際に掛かります集金費用・交通費等の雑費・別途回収手数料も合わせて集金させて頂きます。また状況によっては京都地方裁判所を第一審専属的合意所轄裁判所として、強制執行による給料差押え等を含めあらゆる手段で対応させて頂く事となります。

 数名の集金担当員が自宅に訪問してくれるらしい。
 きっと、コワモテのお兄さん数人で「払えコラ」などと、ボキャブラリーの著しく乏しい言葉で脅迫めいた言葉を叫んで、ドアを蹴り飛ばしたり、居座ったりして、代金徴収しようとでもいうのであろうか。
 もちろん、そうなった場合には、彼らの言動を、恐喝罪、脅迫罪、不退去罪などの証拠をカセットテープレコーダーや、デジカメなどで収集して、警察に通報するだけである。
 もし、私の元に辿りつけたら、の話であるが。

 そもそも、私は、この会社の指摘するような有料サイトを閲覧していないから、彼らの主張は全くの事実無根のデタラメである。私が閲覧したと勘違いして代金を支払えば、私を騙してお金を詐取したことになり、詐欺罪が成立する。
 このようなメールを何ら関係の無い人に送りつけている時点で、お金が振り込まれなくても、詐欺未遂罪は成立しているのだが。

 そして、代金を支払わない場合には、「強制執行による給料差押え等を含めあらゆる手段で対応」するらしい。
 こんな挑戦的な台詞を言われると、嬉しくて小躍りしたくなる。

 受けて立とうじゃないの。

 正直なところ、法律を学んでいる今の私は、別に弁護士を雇わなくても、独りで法廷に出て、彼らと闘える自信がある。カモンベイビー、法廷で会いましょう!
 もしそうなったら、彼らから日本の裁判史上最高額の和解金をゲットして、私は日本のエリン・ブロコビッチと呼ばれるかもしれない。
 さぁ、早いとこ法廷デビューのためにスケキヨ風のお面でも買いに行こうかしら。

 闘志燃える中、残りの文面に目を通す。

 円満な解決を望むならば支払期限までに大至急入金お願いします。指定の期日までに入金が確認できない場合は事務処理を行う事ができませんので支払期日は必ず厳守願います。
 また、
ールアドレス相違、郵便事故、その他いかなる事由により今まで連絡が取れなくなっていたにせよ、それは弊社に起因するものではなく貴殿の責任によるものです。円満な解決を望むならば支払期限までに大至急入金お願いします。
 指定の期日までに入金が確認できない場合は事務処理を行う事ができませんので支払期日は必ず厳守願います。

 もはやここまでくると、「メールアドレス相違により今まで連絡が取れなくなっていたとしても、お前の責任じゃ! 覚悟せい!」という本文の脅しに似た文章に、「そもそも、この請求って、調査対象メールアドレスを基にしてなされているんじゃなかったっけ?」という根本的な矛盾に対してツッコミする元気さえも失せて来る。

 いやはや、「大至急入金」を連発するこの必死さ溢れる文面に、もはや笑いを通り越して、可哀想に思えてくる。憐れで不憫で、見ていられない。この文面を、市原悦子にでも朗読してもらったら、感涙度100%は間違いない。今から木綿のハンカチーフでも用意せねば。

 そして、必死さ満点の文面の中にある、架空請求をしておいて、「円満解決」を望む図々しさ。高望みもいいところである。いい加減、目を覚まして、と説教したくなる。

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日本情報管理㈱
〒600-8492
京都市下京区四条通新町東入ル月鉾町39-1
興和第一ビル8階

管理担当:勅使川原 俊夫
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 そもそも、他人の債権の取立てができるのは弁護士か、または、法務省の許可を得た債権回収会社だけである。それ以外の人(会社)が行った場合には、弁護士法違反で、二年以下の懲役または三百万以下の罰金となる。
 そこで、この日本情報管理(株)さんとやら。調べたところ、法務局のホームページにある債権回収業者の登録業者一覧表には、この会社の名前はなかったぞ。完全に弁護士法違反でいらっしゃる。

 もう、感動するほどに、何でもありの架空請求メール。
 これを感動と言わずして何と言おう。もはや、犯罪のデパート!

 こういうのを、「債権回収詐欺」「架空請求」などと言うらしい。
 はい、みなさんご一緒に復唱しましょう。
 (さいけん・かいしゅう・さぎ、かくう・せいきゅう……)

 最後にもう一度復唱しましょう。

 お前たちのやっていることは―――
 全部すべてマルッとどこまでもお見通しだ!

