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宇宙開発、こんな未来


某国の大統領と側近との会話。

側近 「大統領! ついにやりました!」
大統領 「どうしたんだ。僕の支持率が上がったのか?」
側近 「違います。我が国の惑星探査車がA星に辿り着き、着々と調査していたのですが、なんと、その星で生命体を発見したんです!」
大統領 「ふむふむ」
側近 「その生命体がどのような知能を備えているのか、ただ今、研究しています。楽しみですね」
大統領 「どうせ国家予算だ。研究費用は湯水のように使ってくれ」
側近 「はい!」

  さらに、未来。

側近 「大統領! どうやらA星の生命体には人間ほどの知能はないようです」
大統領 「なんと。やはり人類が宇宙一というわけか」
側近 「宇宙一かどうかは知りませんが、とにかく我々人間とコンタクトを取れる程度の知能はありません。せっかくの《未知との遭遇》なので、色々と意見交換して仲良くなりたいと思っていたのですが、どうもそうはいかないみたいでして」
大統領 「じゃあ、無視しちゃえ」
側近 「無視、ですか? どうして。せっかくの地球外生命体なのに」
大統領 「惑星探査は生命体とのコンタクトのためではない。それは余興に過ぎん。我々は地球外に人類が移住するために探査しているのだ。人類で溢れかえり、二酸化炭素の増大した地球には、もはや住み留まる事は出来ない。これからは宇宙移住の時代だ。だから、惑星探査の要は、人類が住めるか、どうか。それが問題だ」
側近 「はい……」

  さらに、さらに、未来。

側近 「大統領! 重大な発見です! A星の地下には、無尽蔵の石油が眠っていることが分かりました! 地球の石油埋蔵量には天文学的に及ばないくらいの凄まじい量です!」
大統領 「やったね! ワーイ! 僕たち大金持ちだ!」
側近 「じゃあ、今日のトップニュースで流しましょう。これを聞いたら、残り少ない地球の石油の資源に憂いでいた世界各国が安堵するでしょうね。良かった、良かった」
大統領 「オイオイ。どうして世界各国が安堵するんだ?」
側近 「それはもちろん、石油は世界各国で最重要資源だからですよ。枯渇したら大変な事態が引き起こされたことは、オイルショックでご存知のはず」
大統領 「最重要資源なのは分かるが、どうして世界各国なんだ。この石油資源は我が国だけのものじゃないのか?」
側近 「我が国だけ? 大統領、それは違います。我が国の宇宙開発チームは、地球の代表として、世界各国のチームと共同で惑星探査をしているんですよ。だから、発見した資源は我々地球人全員の共有物なんです」
大統領 「誰が決めたんだ。我が国が開発チームの中で一番多額の資金を提供しているんだぞ。そもそも、我が国がお金を出さなかったら発見できなかったかもしれないんだ」
側近 「でも……」
大統領 「今後、宇宙開発は我が国の単独開発にする。開発チームは解散だ。今まで世界各国から提供を受けていた資金は全額返還しろ。国債を発行してでも返還するんだ。A星の無尽蔵の石油資源があれば、借金などすぐにチャラになる。何が何でも我が国の単独資源にするんだぞ。もちろん、今まで得られた宇宙開発の技術は有無を言わさず我が国が回収する。異論が噴出したら金で封じろ。どうせ国家予算だ。湯水のように使え」
側近 「でも……」
大統領 「不服か?」
側近 「いえ、そうさせて頂きます……」

  そして、未来。 

側近 「大変です、大統領! A星で石油資源を発見したことを極秘にしていたのですが、誰かがそれをマスコミに流したようです! 情報は瞬く間に全世界に知れ渡りました。それを聞いた世界各国が激怒しています。なぜ共同開発だったのに、重要なことを内緒にしていたのか、技術を回収したのはそのためだったのか、と遺憾の意を表してます。各国は石油資源の共有と等分配分、そして我が国に対する謝罪を要求しています! 早くテレビ会見して、事態の釈明をしなければ……」
大統領 「ふん。放っておけ」
側近 「でも、
大統領……」
大統領 「どうせアイツラには単独でA星に行ける技術力がないんだ。地球でいくらごねても、僕たちが自国の技術力を駆使して、先に地球を旅立ってしまえばいいんだ。アイツラがどんなに抗議しても、A星には届くまい。ハハハ」
側近 「でも、大統領……。怒った各国はもう既に軍隊を配備する用意ができている、と言っているんですよ。ひょっとしたら、我が国に一斉攻撃をしかけるかもしれません。戦争になります。昔は植民地や石油の取り合いで戦争しましたけど、今回は惑星資源を巡って戦争することになるんですか? 人類ってホント、進歩がないですね……。自己利益のためにまたも血を流すのですか」
大統領 「何とでも言え。とにかく今から地球から発つ用意をするんだ」
側近 「は、はい」

