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選挙、こんな未来


某国の選挙前、七夕の日。記者の選挙立候補者へのインタビュー。

候補者Aと記者との会話。

記者 「選挙が公示されました。もうすぐ投票日ですね。 意気込みはどうですか?」
候補者A 「とにかく投票日まで全力で有権者に訴えるだけです」
記者 「なるほど。勝算はどうですか?」
候補者A 「こればっかりは、ちょっと・・・。なにぶん、投票箱を開けてみないと分かりません。フタを開けたら何とやら、ですよ。投票箱には魔物が住んでいると言いますから」
記者 「確かに。開票するまで結果は分かりませんね。そういえば、今日は七夕ですが、短冊に何かお願い事を書かれたりはされましたか?」
候補者A 「もちろん。《当選しますように!》と願いを込めて書きましたよ」
記者 「なるほど。貴方の願いが叶うといいですね。当選インタビューのときを楽しみにしています」
候補者A 「ありがとう。頑張らさせていただきます。それはそうと、アナタは投票されるんですか? 政治を変える一票を必ず投じてくださいね」
記者 「もちろんですとも。必ず投票いたします。ではでは、失礼します・・・」

候補者Bと記者との会話

記者 「選挙が公示されました。もうすぐ投票日ですね。意気込みはどうですか?」
候補者B 「不退転の覚悟で臨んでいるところだ」
記者 「ん・・・と、何だかよく分かりませんが・・・。勝算はどうですか?」
候補者B 「まぁまぁ、だな。選挙前に行った資金集めのパーティでは、ガッポリ稼げたからな。大いに勝ちに向かって選挙運動しているぞ。所詮、選挙の勝敗を決めるのは資金力だ。資金のある者が当選する、それが自明の理だ」
記者 「なるほど。お金があれば、より多い選挙運動員も集められるし、アクセスの良い目立つ一等地に選挙対策本部を設置出来ると。まさに猫まっしぐらじゃなくて、当選まっしぐらですね」
候補者B 「何のことだ」
記者 「いえ、何でもないです。そういえば、今日は七夕ですが、短冊に何かお願い事を書かれたりはされましたか?」
候補者B 「もちろん。《当選願い》と毛筆を使って墨字で書いたぞ。竹は中国の山奥から伐採したものを直輸入したものだし、硯(すずり)と墨汁と和紙はありえないほどの高価なものだ。更に、山にこもって祈祷しながら短冊をつけたから、願いの叶う確率は、ほぼ100%だな」
記者 「・・・そういうヒマがあれば、街頭演説とかして選挙運動したらいいのに」
候補者B 「何か言ったか?」
記者 「いえ・・・。お金の多さで願いの叶う確率が変動するなら、きっとそうなのでしょうね」
候補者B 「そうだ。ほぼ100%の可能性をより確実なものにするために、竹の枝々の隅々に、壱万札を鈴なりに竹に吊るしたんだぞ。こんな豪奢な笹竹では、誰だって恐れ多くて必ず願いを叶えてくれるに違いない。わっはっは」
記者 「頑張ってください・・・」
候補者B 「ありがとう。頑張らせて貰うよ」
記者 「ではでは、失礼します・・・」