 (おまえたちの・やっていることは…… って長い!)

 最後に―――良い子は絶対に、見知らぬ請求を真に受けてお金を支払わないでね!

 ・・・そして。

 架空請求が届き、その請求を「にゃはは。おぬしも悪よのう」と、大口を開けて悪代官風に笑い飛ばし、その指定された支払期限を当然無視して、数ヶ月後。

 案の定、私の身辺には何事もありません。

 怖いお兄さんが「オイコラお金払えや」とボキャブラリーに乏しい脅し文句でドアを蹴りつつ来訪することもなければ、「ハ~イ、ハニー! お金を払ったらハワイ旅行をプレゼント!」と上手にウィンクしてお財布の紐を緩めさせるイケメンお兄さんも、「契約してくれたら野球チケットをプレゼント!あとでクーリングオフしていいから!」と絶叫するイカガワシイ新聞勧誘のオジサンも、一切来ません。

 もし来たら、私の寒い一発ギャグ「ゲッツ!」をフルコーラスつきで見舞って肝を冷やしてあげようと思っていたのに! 残念!

 ―――架空請求が届いてご不安になられている方へ。

 その請求を見つめて、ともに一笑しましょう。

 法や判例で定められた無過失責任を除き、本来ならば、必ず理由(原因)があって責任が負わされるのです。
 身に覚えの無いことに対しての責任を負わされるのならば、その社会はオカシイというべきなのです。
 身に覚えの無い請求が来たら、完全無視、これに限ります。

 おっと、忘れるところでした。最後にひとつ。

 ぜひご一緒に、胸元に両手を合わせて感謝の言葉を反芻しましょう。

 

 架空請求を送ってくれた業者さんへ。
 キミが送ってくれた請求のお陰で、友だちや同僚、家族とのスキンシップを図る笑い話の話題提供ができました。

 業者の横顔を一発殴りたいくらいに感謝しています。

 架空請求は、飲み屋などの食事スペースで人と語るとスターになれる、トリビア知識の次に珠玉のネタ話なのです。
 ほら、周りを見回してご覧下さい。架空請求が届いたことを自慢げに笑って話す貴方を、うっとりと恍惚の表情で眺めている紳士・淑女が多くいることを。

 架空請求の根絶を祈りつつ・・・

 架空請求業者よ、アリガトウ!
 そして、もう二度と私に送りつけないでね!!


【架空請求の体験談】感動の架空請求メール/携帯メール版


◆ エッセイ概要 ◆ 

 著者の携帯電話に届いた1通のメールには、見覚えのない請求が記載されていた――。
 使った記憶の片鱗さえ無い有料サイトの利用料請求。これはまさか、「架空請求」ではないか?!  初めて届いた嬉しさに、狂喜乱舞の有頂天。不可思議な文言で綴られたおかしな文面を、ひとつひとつ拾い上げて指摘する。ああ、ノリツッコミが加速する。


 最近、携帯電話への迷惑メールが多くて、困っておる。メールアドレスを変えればいいのだが、変えてしまうと、何だか迷惑メールに負けてしまうような気がしてしまうのだ。それはいいとして。

 携帯メールに架空請求が届いた。

 ただただ、嬉しい。夢見がちに、胸に携帯電話を押し当てて、ぽっと赤らむこの姿、ラブレター並みの威力があるというものだ。この嬉しさを言うならば、そう、トキメキ。胸がドキドキ! 動悸! 不整脈!(ゲホゲホ)―――失礼。

 というわけで、携帯メールに届いた架空請求を丁寧に検討してみよう。

 この携帯からの有料サイト接続利用料金がいまだ支払いの確認が取れていません

 ウソ! まじですか? 私に有料サイトの接続利用料金が発生してるなんて、初耳じゃん! おまけに支払日が来てるなんて、知らなかった! まだ払ってなくて、ごめんなさい。今から小銭入れ片手に銀行に行って振り込んでこよう!

 ・・・ってオイ! これって架空請求じゃん! 異変に気付かずノリツッコミしてしまうほどに、

 前フリ一切ナシの単刀直入な文章。

 せめて自己紹介くらいしてくれい!