  そして、数時間後の未来。 

側近 「大変です! 大統領! 大統領が弁明をしなかったので世界各国の怒りはピークに達しているようです。もはや一刻の猶予もありません。各国は我が国に向けてミサイル配備をしているようです。ついに戦争へのカウントダウンが始まりました。戦争回避のためには、今からでテレビ会見で弁明してください。そうでもしないと、開戦してしまい、一般市民に犠牲が出てしまいます。今ならまだ間に合います!」
大統領 「ハハハ。弁明? そんな無駄なこと。今から僕たちは宇宙に旅立つんだ。アイツラがどんなに強力な核兵器を使ったとしても、宇宙空間に逃げちまえばコッチのものだ。逃げるが勝ちだ」
側近 「ちょっと待って下さい。地球に残された我が国の一般市民はどうなるんです?」
大統領 「なあに、一般市民の命と大統領の命じゃ価値が違う。一国の最高責任者が誰よりも最後まで生き延びなくてどうする。国の存亡に関わるんだぞ。これが大統領の特権なんだ。そのためにこの職を選んだというのに」
側近 「はぁ。大統領は一番いいとこ取り、というわけですね。あの、ひとつ気になることを聞いていいですか」
大統領 「なんだ」
側近 「そもそも、勝手にA星に移住していいんですか?」
大統領 「何をいまさら言っているんだ。勝手も何も、あの星はもはや我が国の所有物じゃないか」
側近 「それは誰が決めたんです? ひょっとしたら、まだ発見していませんが、あそこには先住民がいるかもしれません。それらの意向を無視して、勝手に我が国が占拠してもいいのでしょうか」
大統領 「構いやせん。我が国が開発した最強の核ミサイルをチラつかせれば誰しも我々の前に平伏する。強い者が勝つ、それが自然界の摂理だ」
側近 「―――そうやって、いつも我が国は他国を侵略しては住民の意思を無視して土地を強制収用し、軍事基地を作ったりして占領してきたんですね。傍若無人とはこのことです。他国に我が国に対する敵対感情が多いのは当たり前ですね。ビックリです」
大統領 「当たり前だ。強い者が勝つ、これの何が悪い。強い者が弱い者から憎まれるのは、その宿命だ。さぁ、つべこべ言わずにさっさと地球を発つ準備を続けろ。A星に到着するのは宇宙飛行してから数年後になるからな。善は急げだ」
側近 「はい……」

