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神様トーーク◆キジムナーは《人間》だった?!

南国沖縄。この小さな島のどこかで、沖縄を見守る神様たちは、日々、茶飲み話に余念が無い。
そこで、神様たちがこんな話をしていたら――。

登場人物 ●神様2名
《内訳》
 カミ……偉い神。
 弟子……カミを先生と仰ぐ神。

カミ「おい、熱い茶をくれないか」
弟子「はい。――先生、せっかく淹れたお茶に泡盛を混ぜないでくださいよ」
カミ「なぜだ。南国沖縄にあるまじき寒さに震えるワシをお前は見捨てるのか。泡盛を熱くして飲んで何が悪い」
弟子「熱燗がいいならご用意しましたのに」
カミ「ふん、もう遅いぞ。飲み干してやる」
弟子「先生、怒らないで下さいよ。さっきからどうしてそう不機嫌なんですか?」
カミ「あれのせいだよ。ほれ、あそこに寒い中を裸で走っているヤツがいる」
弟子「え、どこですか?」
カミ「東海岸沿いだ。そう、赤っぽい格好をしたヤツだ」
弟子「裸で赤っぽいって、赤の全身タイツですか」
カミ「どういうのを想像したんだ。よく見ろ。確かに赤っぽいが裸だ。そういうのが好きなのかお前は」
弟子「好きとかじゃなくて、赤い身体と言えばテレビとかで見る全身タイツしか思い浮かばなくて」
カミ「お前はテレビっ子か。貧困な発想だな」
弟子「すいません。あれ? よく見ると全裸ではなくパンツ履いていますね」
カミ「なんだと! セクシーなパンツか。ラメ入りか、花柄か。ワシはよく見えん。双眼鏡は無いのか」
弟子「虎柄の……虎の子パンツにも見えます」
カミ「虎の子パンツ?」
弟子「黄色の布地に黒細長い縞の入った、虎模様のパンツですよ。よく鬼が履いています」
カミ「じゃあ、あいつは鬼なのか」
弟子「いえ、ここは沖縄なので、《キジムナー》ですね。きっと」

 ◆ ◆ ◆

カミ「キジムナーだと? なんだそれは」
弟子「妖怪です。マジムンですね」
カミ「ふん、ワシは妖怪を信じないぞ」
弟子「はい?」
カミ「正確に言うと、人間の形をした《人型妖怪》は実在せん。ワシはそう思っておる」
弟子「どういうことですか?」
カミ「ワシはこう思うのだ。人間の姿をした二足歩行の妖怪は、人間を見間違えたもの、《誤認》したものではないかとな」
弟子「先生、私は昨日、醤油をコーヒーと間違えて飲んでしまいました」
カミ「それは誤飲だ。ワシが言っているのは《誤認》だ」
弟子「見間違えですか?」
カミ「そうだ。《人型妖怪》は、人間による見間違い、いわゆる錯覚・錯誤・誤認などで出来たものではないかと思っておる。あくまでもワシの仮説だがな」
弟子「さすが、先生。面白い仮説ですね」

 ◆ ◆ ◆

カミ「例えば、河童だ。ヤツの頭頂部のお皿は、マゲを落とした武士の脱毛部分だな。青白い落ち武者が河童と見間違えられたのではないかと思う」
弟子「落ち武者にしては小柄ですね。武士と言えば、野趣溢れる屈強なイメージですよ。河童といえば、枯れ枝みたいに細いように思えます。体脂肪率はヒトケタみたいですし」
カミ「そりゃそうだ。戦に負けた挙句、マゲを落として殺生を絶ち、ベジタリアンになったんだ。結果、食が細りあんなに痩せたんだろう。顔が緑色になるくらいに緑黄色野菜を摂取しておる。可哀想なやつだ。哀れんでやれ」
弟子「そういうこととは露知らず、すいませんでした。河童を今度見かけたら高カロリーの物をご馳走することにします」
カミ「やめとけ。金の無駄だ。貧弱な緑色の河童がメタボになってどうする。血色のいい肥えたピンク色の河童は企業キャラクター程度で十分だ。河童に幻想を抱く国民をガッカリさせたいのか」
弟子「じゃあ私だけ高カロリーの物を食べます」
カミ「それも許さん。お前はワシが食うのを黙ってそばで指をくわえて見ておけばいい」
弟子「どうしてですか!?」
カミ「お前なんかまだまだヒエラルキーの底辺だ。ワシはそれのかなりの上におる。ワシは支配者、お前は被支配者。大いなる権力にひざまずく哀れな平民よ、思い知れ」
弟子「そんな……ひどいです、先生!」
カミ「なに、神様ドッキリだ。ビビったか。心拍数が倍になったのなら言え。ワシは神様仲間とドッキリのスタンプラリーを行うことなった。10個貯まればお前にチップをやろう」
弟子「でも私、全然ビビってませんよ」
カミ「それなら次に期待しよう」