 街中を騒音チックに賑わせる政治家の宣伝カーでさえ、「オイオイ、訊いてないよ」とツッコミたくなるくらい、「こちらは○○でございます」とウグイス声で自己紹介しておるではないか。

 「相手の名前を訊く前に、まず自分から名乗る」というのは、誰が決めたかは知らないが、社会常識となっている。(ちゃんと知っておこうね業者さん)

 この架空請求メールは、自己紹介もなしに、話を進めている。この単刀直入には緊迫感さえ感じる。なぜそこまで急ぐのか。「大変ねぇ・・・」と眉をひそめて他人事のように傍観しつつ、いざ先を読み進める。

 経営者側としましても真に不本意ながら、明後日を期限に法的処置を取ると同時に、アダルトコンテンツご利用内容自宅又勤務先へ書面にてお送りさせて頂きます。

 「真に不本意」に思うなら、しなきゃいいのに。

 つぶやきシローよりも多めにつぶやきたくなるこの心情。そもそも、架空請求を受け取った人のほうが、不本意というもの。それはともかく。

 「明後日を期限に法的措置」

 明後日、って今日から換算して2日後ということ。どれほど急いでおるのだ。早すぎる。急ぎすぎ。狭い日本、そんなに急いでどこへ行く。

 一体どこの弁護士が、ご陽気に、「じゃ、メール送信後の明後日に法的措置ね☆」とありえないアドバイスしたのだろうか。大体、法的措置に踏み切るのは、最後の手段に近い。それをたった48時間をリミットにするなんて。

 もしメールチェックが3日後だったら、一体どうするんだいベイビー。

 メールで最終通告をする辺り、詰めが甘すぎると言わざるを得ない。

 そもそも、利用料金をちゃんと請求する場合には、その請求書が確実に相手の元にきっちりと届く必要がある。
 請求書の未到来を理由に、請求者と利用者とが、「送ったのに!」「受け取ってないもん!」と争ってしまっては、大変に不都合である。
 こういうことを避けるためにも、利用料金の請求の際には、内容証明郵便などを使い、相手方に確実に受け取ってもらうことが大切である。
 とはいえ、日々進化をし続ける架空請求が内容証明郵便でなされる可能性も、無きにしも非ずである。

 ただ、内容証明郵便で架空請求を郵送するコストは、受取人がランダムに選ばれている点を加味すると、全員が素直に支払いに応じるとは思えず、コスト負担が多く、割に合わないと思われる。
 だから、内容証明で架空請求する可能性は低いと思うのだが。
 (※最近では内容証明で架空請求する悪質なケースがあります。お気をつけ下さい)

 それはいいとして。


イメージ画像【写真素材 足成】より借用

 さらに、気になるのは、
 「アダルトコンテンツ利用内容を自宅・勤務先に書面で送付」

 このメールを受け取った、子羊のような心優しき男性は、かく思う。

 「アダルトコンテンツなんて使ったこと無いけど、自宅に請求されたら家族に知られてしまうし、勤務先に送られたら同僚に知られてしまう。どうしよう。
 『あなた! アダルトコンテンツってどういうことなの? あなた!!』―――妻の絶叫、罵り。小遣い制の廃止の予感。
 『キミ、アダルトコンテンツ見ている暇があったら、営業先に行ってくれないかね』―――上司の冷ややかな視線。同僚の嘲笑。左遷の予感。
 『パパ、えっちなモノ見たら、ママに怒られるよ! パパなんて嫌い!』―――娘の涙。娘が自分を毛嫌いする予感。
 それは困った。
一度も利用していないけど、この際、変な言いがかりをつけられたら困るから、支払おうかな? 安寧な家庭と会社環境を維持するためにも、これが最善策なのだ!
 目に涙を浮かべながら、いそいそと財布の中身をチェックするその姿。昼休みに誰にも気付かれないように銀行振り込みに勤しむその姿。

 ああ、哀れ。 そう相手に思わせるのが業者のテなのであろう。その目論見に乗ってはいけない。

 そもそも、この文面が問題である。
 「アダルトコンテンツ利用内容を自宅・勤務先に書面で送付」
 この文面を見た人が、「アダルトコンテンツ利用内容を送付されたら困る」と畏怖させてしまうことを目的としていると思われる。

 この点、業者は、「利用内容を送るって言ってるだけだよ? それのどこが悪いのさ。畏怖するのはそっちの勝手でしょ」と開き直り、そこに違法性はないと主張する可能性がある。

