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この世で一番無駄なものは

 


 

「鏡よ鏡、この世で一番無駄なものは何かしら」
 ある国の女王さまが鏡に向かってお尋ねになりました。
 すると鏡は答えました。
「あなたがこの世で最も憎らしいと思うものです」
 女王さまは白く美しい面輪を悲しげに曇らせてお答えになりました。
「それはネズミだわ。貯蔵庫で穀物袋がネズミに食べられてしまったと下女が話しているのを聞きたのよ」
 すると鏡は答えました。
「それならこの世からネズミを全て消してしまいましょう」

「鏡よ鏡、この世で一番無駄なものは何かしら」
 ある国の女王さまが鏡に向かってお尋ねになりました。
 すると鏡は答えました。
「あなたがこの世で最も憎らしいと思うものです」
 女王さまは涙声で訴えるようにおっしゃいました。
「ネズミが消えてしまった代わりにゴキブリが大発生して困っているの。農民や町民たちがパニックになってるのよ」
 すると鏡は答えました。
「それならこの世からゴキブリを全て消してしまいましょう」

「鏡よ鏡、この世で一番無駄なものは何かしら」
 ある国の女王さまが鏡に向かってお尋ねになりました。
 すると鏡は答えました。
「あなたがこの世で最も憎らしいと思うものです」
 女王さまは、けたたましく声を上げてお笑いになり、叫ぶようにおっしゃいました。
「それは王様よ! つまり私の夫。あの人はパニックになった国の者たちをおろおろしながら見るだけで、鎮めることができないの。今に暴動が起きるんじゃないかと私は夜も眠れないわ」
 すると鏡は答えました。
「それならこの世からあなたの夫である王様を消してしまいましょう」

「鏡よ鏡、この世で一番無駄なものは何かしら」
 可愛らしい少女が鏡に向かってたずねました。
 すると鏡は答えました。
「あなたがこの世で最も憎らしいと思うものです」
 少女は囁くように鏡に言いました。
「パパがいなくなって、ママはずっと付き合っていた男の人を新しいパパして、王様にしようとしているの。私、ママが大嫌い。そして新しいパパも嫌いよ」
 そう言って少女は鏡に向かって手を合わせました。
「ママが鏡に向かって話しかけてるのを、私はいつも見てたのよ。お願いしたら言うことを聞いてくれるんでしょう」
 すると鏡は答えました。
「それではこの世からあなたのママと新しいパパを消してしまいましょう」

 新しい王様と女王様が消えてしまい、国は大混乱になりました。
 王女さまと王子さまは臣下たちとともに国外へ脱出しました。
 王様と女王様の住んでいた城は壊され、中にあった鏡などの調度品は全て運び出されてしまいました。鏡は様々な人たちの手に渡り、やがてとある高利貸しの家に運び込まれました。
 鏡は高利貸しに向かって言いました。
「私はあなたが一番無駄だと思うものを消して差し上げましょう」
 高利貸しは大きな口を開けて笑いました。
「一番無駄なのは庶民だな。金を貸せとせがむくせに、いざ返せと言うと返すのを渋る。しまいには、取り立てが厳しいと俺のことを鬼か悪魔のように非難する。庶民はいても無駄な存在だ」
 すると鏡は答えました。
「それではこの世から庶民を全て消してしまいましょう」
 すると鏡の前から高利貸しは消えてしまいました。
 この高利貸しも庶民のひとりだったのでした。
 やがて主のいなくなった高利貸しの家から鏡は運び出されました。

  世の中には大富豪と罪民しかいませんでした。
 罪民は大富豪に捕らえられると奴隷として働かされました。
 奴隷になりたくない罪民たちは、ひっそりと息を殺して隠れて暮らしました。
 ある日、罪民のもとに鏡が運ばれてきました。

 罪民に向かって鏡は言いました。
「私はあなたが一番無駄だと思うものを消して差し上げます」
 罪民は悲しげに笑って言った。
「お天道様だよ。あんな眩しいもの、おいらには要らねえ。盗みに入れるのは夜しかない。それまでひもじい思いをせにゃならん。おいらは空腹なんだ」
 すると鏡は答えました。
「それではお天道様を消して差し上げましょう」

 広大な宇宙の中で、一つの大きな明かりがふっとかき消すように消えました。
 闇の中に鏡ひとつばかりがいつまでも浮かんでいました。


イメージ画像【写真素材 足成】より借用

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。
 心より感謝を申し上げます。

 今回、ココログのブログネタマガジン「コネタマ」に参加いたしました。
 「これって無駄じゃない!?と思うものは何?」というブログネタを着想とした作品を書いたつもりです。
 寓話風に書いてみました。
 いかがでしたでしょうか。楽しんでお読みくだされば幸いです。

 なお、文章に稚拙な部分が多く見受けられるとは思いますが、筆者の文章力の未熟さゆえでございますので、ご容赦下さいまし。

 ご感想などございましたら、コメント欄にお寄せください。
 心よりお待ち申し上げております。

 この度はお読みくださり、誠にありがとうございました。

琉球の宮


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コメント

はじめまして。
「この世で一番無駄なものは」読ませていただきました。
皮肉の入ったちょっとシュールな童話、大好きです。鏡の力、すごいですね。
答えは鏡の中にあるのではなくて、質問する人自身の中にある というところがいいと思います。(鏡は何を聞かれても「あなたがこの世で最も憎らしいと思うものです」としか答えないですね)

素敵な童話をありがとうございます。楽しませていただきました。

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