 ◆ ◆ ◆

カミ「他に《人型妖怪》と言えば、天狗だな。ヤツは赤ら顔で高い鼻をしておる」
弟子「確かにそうですね」
カミ「あれは鼻の高い赤ら顔の白人が、修行のために山伏の格好をしたんだが、その時に天狗と見間違えられたものだと思う」
弟子「赤ら顔にしてはとっても赤い顔ですよ」
カミ「強い酒でも飲んでおるのだろう。ウォッカとか。まあ、ワシのレベルになると、どんなに強い泡盛を飲んでも顔色一つ変えることは無いがな」
弟子「その代わり飲酒時の記憶は一切無いですけどね」
カミ「それを言うなよ」
弟子「でも、天狗は超人的なパワーを持っているらしいですよ」
カミ「欧米人なら日本人と骨格が違う。身体能力が良くて当然だ。あくまでも日本人から見た《人型妖怪》の姿だからな」
弟子「そういうことなんですね」

 ◆ ◆ ◆

カミ「忘れてならない《人型妖怪》は、雪女だな。ヤツは常に低体温の色白の髪の長い女性だな。両手足は末端冷え性の可能性がある」
弟子「人間にしては肌の色が白すぎませんか?」
カミ「ありゃ雪の女だ。一面の銀世界にいてナンボの話だぞ。昼は太陽ギラつく雪山、夜は下弦の月の照らす雪原――白い着物を一枚羽織ったロングヘアの色白女性なら100%雪女に間違えられる」
弟子「雪山にそんな紛らわしい格好の人いますかね」
カミ「いるんだよ、それが。切れ長の眉、細い目、あるかなきかの鼻筋、薄い唇……。まさに美人薄命を地でいっておる。雪女らしく、いかにも儚げじゃないか。ロマンチックで憧れるのう」
弟子「憧れるって、どこにですか?」
カミ「薄命にだよ。不老不死の我々からすれば、夭折、短命は羨望の的だ。体育館での朝礼でふらりと貧血で倒れる女子生徒、ああいうのに胸がキュンとなる」
弟子「だからいつも朝は早起きして各地の体育館を見に行くんですね」
カミ「いいじゃないか。ワシの楽しみなんだから」
弟子「でも私は現状の不老不死が一番ですね。私たちは最強なのですよ」
カミ「最強というお前が一番寝起きが悪い。最弱じゃないか。沖縄の人たちを二十四時間体制で空から見守るというのに、朝陽が昇ってもお前はちっとも起きてこない。だからワシが朝の当番を頑張っておる」
弟子「二日酔いに苦しむ先生に、朝の当番をいつも任せていて本当にすいません」
カミ「なあに、夜から引き続き朝もずっと酒を飲んでおる。大丈夫だ。安心せい」