 しかし、人は、「アダルトコンテンツを利用している」という事実に関して、それを他者に知られることについて、性的羞恥心(ハズカシイ気持ち)を感じる可能性が高く、人は他者にそれを知られたくないと思うのが通常である。
 そして、アダルトコンテンツを利用している事実自体は、性的羞恥心を生じさせるものであっても、それを他者に知られることは、他者による自己への社会的評価の低下に繋がる可能性を秘めている。
 人は、それを他者に知られることにより、自己の社会的評価を低下させたくないと思い、請求金額を支払う可能性が高い。
 つまり、「アダルトコンテンツ利用内容を自宅・勤務先に書面で送付」は、その人の名誉(信用その他)に対して害を加える旨の告知、と言える。
 回りくどく書いてしまったが、つまり・・・

 恐喝するんかい、ワレ!

 ということ。これが架空請求ではなく、本物の請求であるなら、この文は不要である。
 「やっちゃったね・・・」と涙ぐみつつ、読み進める。

 大至急当社へご連絡いただき利用内容未払い金額詳細についてご確認ください。

 大至急、「恐喝するんかい、ワレ!」と伝えねば。
 ついでに、「刑事告訴しない代わりに、慰謝料100万くれ」とでも言おうかしら。
 おっと、そうなると、私も恐喝罪になってしまう。やめておこう。

 尚、貴方様のデ―タは電話番号にて管理させていただいておりますのでご了承ください。

 そうか、そうか。

 じゃ、さっさと電話番号変えよ☆

 そろそろ新しい携帯に変えたかったんだ~♪ いいチャンス☆
 業者さん、機会を与えてくれてアリガト!

 ・・・と思わず言いたくなる。詰めが甘い。甘すぎる。見ていてコッチが恥ずかしい。

 電話番号やメールアドレスで管理している場合には、番号やメールアドレスを変更すれば、その管理から脱することができるのではないのか。
 その辺の通信機器の顧客のデータ管理体制はどうなっているのか。甚だ疑問である。

 債権回収担当株大創債権回収部第二事業部電話番号0359112562 住所 東京都豊島区池袋4-24-4ヴィラ生華301

 この会社が債権回収のできる企業として法務省の許可を受けているか否かは、調べなくても、「ノンノン」と人差し指を左右に振って否定できる(恐喝してるし)。
 ・・・で、調べてみたが、やはり許可を得ていなかった。ああ、哀れ。

 ―――やるせなさばかりが残る、架空請求。

 「メールアドレスを変えると、迷惑メールに負けてしまう気がする!」
 という私の気合はどうも空回り。そもそも、「元々勝負が始まっていないぞオイ」ということに気付くことも無く、今日も迷惑メールは我が元に届く。

 そして数日後。

 架空請求からの取り立ても一切無いものの、迷惑メールの余りの多さに、「やっぱり私が負けました・・・」と悲痛な声を上げながら、メールアドレス変更を余儀なくされてしまった私だった。


【架空請求の体験談】魅惑の海外宝くじダイレクトメール


◆ エッセイ概要 ◆ 

 著者の元に届いた1通のダイレクトメール封書には、夢のような文言が踊っていた。 ――「海外宝くじ《賞金の2億8千万円》を今まさに手にしている可能性」――
 申し込んだ記憶の片鱗さえ無い海外宝くじに当選するかもしれないというアンビリバボーな事態に、狂喜乱舞の有頂天。不可思議な文言で綴られたおかしな文面を、ひとつひとつ拾い上げて指摘する。ああ、妄想とノリツッコミが加速する。


 見慣れぬ封書が私の元に届いた。やや大判の封筒の表には、印刷された美しい赤い筆文字でこう記してあった。

「荷造りの用意をして下さい― あなたはもうすぐ、オーストラリアへの無料休暇旅行に出かけることになるかもしれません。今すぐに開封して下さい!」

 何だかよく分からないが、私にオーストラリアへの旅行が無料プレゼントされるらしい。

 オーストラリアからの見覚えの無い封筒が、私をオーストラリアへと呼んでいる。文末のビックリマーク!が、この問題の緊急性を現しているというものだ。

 もちろん、即座に封筒を開けるさ、カモーンベイビ! 待ってろよ封筒! 伝統の紙切り芸よりも素早く、機械のシュレッダーよりも俊敏に、この封筒を開封してやるのだから!

