« 【架空請求の体験談】されど悲しみの出会い系 | トップページ | 【架空請求の体験談】ワタシ架空請求ですけど何か? »

叔父の命日

 ふと見上げれば欄間に掲げられた叔父の遺影には、埃が積もっていた。

 少しはにかんだような笑みを湛えた、控えめな叔父の生前の顔を、私はおぼろげにしか覚えていない。

 

 確か、小学校の一年だったと記憶している。

 人の生死をまだ理解できぬ時期であった。

 朝起きると、家の者が騒いでおり、「亡くなった、亡くなった!」と飛び交わされる言葉にも、私はポカンと口を開けて聞き、そして見ていた。

 仏間に横たえられ、冷たくなった叔父を囲んでさめざめと泣く親戚を見ながらも、私は、家の軒先にある鶏小屋の鍵を掛けたかどうか、中にいる数羽の闘鶏に餌を与えたかどうかをずっと気にしていた。

 

 叔父の死に際し、記憶にあるのはこれくらいである。

 通夜、火葬、葬式などの法要についての記憶は全く欠落している。

 生前の叔父の姿と、仏間で冷えて硬くなった叔父の姿とは、私の中で一致していなかったからかもしれない。

 さすがに叔父の死から多くの年月を経ると、「どこかで叔父は生きている」などと思うことも無いが、それでもふと思い出すのは、叔父の冷えた身体の無機質感である。

 今まで動いていた人間が、その動きを止め、やがて熱を失い、硬くなってゆく。

 繰り返し太陽は昇り沈み、また月が闇夜を照らすというのに、生物とはいかにはかないものか。

 仏前に座り、香炉に立てた線香の煙が仏壇の上部に立ち上ってゆくのを見ながら、ふと考えた。

 皺深き線香くべる手多かりし 積年を思う叔父の命日

« 【架空請求の体験談】されど悲しみの出会い系 | トップページ | 【架空請求の体験談】ワタシ架空請求ですけど何か? »

エッセイ:色々」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 【架空請求の体験談】されど悲しみの出会い系 | トップページ | 【架空請求の体験談】ワタシ架空請求ですけど何か? »

お品書き

大好評★架空請求の体験談

おすすめエッセイ

おすすめ小説

無料ブログはココログ