 ◆ ◆ ◆

弟子「雪女といえば、雪男もいますね」
カミ「雪男は、雪国に住む巨漢だな。力士くらいの身体が大きい人間だとワシは思う」
弟子「雪国に力士。雪国力士。なんだか演歌みたいですね」
カミ「知らんがな。雪男に間違われるためには、NBAのバスケットボール選手や幕内力士などの巨大な男性が、干草などで作った野性味溢れる服を着て、雪山の林間に佇んでいる必要がある」
弟子「それにしても、雪女も雪男も、極寒の中、なぜ戸外の雪山にいるんでしょうか」
カミ「外出したくなったんだろう。元々、人里から離れた山奥に住んでいると思う。冬になり、備蓄の食糧が尽き、何か食べるものを分けてもらうか横取りするために外出したところを、付近住民に目撃されたのだろう」
弟子「寒いとはいえ、雪男は、身体が大きいために、筋肉量や基礎代謝量は高いのでしょうね。そのため常に体温が高く、寒さはさほど感じないのかもしれません」
カミ「お前はダイエットインストラクターか」
弟子「いえ、違いますけど」
カミ「ワシを差し置いて分かったような口を聞くんじゃないよ。雪男が寒がりだったらどうするんだ」
弟子「それは考えていませんでした」
カミ「雪男に謝れ、ほら早く」
弟子「えっ」
カミ「気にするな、ワシがお前の代わりに雪男に謝っておく。だから、お前はワシに少しばかり誠意をくれないか」
弟子「何をですか?」
カミ「金だよ。お前の金で酒のつまみを今から買ってくる。ピザでも注文しようか?」
弟子「勝手にしてください」

 ◆ ◆ ◆

カミ「非常に重要な《人型妖怪》は、赤鬼と青鬼だな。まず、赤鬼は赤ら顔の白人だ。そして青鬼は肌の浅黒い人、あるいは黒色人種と考える」
弟子「赤鬼、青鬼、緑色の河童、白色の雪女、赤色の天狗。色が出揃いましたね。バリエーションに富んでます」
カミ「ついでに黄色もあるぞ。肌が黄土色をしている日本人だ。まさしくイエローモンキーだ」
弟子「黄色ですか。確かに先生の肌も黄色っぽいですね」
カミ「ワシは単に肝臓に問題があるだけだ」
弟子「先生は一日中お酒ばかり飲んでいるからですよ」
カミ「それはそれは。浴びるほど飲んで忘れる恋の病み、惚れちまった悲しみに、好きで選んだ道よ泣け」
弟子「なんですか」
カミ「寝言で歌っていたらしい」
弟子「きっと見ていらしたのは悪夢ですね」
カミ「失礼な奴だな」
弟子「そういえば、鬼といえば、桃太郎が鬼が島で退治しましたよね。勇敢なお話です」
カミ「知っておる。今でも陰惨な犯行現場を思い出す。犯人が判明したのに検挙できなかった凶悪事件、《桃太郎・強盗殺人事件》だ。あれはひどかった」
弟子「そんな話でした? 鬼を退治した桃太郎が英雄になる話だと思っていましたが」
カミ「鬼が島は、相思相愛にあった京の姫君と駆け落ちした鬼が、仲間たちとひっそり暮らしていた小さな島だった。そこへ無断で上陸した桃太郎が、鬼を全員殺して姫を拉致した上、島の財宝まで根こそぎ強奪したのだ」
弟子「ええ?」
カミ「桃太郎を捕まえて裁きを受けさせる動きもあったのだが、権力者に寵愛されていた桃太郎は英雄のまま都に帰還、桃太郎を糾弾する声も封じられ、結局、凶悪事件の真相は未だに闇の中だ」
弟子「初耳です。信じられません」
カミ「いつも歴史は権力者の思うがままに塗り替えられる。現実というのはそういうもんだ」