 歓喜の雄叫びを連発しながら私は封筒を開く。
 内容はこうだった。

 「オーストラリア公式6/45ロットーのチャンス用に確認されている
 保証1等賞金総額 
280,000,000円

 いやそんな。ゼロが多すぎて幾らなのか数えられない。目の肥えた叶姉妹じゃあるまいし。庶民には重ね重ねのゼロの表記なんて、縁が無さ過ぎる(円だけに)。

 両手の指を一杯に使い、指折り数えてその数字が2億8千万円だと知る。

 高い、高いよママン!
 2億8千万だなんて、親父にも貰ったこと無いのに!

 何なのだ、この太っ腹の大盤振る舞い。国内最高額のジャンボ宝くじでさえ賞金上限が2億円だというのに。 破格のオーストラリア宝くじとは、はて一体なんぞや。

 さらに読み進める。

 「あなたに、心よりお詫びを中し上げなければなりません。あなたは、まさにこの瞬間に、1等当選ゲーム番号を手中にしておられる可能性があります!」

 ななななんと! 私が1等2億8千万円の当選の可能性があるのかい!
 もはや小躍りして喜んでしまう。どうしよう、どうしよう。

 申し込んだ記憶の欠片さえの無い、海外の2億8千万円の宝くじが、勝手に当選してしまうなんて!

 素敵過ぎる。なんてこんな素敵なことが世の中にあるんだろうか。

 ああ・・・きっと、あれね。
 幼い頃に行ったオーストラリア旅行の時だったかしら。街路樹の脇に咲いたしおれかけの花に、自分が持っていた水筒の水を丁寧に与えたのを、きっとシドニーの大富豪が黄色いキャデラックの中からこっそり見ていたんだわ。きっとそう。
 それで私のことを追跡調査して、孫代わりの私に遺産相続として、高額宝くじを自ら勝手に申し込んでくれたのよ、きっとそう!

 突拍子も無いことを考えていたが、引き出しの中から引っ張り出したパスポートの渡航記録には、わずかに中国旅行1回のハンコが押してあるのみ。
 ああ・・・そうね。
 オーストラリア旅行は昨日、夢の中で見たことね。私がアニーになる夢だったわ。道理で朝起きたら頭が天然パーマじゃないと思ったのはそのせいね。

 海外宝くじという現実感を喪失した代物を前にして、テンション高くノリツッコミするのにも面倒で、段々と呟きも投げやりになってきた。
 いけない、いけない。しっかりと紙面を見極めなければ。

 目の前に紙面がある。これは見紛うことなき事実だ。

 そうよ、私には宝くじの高額当選の可能性があるのよ!

 歓喜で叫んでみたが、ワンルームに虚しい声が響くのみ。その鬼気迫る叫び声に隅っこにいたマックロクロスケもドン引きして逃げてしまっていた。

 そうはいってもしかし。

 こんなことがあるのだろうか。嗚呼、夢のよう。思わず万歳三唱である。気分はもはや高額宝くじが当たったつもりである。脳裏は高額紙幣一色。

 さて…浮き立つ心を沈めて冷静に考えよう。2億8千万円あったら何しよう。夢は膨らむばかり。

●ゴルゴ13を護衛としてつける。
 これはいい。夢のようだ。あのイカツイ顔を46時間見られるなんて、USJ1日貸切りのような豪華さである。ついでに次元大介もつけておこう。
 しかし、デューク東郷が睡眠中の私の枕元で、ライフル片手に目を光らせていると考えるだけで、ガタガタ震えて眠れない。かえって別のスナイパーに私が命を狙われそうで恐ろしい。止めておこう。

●宝飾品を買って、歩く「2億8000万」になる。
 両手にゴツイ石をつけた指輪をはめよう。通行人も思わず加藤茶のごとき二度見をしてしまうくらいの圧倒的な輝きを放つだろう。
 しかし、手ごねハンバーグを作るときに、ダイヤやサファイアとかルビーとか、名の知れた立派そうな石も一緒にひき肉と一緒にこねてしまいそうだ。手ごねパンのときも注意だ。石入りのクロワッサンでも出来かねない。
 おっと、それなら、ジャラジャラと今にも音の鳴りそうなネックレスもいいな。しかし私は金属アレルギーだった。止めておこう。
 宝飾に関する知識が一切無いことが露呈してしまった。恥ずかしい。