候補者Cと記者との会話。

記者 「選挙が公示されました。もうすぐ投票日ですね。意気込みはどうですか?」
候補者C 「頑張ってるよ」
記者 「はぁ・・・。ええっと、勝算はどうですか?」
候補者C 「投票日の天気次第だな」
記者 「はぁ・・・。そういえば、今日は七夕ですが、短冊に何かお願い事を書かれたりはされましたか?」
候補者C 「いや、短冊には何もお願いはしてない。あんなのは無意味だ。単なる気休めだよ。大体、短冊に祈って願いが叶った試しがない」
記者 「はぁ」
候補者C 「それよりも、ワシは選挙対策事務所や自宅の窓際に、《てるてる坊主》を下げているぞ」
記者 「《てるてる坊主》ですか? それも願いが叶うかどうか分からないじゃないですか」
候補者C 「確かにそうだが・・・。短冊で願いごとを書くよりは、天気の動向のほうが一般的に願いが叶いやすい。だから《てるてる坊主》なんだ」
記者 「それにしても、短冊に自分の当選願いをするのではなく、自分の当選よりも前に、そもそもの投票率のアップを願って《てるてる坊主》を下げるなんて、候補者のカガミですね!」
候補者C 「投票率のアップじゃない、低下を願ってるんだ。そこんとこ、一番大事なんだ。間違うなよ」
記者 「え・・・?」
候補者C 「ワシが下げているのは、晴天を願う《てるてる坊主》じゃない。雨天を願う《黒いてるてる坊主》だ」
記者 「・・・雨乞い用のやつですか?」
候補者C 「そうだ。ただ、小雨では困るから、等身大の黒いてるてる坊主を大量に製紙会社に特注させた。これで投票日は豪雨だ」
記者 「豪雨・・・。投票率、下がっちゃいますね」
候補者C 「願ったり叶ったりだ。雨が降れば万々歳だ。大体、投票日という休日に雨が降るとな、人は外出を好まない。雨の日に家から出るのは面倒だからな。したがって、雨天の日には投票率が確実に下がる。一方、たとえ豪雨でも、お金で雇われた選挙運動員や何が何でも投票するために組織された人たちは、ワシに絶対に投票してくれる。義務だからな。投票率の下がるときに、ワシは絶対に勝つ。自明の理だ」
記者 「雨が降ると、アナタに有利なんですね」
候補者C 「そうだ。でも全部が《黒いてるてる坊主》頼みじゃないぞ。企業の社員たちもいる。ワシを支持している企業の社長たちが、職務として社員たちをマイクロバスに乗せて投票所に連れて行き、総動員させた社員たちをワシに投票させるんだ。投票しなかったらクビだからな。みんなビビッて投票するさ」
記者 「《清き一票》が過去の遺物に思えてきました」
候補者C 「なあに、《清き一票》は理想論だ。そもそも、企業の社長たちは、公共事業の受注を狙っている。ワシが当選して、受注を受けるのを望んでいるんだ。企業に受注させるためには、企業献金プラス企業の社員たちの票を要件にしているんだ。で、企業の社員たちの票はワシに流れ込むから、ワシは芋づる式で票を得られ、絶対勝つ。自明の理だ」
記者 「何だかオカシイですね」
候補者C 「いいんだよ。一部の権力者さえ潤えば、それでヨシさ。大体、一部が政治を動かしているのに、たかだか一票で政治の根幹が変わったら困るじゃないか。所詮、組織票がモノを言うんだ」
記者 「ふぅん。雨天を厭わず投票する人たちによる組織票頼みなんですね」
候補者C 「当たり前だ。これで晴天にでもなってみろ。無党派層が投票所に向かい、投票率がアップしてしまう。そうなったら組織票を上回る票が動き、ワシの当選は危なくなってくる。・・・あ、そうだ! ちょっと、キミ!」
記者 「おや、秘書さんが呼ばれて来たぞ。何か密談されるのかな?」
候補者C 「投票日の選挙区全体を雨天にするために、外国で開発された雨降り装置を今すぐ手配して手に入れろ」
記者 「雨降り装置?」
候補者C 「台風や低気圧を作る機械でも、何でもいい。投票日当日を何が何でも絶対に雨天にして、無党派層を投票所に向かわせないようにして、何としてでもワシが落選するのを阻止するんだよ。あ、すまないな。ちょっと秘書にお願い事をしていたんだ。インタビューはまだあるのか?」
記者 「いえ、もう結構です。頑張ってください・・・」
候補者C 「ありがとう。投票日を雨天にさせるように、頑張るよ」
記者 「ではでは、失礼します・・・。帰宅したら、真っ白の《てるてる坊主》でも下げよう・・・」

   

◆ 終わり ◆

   

・・・あとがき・・・

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。
 心より感謝を申し上げます。

 なお、文章に稚拙な部分が多く見受けられるとは思いますが、筆者の文章力の未熟さゆえでございますので、ご容赦下さいまし。

 ご感想などございましたら、コメント欄にお寄せください。
 心よりお待ち申し上げております。

 この度はお読みくださり、誠にありがとうございました。

琉球の宮


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