 ◆ ◆ ◆

カミ「長い前置きだったが、要は、≪人型妖怪≫たちは、村社会に入れなかった者たちなのだ。彼らは村八分にされ、里山に入ることができず、人目につかないようにひっそりと暮らしている《村の異分子》たちではないか、と思う」
弟子「なんだか先生のお話に一理あるように思えてきました」
カミ「白人・黒人といった異邦人だけではない。身体に障害を持って生まれた子どもたちは、間引きという名で命を奪われ、あるいは屋敷の奥深くの座敷牢で幽閉されて一生人目につかないように育てられたという話も多い。そこを脱出して里山をさ迷った彼らも《人型妖怪》に見なされた可能性がある」
弟子「恐ろしいです」
カミ「村社会の排他性・閉鎖性は、村人とは異なった者を、《村の異分子》と見なして、排斥し迫害してきたのだ。《人型妖怪》は、そんな《村の異分子》たちが黒い歴史によって塗りつぶされてしまった悲劇ではないかとワシは思う」
弟子「西洋の魔女狩りみたいですね」
カミ「その通りだ。彼らの不遇さに涙が出てくる。そりゃあ、酒瓶とつまみを肴に、夜は墓場で運動会をしたくなるものよ」
弟子「ただ、昨今の墓石の簡素化や管理型の集合霊園などの状況を考えると、墓場で運動会は本当に可能なんでしょうか」
カミ「真面目か!」

 ◆ ◆ ◆

カミ「で、キジムナーの話はどうなった。あいつは今、北谷ジャスコの屋上で遊んでおるようだ。寒いというのに陽気なものだ」
弟子「確か、キジムナーについて先生に教える話でしたね」
カミ「さっさと説明しろ」
弟子「はい。まず、キジムナーについて書かれていたウィキペディアの項目を印刷しました。便利な世の中です」
カミ「図書館の書籍で調べなかった怠慢を自慢げに言うな」
弟子「すいません」
カミ「説明に手間取るな」
弟子「はい。ではキジムナーの特徴をご説明します。『体中が真っ赤な子ども』『赤髪の子ども』とありますが、これについてはどう思いますか?」
カミ「身体が赤いのは赤鬼と似ているな。キジムナーは白人か。それとも赤の全身タイツか」
弟子「全身タイツかは分かりませんが、ジャスコの屋上で遊んでいるあのキジムナーは裸ですね。さきほどまで履いていたと思っていた虎の子パンツも今や見当たりません。どうやら身体が小さいようですし、子どもの可能性があります。アダムとイブのような羞恥心は無いのでしょうか」
カミ「イチジクの葉でも渡して局部を隠せと言え」
弟子「――今渡してみましたが鼻で笑われました」
カミ「なんだアイツ。生意気だな」

 ◆ ◆ ◆

カミ「それにしてもアイツの髪は赤いな。あんなに赤い髪は、歌舞伎で頭をグルグル回す《連獅子》で見たことがあるぞ。髪を脱色して赤い色でも入れているのか」
弟子「髪が傷みますね」
カミ「キジムナーが髪のキューティクルを気にするとは思えんが。ワシは髪の毛一本一本を大事にしておるというのに」
弟子「先生の髪は残り少なくて貴重ですからね」
ワシ「今や世界標準の《もったいない》精神を励行しているだけだ。髪の多少を問題視するな」
弟子「それにしてもあの髪、ひょっとしたら、中学校という義務教育の最中に容赦なく髪をカラーリングした不良少年少女《ヒンジャーワラバー》にも似ていますね」
カミ「キジムナーは不良少年少女か」
弟子「あるいは《赤毛のアン》ですね」
カミ「全身赤タイツの赤毛のアンか」
弟子「お下げ髪の揺れる赤タイツ肩先が可愛いですね」
カミ「大人のキジムナーはどうなる。中高年のメタボ腹の全身タイツはインパクト大だぞ」
弟子「もはやキジムナーではないかと。別の生物の可能性が」
カミ「それもそうだな」

 ◆ ◆ ◆

弟子「キジムナーの特徴として、『跳びはねるように歩く』というものがありますが、どう思われますか?」
カミ「ホップステップジャンプだな」
弟子「それで歩行するんですか?」
カミ「人が見ている時に飛び跳ねればいい。例えば、魚類博士の《サカナくん》氏、お笑いコンビ《カラテカ・矢部太郎》氏、あとは《江頭2:50》氏などが似ているな」
弟子「動きだけですよ」
カミ「それでいいのだ。あとは、《もう中学生》氏もキジムナーの動きに似ているな。うむ、これは類似点を思い出すだけで、非常にいい脳トレーニングになるな。これは今度の神様学会で発表しよう」
弟子「神様みんながテレビを見ているとは限りませんが」
カミ「連想と脳トレの話だよ。テレビに出てくる芸人の話ではない」
弟子「はあ」
カミ「ついでに《鳥居みゆき》も加えておこう」
弟子「先生はテレビっ子なんですね」
カミ「ワシはNHKニュースと気象情報しか見ない」
弟子「嘘ばっかり」