●自分がスポンサーのテレビ番組を作り、出演する
 テレビに出演する。これはいいな。人気者になれそうだ。それなら、さて何を着て歌おうか、踊ろうか。せいぜいビヨンセの「Crazy in Love」の当て振りくらいしか出来ないが、所詮、本家ほどのインパクトは得られずせいぜい二番煎じだ。
 政見放送風にずっと何かを話すというのもいい。斬新だ。世界情勢でも話しているうちに、ついつい日常会話の「するって~と~おめえさん、そりゃ博打じゃねぇだろうなぁ?」と落語調になりそうだ。「何時代の人?」と言われかねない。やめておこう。

 無い知恵を絞ってみたところで、庶民には庶民の発想しか生まれない。それなら、身近な使い道を考えてみよう。

●全部シュレッダーにかけて、飼い猫のトイレに使う。
●細かく切って、紙ふぶきを作る。
●お湯で煮てやわらかくしてミキサーにかける。紙すきをして、再生紙を作る。
●焼き芋を作る時の火種にする。
●水に濡らして窓を拭く雑巾として使う。

 いかん、いかん。貰えるのはただの紙ではない、お金だった。2億8千万という余りにも現実味の無い数字に我を忘れてしまう。

 …そうか、2億8千万か。それなら。

●帯封を解いてバッグに全額を詰め、ヘリを飛ばして沖縄上空で紙幣を散布する。

 一見良さそうな気もするが、突如目の前に高額紙幣が舞ったら、ハンドル操作を誤り、交通パニックになるのは目に見えている。大変に危険だ。
 大体、沖縄の上空で散布したら、沖縄の土地の2割を占める米軍基地に落ちてしまう可能性が高い。思いやり予算で沢山儲かっているのに、更なるお金を渡すなど、勿体無いこと甚だしい。
 また、四方を海に囲まれた沖縄であるから紙幣が海に舞い散る可能性もある。赤土汚染でも大変なのに、紙幣散布でこれ以上海洋汚染されてはたまらない。紙幣散布はやめよう。

●紙幣をバッグに詰めて、警察に「拾いました」と言って届ける。どんな人が貰いに来るか見学。

 いや、これもまずい。こういうご時勢だから、社会保険庁の偉い人たちが「横領された金が投棄されたと聞いて受け取りに来ました。国民のためです。返してください」と返却を求めるかもしれぬ。これは困った。

●紙幣をバッグに詰めて、知らない人の庭に投げ入れる。

 これは中々楽しそうだ。誰だってビックリするだろう、自分の家の庭に山ほどの札束の入ったバッグが落ちていたら。あまりの衝撃でハンカチ王子の汗を拭う回数も増えるというものだ。
 バッグを開ける瞬間の驚天動地に陥る人の顔を激写するためには、テレビ局に協力を依頼して隠しカメラで撮影しようか。いやそうなったら、テレビ局のサガだ。仕込みの舞台女優を使うことは間違いない。

「なに、これ! …まさか、そんな。このバッグの中に、あの3億円事件のお金が入っているなんて! あの迷宮入りのミステリーがついに解決したわ!」

 女優が朗々とのたまい、いつの間にか問題が3億円事件の話にすり替わってしまう。終いには2億8千万じゃ足りないだろうと私が不足分の2千万を捻出させられ、全額を3億円にして、3億円事件は万事めでたく解決…な訳は無い。どこに2千万が転がっているというのだ。庶民としては、不足した2千万のためにヤミ金に手を出してしまいそうになる。

 それなら、大きな使い方をすればいいのだな。

●全国の自然災害の被災地に寄付
●自然保護の観点から森林を買い占め、自然保護団体に寄付

 寄付なら人のためになるし、大きく使えそうだが、少しくらいは自分のために使ってみよう。

●自主制作映画を作る
 もちろん私が監督・脚本・主演だ。内容は「帰って来たマトリックス」キャストは全員、落ち武士にしよう。時代設定は江戸末期。人情味溢れる下町庶民と落ち武者たちとの心のやり取り…マトリックスは関係無くなってしまった。シベリア超特急並みに寒い映画になりそうな予感。

●オリエンタルランドにお願いして、ディズニーランドならぬ「シーサーランド」を沖縄に建設運営をしてもらう。
 企画・建設・運営だけで甚大な金が要りそうだ。頭金100億円要求されても困る。
 もっと身近な使い道を考えよう。

