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近代文学とともに

 


 

 さて、現在のわたくしについて。

 その特徴としては、日本の近代文学が大好き、ということでしょうか。
 以前までは、流行の現代小説を読んでおりました。

 生れ落ちてから高校までは赤川次郎や新井素子、江戸川乱歩「少年探偵団」シリーズ、モーリス・ルブラン「ルパン」シリーズ、コナン・ドイル「シャーロックホームズ」シリーズなどに非常に熱中いたしました。
 漫画はとんと読んだことはありません。手塚治虫、美内すずえ「ガラスの仮面」のみという漫画大国ニッポンからかけ離れた生活。

 大学時代は大沢在昌、宮部みゆき、東野圭吾。特に今でも敬愛してやまない大沢在昌の「新宿鮫」「アルバイト探偵」シリーズは、ハードボイルドのかっこよさ、ミステリーの面白さを教えてくれた契機の作品です。

 ただひたすら、一心不乱に読みふける日々。

 読書傾向が変わったのは、いつだったか、空港の待合時間に偶然手に取り読んだ田辺聖子の源氏物語の手ほどき書でした。

「『源氏物語』の男たち―ミスター・ゲンジの生活と意見」

 お洒落で軽妙な語り口が、源氏物語の敷居を低くしてくれて、魅力的な登場人物の人生を鮮やかに掘り下げて描き出し、現代に生きる私に平安文学の世界を容易に垣間見させてくれたのでした。

 それから田辺聖子の「新源氏物語」「霧深き宇治の恋」から与謝野晶子「源氏物語」を経て、さらに谷崎潤一郎「源氏物語」まではそう時間はかかりませんでした。

 谷崎源氏は平安絵巻を再現する壮麗な美文ながら主語を省略した分かりにくい文章で、電子辞書を片手に古語を引き、高校時代の国語教科書の副読本の国語便覧を探し出し手元に置いて、人物関係図をチェックしながら読み進めるという手間の掛かる作業という、読書とは程遠い研究作業のようなもので、まったく物語が先へと進みません。
 それでも半年という月日を費やしながら読了したときには、得がたい達成感はあったものの、冒頭の桐壺の巻を読んだ記憶は曖昧という悲しさはありましたが、それでも諦めずに、二度、三度と読み進めると、四度目にはようやく読了のペースも速くなり、文章と内容を味わう余裕さえ生まれてきました。

 これで近代文学を読み進める素地ができたと確信した私は、いくつもの近代文学を手に取ることになったのです。

 田山花袋、宮本百合子、島崎藤村、梶井基次郎、芥川龍之介、三島由紀夫、尾崎紅葉、大江健三郎、国木田独歩、太宰治、横光利一、川端康成、志賀直哉、永井荷風、泉鏡花、森鴎外、夏目漱石、、 

 技巧に技巧を重ねた文章、自らの人生を投影させた文章、美文を追求した文章、思想を投じた文章・・・。緊迫し怒張した文章からは一分の隙も見出せません。文学、という崇高な名に相応しい作品の数々。その鮮烈な光は眩しくて目も開けられません。

 イメージ写真。自然の事物は今も昔も変わらない。文豪たちは何を思いこれらを見たのだろうか。

 近代文学を味わう面白さは随筆にもあると思います。

 例えば、志賀直哉の「沓掛にて ─ 芥川君のこと」などを読むと、当時の名だたる作家たちのとの交流が、日常生活の中に描かれていて、まさに歴史上の人物たちの息遣いさえ感じられます。

 志賀直哉が芥川龍之介の風采を形容した表現を読むと、芥川龍之介のその研ぎ澄まされた怜悧さはGacktさんのようでいて、ふと漏らすシニカルな笑いはダウンタウンの松本人志さんと重なり、長い髪のひょろ高い不健康そうな出で立ちはまるでアンガールズ山根さんにどこか似ているようです。

 皆が集まる前では場を凍りつかせるような不謹慎な発言で空気が読めない感をわざと演出し、二人きりのときにはしんみりとした話をする、孤独な人間・芥川龍之介。孤高の人、という彼に対する印象は、文豪仲間でも感じられていていたようです。

 そんな文豪たちの素顔を垣間見れるのが彼らの交遊を綴った様々な随筆にあります。

 そんな「ごっつええ感じ」世代の私は、ダウンタウン松っちゃんをテレビで見るたびに、彼が芥川龍之介と重なって仕方がありません。


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