 ◆ ◆ ◆

弟子「キジムナーの特徴として、『男女の性別があり、大人になって結婚もすれば、子どもを生んで家族連れで現れる、あるいは人間の家に嫁ぐこともあるなどとされる。』というのがありますが、どう思われますか?」
カミ「全身赤タイツ一家か。日常生活が欽ちゃんの仮装大賞とはどういう家庭環境をしておるのだ。全身赤タイツと夜道で出会い頭にぶつかってみろ。毎夜うなされるに決まっている。他所の子どもの教育に悪いとは思わないのかね」
弟子「私に言われても困ります」
カミ「まあでも、格好はどうあれ、ほのぼの家庭だろうな。キジムナーの戸籍くらいどこかにあるんじゃないのか」
弟子「戸籍を確認してみます」
カミ「やめとけ。どうせ戸籍を扱う役所なんてものは個人情報を盾に教えてはくれないだろう。縦割り行政の弊害だ」
弟子「役所じゃなくても出来ますよ。住基ネットにハッキングすれば戸籍なんて一網打尽です」
カミ「サイバー犯罪だな。なんて奴だ」
弟子「権力を逆手に取るのが私の役目です」
カミ「いつかお前がワシを反撃するかと思うと末恐ろしい」
弟子「今のところは大丈夫ですよ」

 ◆ ◆ ◆

弟子「では次に、キジムナーの特徴として、『魚介類を主食とする。グルクンの頭が好物だともいう。』に関してはどうですか」
カミ「間違いない。《サカナ》くんで決まりじゃないか」
弟子「何が?」
カミ「飛び跳ねることといい、魚好きといい、《サカナ》くんで決まりだろう。彼が頭に被っている魚のぬいぐるみは、キジムナーの特徴である赤髪を隠すためじゃないか」
弟子「確認してみます。あと、『とくに魚の目玉(左目)が大好き』という特徴がありますが」
カミ「コラーゲンの摂取のためだろう。肌のキメを整えておるようだ」
弟子「はあ」
カミ「どうりで《サカナ》くんは肌艶がいいと思った。羨ましい。ワシも美肌を手に入れたい」
弟子「あと、『自ら海に潜って漁をする。』という特徴もありますが」
カミ「素潜り名人だな。モリで突いたタコを天に掲げ《獲ったどー!》と叫んでいるのが目に見えるようだ。間違いない」
弟子「あと、『キジムナーとともに漁をすると、たちどころに船が魚であふれるほど魚が捕れる』という特徴もあるのですが」
カミ「大漁に水揚げされた魚、全部の目玉を食べる気だな」
弟子「そうなんですかね」
カミ「きっと美肌が加速する。羨ましい」
弟子「嫉妬しているんですか」
カミ「まあな。そんなに美肌ならモテるだろう」
弟子「でも全身赤ですよ」
カミ「それは微妙だな」

 ◆ ◆ ◆

弟子「あと、『夕食時にはかまどの火を借りに来る。年の瀬は一緒に過ごす』という特徴もありますが」
カミ「やけにアットホームだな。赤鬼も青鬼も、人間に恐れられて孤独なんだぞ。キジムナーだけそんなにフレンドリーでいいのか」
弟子「紅白歌合戦も見るんでしょうか」
カミ「そりゃあ、赤い身体だけに紅組応援だろう」
弟子「NHKからオファーが来るかもしれませんね」
カミ「キジムナーが受信料を払っているか否かそれが問題だ」