  そして、さらに、未来。

側近 「我々の乗った宇宙船はついに飛び立ちました。ああ、地球が遠くなっていきます。一般市民を見捨てて、私と大統領と閣僚数人とその家族だけが地球を離れてしまいましたが、果たしてこれは良いことなのか、どうなのか。後悔だけが胸の内に去来します」
大統領 「強者の我々は生きている。これは確かだ。後悔している暇はない。生きている我々が、A星で一から国家を建設するのだ。石油資源は無尽蔵だ。何でもできるぞ」
側近 「地球に残してきた我が国の一般市民はどうなるんです? ホラ、地球を見てください。どこかの国が核ミサイルを発動したのでしょう、あちこちで大爆発が起こっています。多くの血が流されています。青い地球が赤い星になっているではありませんか」
大統領 「だから何だ」
側近 「一般市民の悲痛な声が聞こえませんか。国家利益のためだけに血の色に染まってしまった赤い地球を、私は見たくなかった。どうして私たちだけ地球から離れたんです」
大統領 「文句があるなら、今すぐ宇宙船から放り出すぞ」
側近 「―――そうして下さい」
大統領 「何だと? 本気か?」
側近 「はい。私を放り出す前に、ひとつ伺ってもいいですか?」
大統領 「何だ」
側近 「宇宙開発って、何のために行ったんですか?」
大統領 「地球以外の星に移住するためだ。領土が増えて、万々歳だろう。領土が増えて喜ばない国家はいない」
側近 「その星にどんな生物がいたとしても、勝手に占領して移住するんですね。全てを奪取し移住して……何をするんですか?」
大統領 「移住して……まずはどこからも襲われないように、対空ミサイルを備えた大きな軍事施設を建てよう。それから、生産性の高い大きな工場でも建てようかな。なんせ、石油資源は無尽蔵なんだ。相当儲かるぞ。うふふ。儲かったら、太陽系の外の惑星への探査を始めよう。さらに資源豊富な星を探すんだ」
側近 「あの、そんなに儲けて何がしたいんですか?」
大統領 「そりゃあ、我が国の発展のためだ。利益追求すれば、国家が潤う。そうすれば、国家はさらにあらゆる面で発展する。子孫繁栄をDNAに刻み込まれた我が人類の宿命なんだ、これは。当たり前のことが分からないのか、キミは」
側近 「―――何だかそれ、虚しいです」
大統領 「何だと?」
側近 「莫大な富を築いて一体何に使うんですか。結局はお金を増やすだけのために宇宙を開発したなんて、それもそれだけのために戦争を起こしたなんて、虚しすぎます。子孫繁栄のDNAも、人類をともに協力し合って培うものじゃないんですか。手段のために方法を選ばずに、他を蹴落として子孫繁栄するのは、何だか虚しいですよ」
大統領 「沢山儲かるんだぞ。これのどこが虚しいんだ。幸福じゃないか。札束でビンタだってできるんだぞ!」
側近 「他人の犠牲を踏み台にして、山のように儲けたところで、嬉しくないんですよ。お金なんて無くても、誰も傷つかずに一緒に笑い合いたい。無人島で、他の人を蹴落として最後の一人となってサバイバルをするより、誰も蹴落とすことなく、一緒に助け合って生きる仲間が欲しいんです」
大統領 「ふん、そんなものは理想論に過ぎん。所詮、金が全てだ。お金が無ければ何も出来ないだろう。金があれば強い武器が作れる。強い武器があれば、戦いにおいて強者になれる。全ての上に君臨することができるんだ。これほど偉大な目標があるんだぞ。目的のためには手段を選ばないのは、当たり前のことだ。人類の偉業のためなのだから」
側近 「私には分かりません。生存競争の勝ち負けは確かに大事だとは思いますが、それにも限度があると思うのです。人を傷つけてまで勝つことに虚しさを感じるんです。強者には何ら魅力を感じません」
大統領 「―――そうか。お前とは分かり合えないわけだな」
側近 「ええ。無理ですね」

  そして、数分後。

大統領 「ほら、ここに立て。今から数十秒後にこの下の扉が開いて、お前は宇宙に放り出される。お望み通りで嬉しいだろう」
側近 「ええ。勝者にこだわるこんな宇宙船に残るくらいなら、宇宙空間の塵になるほうがマシです」
大統領 「最後のチャンスだ。放り出される前に、他に言い残すことはないか」
側近 「そうですね。―――私の予想ですけど、A星で無尽蔵の石油を使い切る頃、油田そばの海岸で、砂に埋もれた自由の女神像が発見されると思いますよ。楽しみですね」
大統領 「ん? どこかで聞いたことのある話だな」
側近 「無尽蔵の石油を枯渇させる前に思い出しておいて下さい。いつか本当の意味が分かります。では、サヨウナラ」

   

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。
 心より感謝を申し上げます。

 なお、文章に稚拙な部分が多く見受けられるとは思いますが、筆者の文章力の未熟さゆえでございますので、ご容赦下さいまし。

 ご感想などございましたら、コメント欄にお寄せください。
 心よりお待ち申し上げております。

 この度はお読みくださり、誠にありがとうございました。

琉球の宮


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コメント

斬新ですね

こういうの

好きです

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