●うまい棒を買う
●ガリガリくんを買う
●魚肉ソーセージを買う
●揚げパンを買う
●卵かけご飯用の醤油を買う

 どうも日頃の貧相な食生活が垣間見える。これではいかん。
 賞金獲得の夢ばかりが膨らむ。文面を読み進めよう。

 「1等賞金の受取り方法 ●1等当選賞金を銀行小切手により受取り

 これはいい。ただ、銀行小切手を貰ったはいいものの、不渡りになっていたら困る。オーストラリアの銀行より、ジャンボ宝くじでの高額賞金を支払うみずほ銀行にしてもらいたい。これは要交渉だ。

 ●1等当選賞金を銀行口座への電信送金により受取り

 なるほど、相手が私の銀行口座へお金を送金してくれるのか。いや待てよ。なぜ見ず知らずの海外宝くじ会社に、なぜ私の銀行口座を教えねばならないのだ。
 教えたら最後、私の口座から、ざるから水がこぼれるが如くお金が引き出されてしまっては困る。

 ●35万円相当のオーストラリアへの「社長特選ホリデー」優待旅行に参加し、1等当選賞金を直接受け取り

 なるほど。オーストラリアへの優待旅行に参加し、そこで当選賞金を直接受け取ることもできるようだ。

 …オーストラリアか。行ったことは無いが、楽しみだ。宝くじに当選すれば行けるんだ。エアーズロックの上で大絶叫「世界の中心で《見ず知らずの海外宝くじに当たったどー!》を叫ぶ」に挑戦することを決意。


イメージ画像【写真素材 足成】より借用

 オーストラリアで受け取る2億8千万。

 お金を受け取り、ホテルに戻り、全部の帯封を解き、部屋の隅々に札を放り投げる。いわば「札の海」だ。こんもりと膨らんだ札の海へ、思いっきりダイブ! 
ヒッヤホーイ!
 歓声を上げながら、札の間をかき分け潜る。新札は顔に当たり、擦り傷を多数負わせる。血だらけになった顔を天井に仰向けて大いに笑う。伏せて新札独特の匂いを胸いっぱいに吸い込む。億万長者とは素晴らしい。

 ハラショー!

 帰り道。痛々しいほど赤く血のにじんだ擦り傷をマスクで覆い隠しながら、ボストンバッグに無造作に満杯に詰められた膨大な札の山を抱える私の目は鋭さを増すと、「おいチョット」と係員に肩に手を掛けられる。
 犯罪の香りがする札束の匂い。
 帰りの税関で必ず捕まるだろう。手首に当たる手錠の冷たさが骨に響く。地団駄踏む思いである。
 チクショー! と小梅太夫とともに斉唱したくなる。

 そもそも、2億8千万ほどの高額賞金をオーストラリア現地で受け取って、タダで日本に帰れるとは到底思えない。

 鼻先にニンジンをぶら下げた馬のように、目の前の大金に興奮するばかりで、人は冷静に思考する判断能力や理性を失う可能性が高い。
 目の前に山と積まれたおびただしい紙幣に有頂天になり卒倒寸前になるものの、実は、新聞紙を切って揃えただけの見せ金をつかまされる可能性だってある。

 見せ金でウキウキとステップを踏んで街中をモンローウォークで歩いていると、マフィアに拉致され、マグロ漁船や売春宿にでも売り飛ばされたらどうしよう。
 そんな恐ろしいことに巻き込まれるなんて!

 恐怖の悲鳴を上げながらさらに読み進める。

 「1組のゲーム番号を5週間、2千円でオーストラリア公式6/45ロットーに今すぐ登録して下さい。」
 「高額賞金に当選された場合に、一刻も早くご連絡を差し上げることができるよう、下記に連絡先をご記入下さい。

 なるほど。2千円で5週間有効な宝くじなのか。ということは、ジャンボ宝くじのように、年何回と決まっている宝くじではないようだ。ロトやスクラッチの宝くじとも違うようだし。

 …2千円で5週間。お金を送ったらどうなるだろう。

 毎日かかってくる電話。毎日届く封書。紙面には、電話口では、次の文字が躍る。
「次には必ず当たります! 絶対に当たります! 次は口数を多めに申し込んでください! 当選まであと一歩でした! ここで諦めていいんですか? 億万長者まですぐ目の前だというのに!」

 やがて言葉はこう変わる。

「毎回お金を送ってもらうのはお手数ですので、銀行口座番号を教えてください。クレジット番号でも構いません。あなたの当選を引き続き保証するために必要なことなのです。」