 ◆ ◆ ◆

カミ「キジムナーの話に飽きてきた。なんか眠い。お前の話は睡眠薬以上の睡魔を呼ぶ」
弟子「あともう少しだけ我慢してください。キジムナーの特徴で特筆すべき非常に面白い点があります。『人間と敵対することはほとんどないが、住みかの古木を切ったり虐げたりすると、家畜を全滅させたり海で船を沈めて溺死させるなど、一たび恨みを買えば徹底的に祟られると伝えられる。』どうですか。面白いでしょう」
カミ「……(無言)」
弟子「どうかしました?」
カミ「なんて恐ろしいんだ。家畜全滅・船沈没・人間溺死――。ホラー映画のような残虐さがある。トラウマになりそうだ」
弟子「他にもありますよ。『赤土を赤飯に見せかけて食べさせる、木の洞など到底入り込めないような狭い場所に人間を閉じ込める、寝ている人を押さえつける、夜道で灯りを奪うなどの悪戯を働くともいう。』キジムナーもなかなかやりますね」
カミ「キジムナーを虐げた時の復讐が凄まじいな。イタズラから嫌がらせ、果ては殺人まである。ホラー映画になりそうだ。むむ、面白いことを思いついたぞ。キジムナーを題材に映画を撮るのだ」

【沖縄初の本格ホラームービー】
 数百年前の復讐を誓ったとき、惨劇の扉は開かれる。
 甦った怪物(マジムン)が怒りの鉄槌を振り下ろす時、琉球列島は血で染まる。
 ホラー映画《キジムナー惨劇の森》(R15指定)
 全米を震撼させた邦画が逆輸入され本邦初公開。
 まばたきを惜しむ怒涛の展開、禁断のラスト15分にあなたは必ず涙する!

弟子「数百年前の復讐って……」
カミ「なあに、ホラー映画の復讐理由なんて大概は理不尽なもんだ」
弟子「だからって沖縄人を手にかけちゃまずいですよ! 我々は沖縄人あっての存在なんですから!」
カミ「所詮、作り話だ。フィクション映画なのに何をそんなにやけになって叫んでおるのだ」
弟子「作り話とはいえ、琉球列島を血で染めないで下さい。戦争体験者が沖縄戦の惨劇を思い出してしまいます」
カミ「じゃあ、舞台は米軍基地内にしよう。銃剣とブルトーザーの土地収用で、米軍に住み家を奪われたキジムナー軍団が、復讐心に燃え、米軍に戦いを挑む。どうだ」
弟子「はあ」
カミ「ロケ地は嘉手納弾薬庫かあたりで撮影すればいい。放射能漏れの臨場感がある。スリリングだ」
弟子「確かにスリルはありますが」
カミ「別のキジムナーが事件に巻き込まれる伏線もいいな。畑作業で不発弾で負傷、洗濯物を干していたら射撃訓練の流れ弾に被弾、歩いていたら軍用ジープにはねられる、どうなっているのかと空を見上げると上から軍用ヘリが落ちてくる。壮大だろう」
弟子「日米政府のトラブルになりますよ」
カミ「どうせ日本は弱腰外交だ。文句は言いやせん」
弟子「米政府が文句を言ってきたらどうします」
カミ「《これはハリウッド映画です》と言えばそれで済む。映画撮影には寛容な国柄だ。戦車も戦闘機も貸してくれるぞ、きっと」
弟子「安直な国ですね」
カミ「権力を逆手に取ると言ったのはお前じゃないか」
弟子「そうでした」

 ◆ ◆ ◆

弟子「これで最後です。キジムナーの特徴として、『タコ、ニワトリ、熱い鍋蓋、屁を嫌う』これはどうですか」
カミ「キジムナーと対決するための苦手な物を羅列した割には、それぞれに関連性が無さ過ぎる。『熱い鍋蓋』ってどうやってキジムナーに使うんだ」
弟子「それもそうですね」
カミ「例えば、ドラキュラの弱点は、ニンニク・聖水・陽光だ。ニンニクを玄関に吊るしてドラキュラを避け、迫り来るドラキュラに聖水を振り掛け、絶体絶命の時には天井が崩れて陽光が差し込みドラキュラは灰になる。こういうドラマチックな展開に使える弱点を考えるべきだ」
弟子「確かにそうですね。ニワトリは戸外で飼育できますが、干しタコを玄関に飾ると、猫が食べてしまいそうです。熱い鍋蓋は、熱して温まった直後に、鍋蓋をヤケドしないように鍋つかみで持ち、迫り来るキジムナーに掲げるのですが」
カミ「その時点で既に鍋蓋は《ちょっと温かい鍋蓋》だ。それを向けられたキジムナーも《温かい鍋蓋が何?》と戸惑うだろう。恥をかくのは人間だ」
弟子「そうですね。それなら『屁』も困りますね。生理現象を武器にするなんて、無茶です。第一、どうやって使うんですか」
カミ「壁際まで追い詰められて窮した人間が放屁しキジムナーを撃退、なんて設定が許されるのはドリフの舞台くらいだ」
弟子「キジムナーを撃退するために、身近にある物を利用したのは、キジムナーに対する親近感を考えたためだと思いますが、あまり有効に機能していませんね。先生なら何をキジムナーの弱点アイテムに起用しますか」
カミ「前向きな性格、というのはどうだ」
弟子「どう武器になるんですか」
カミ「常に人生を前向きに生きておればキジムナーがよりつかん」
弟子「全身赤い身体のほうがよっぽど人生前向きですよ」
カミ「それなら沖縄方言はどうだ。窮すれば方言。方言を話すと聞いたキジムナーはのたうち回る」
弟子「キジムナーのほうが古くから沖縄に存在すると思いますよ。沖縄方言は上手に操れると思います」
カミ「海ぶどうにしよう。首から提げたら魔よけになる」
弟子「時間が経ったら乾燥して縮んで切れやすくもろいです。もずくもダメですよ。魔よけにして撒いたら後片付けが大変なので」
カミ「じゃあ、コーレーグースーが一番だな。顔に掛かったら痛いぞ」
弟子「確かに撒かれたら誰でも痛みでのたうち回りますね。実験とかしないで下さいよ」
カミ「ダメか?」
弟子「コーレーグースーの瓶を持った手を、そう、テーブルの上に置いて下さい。そう、ゆっくりと。先生、冗談は無しですよ」
カミ「なんだ、つまらん。コーレーグースーを全身に浴びたお前のリアクションを動画撮影してYoutubeで全世界に配信するつもりだったのだが、残念だ」
弟子「……先生は恐ろしい」
カミ「なに、神様ドッキリだ。恐怖で心臓が縮んだろう。ドッキリスタンプを押してもいいか。ビビッてないなら、次回に期待しよう」
弟子「ダメです!」

 

◆ ◆ ◆

弟子「では、今回のキジムナーの話はこれで終わりです。これからさっさと人間に乗り移って、どこかで美味しいご飯を食べましょう」
カミ「よし。じゃあ、まずは美男子を探そう。イケメンの身体に乗り移った後に、北谷あたりで可愛い子ナンパしてこよう」
弟子「乗り移るタイミングを間違えないで下さいよ。この前なんて、タイミングがずれて、人間が散歩させていたペット犬に乗り移ってしまいましたよね」
カミ「あれは悲惨だった。ペットフードはまずいし、飼い主の頬ずりは気持ち悪いし。ムツゴロウに飼育される犬の辛さが分かった」
弟子「私なんて首輪に乗り移ってしまい散々でした。さあ、先生、出かけましょう。さっきまで屋上で遊んでいたキジムナーも山の奥深くに入ってしまいました」
カミ「そうだな。では長話を失礼するよ」
弟子「お後がよろしいようで」

 ◆ ◆ ◆

【完】
※本作はフィクションです。
※『』内は全てウィキペディアより引用・抜粋した。

・・・ 執筆後記 ・・・

 沖縄の特質などをあれこれとまとめて書きたいと思い、見切り発車でスタートしたのだが、案の定、着地点がどうもよくわからなくなってきた。

 分かりにくさは折り込み済みである。申し訳ない。

 キジムナーという事象やその存在の不可思議さを、僅か一片でも貴殿に受け取っていただけたら、私にとってお釣りが来るくらいのありがたき幸せである。

 琉球の宮 拝

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