 嗚呼、口座からの引き落としが止まらない。轟音を立てて口座の蛇口からドドドとお金が流れ出している。あたふたしている内に、預金残高がマイナスになってしまった。
 私の個人情報はあっという間に闇世界に広がり、私はどんどん闇金融に手を出してしまう。多重債務は雪だるまのように膨らみ、目の前の道に残されたのは、首吊りか、破産宣告のみ…ということになりかねない。

 困った、困った。オーストラリアへの無料旅行も考えものだ。

 大体、日本で海外宝くじを購入する行為は違法だというのに。

 今後、こんな迷惑なダイレクトメールが送られてきては困る。何か対策はあるものか、と封書を手に郵便局へと赴く。

《郵便局にて》

「ダイレクトメールが届かないようにしたいんですけど」

 郵便局員は丁寧に教えてくれた。民営化するとスマイルも多めなのね、と合点しながら、説明に耳を傾ける。

 どうやら、開封した郵便物は受け取り拒否が出来ないらしい。ならば、開封したものは廃棄する。そして、以後不要なダイレクトメールが届いた際には、

 1.受け取りたくない郵便物は開封しない
 
2.紙片に「受取拒否」と書く。
 3.その下に、自分の名前の認印を捺印するかサインをする
 4.その受取拒否の紙を、郵便物の宛名のそばに貼りつける
 5.郵便ポストに投函する。
 

受取拒否シールを作成しました。【こちら】

Uketorikyohi←画像をクリックすると別ウインドウに受け取り拒否シールの画像が出ます。

※A4サイズの紙に画像を印刷し、印鑑の枠にご自身のお持ちの印鑑を捺印し、「太線」を適宜切り取り、シール状にし、受け取りを拒否したい郵便物に貼り付け、郵便ポストに投函してください。

 

 郵便局が受取拒否シールを確認したら差出人に送り返すらしいが、封筒の表に差出人の住所が無い場合には、封書を開封して、差出人の住所と思しき場所に送りつけてくれるらしい。便利だ。

 「未開封・捺印・投函」

 という受取拒否の手順を学んで数日後、またもや見覚えのある封書が届いた。迷わず手製の受け取り拒否シールをべったりと貼り、郵便ポストへ投函する。
浮き立つ心を静めながら、郵便ポストに手を合わせる。

 どうか、どうか、人々の受け取りたくない物を不特定多数に送りつけて、それを受け取り拒否して送り返すなどという所業は、非常に煩雑な作業なので、もう送り付けないで下さい。海外宝くじを日本に送りつける違法業務の暇があったら、あなた方の助けを必要とする奉仕活動にぜひ就いてください。

 よろしく、よろしく…。白昼の太陽に祈る。

 またもや数日後、再び見覚えのあるフレーズの並んだ封書が届いた。「当選はもう目前です」…差出人の住所はソロモン諸島だった。

 ソロモンへの旅行…。

 どこにある島かは知らないけれど、絶対に行きたい。きっと南国ね。
 そう、憧れの南国パラダイス。蝶や鳥が緑の楽園で夢のように舞い、エメラルドグリーンの海が私を誘う。漆黒の夜空は幾多の星が瞬き、流星に想いを込める。自然の神秘。鳥たちが次々と飛翔する美しい夜明け。

 行かせてちょうだい! ソロモンが私を呼んでるの!

 夢見心地で思わず開封したくなる。
 はやる気持ちをぐっと押さえ、泣く泣く受取拒否シールを取り出し、貼りつける。

 またも騙されるところだった。

 こんなに住所を転々としながら送りつける暇があるのなら、

 自社で宝くじ買って当選して儲ければいいのに!

 送りつけなくたっていいじゃないか。

 ぶつぶつと呟いていると、またダイレクトメールが届いた。少し面倒になりながら受取拒否シールを貼り付ける。一体どうなっているんだ、この会社は。送り返しても別の物が届くなんて。不可思議で首を傾げてしまう。

 ただ…封筒の表面の思わせぶりな文言に、毎回といっていいくらいに胸をときめかせてしまうのも事実である。

 消費生活センターから危険!のレッテルを貼られている荒唐無稽なデタラメな海外宝くじだと知っていても、差出住所の外国の潮騒の香りに、どうしても心を高鳴らせてしまう。

 フランス、香港、フィジー、フィリピン、オーストラリア…。
 まだ見ぬ外国への夢、憧れ。

 外国への憧れという純粋な夢を見る人々の心の間隙を突くように、今日も海外宝くじのダイレクトメールは、悪魔の面をひた隠しながら、日本各地の迷える者たちの元に届き続ける。

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